ここ数年、『飲む日焼け止め』というサプリメントを目にするようになりました。
飲むだけで、紫外線防止ができたら便利です。それも顔だけではなくて、全身にも効果があると言われたら、夏のレジャーだって積極的になれるというものです。一気に夏が楽しくなってきます。
化粧直しや日焼け止めの塗り直しも必要ありません。でも、はたして、そんなに都合のいいものがあるのでしょうか?
スキンケア相談室にも時々質問をいただきますが、「本当に効果があるの?」といった半信半疑の方が多いようです。
今回はそんな『飲む日焼け止め』をサッポー流に解説してまいります。
飲む日焼け止めの実態……60%カットのからくり
確かに、肌の老化の大半は光老化が原因だと言われ、紫外線によるダメージだと言うことは広く知られています。これが飲むだけで防止できるなら、こんなに素晴らしいことはありません。
また最強のUVケアだとか、ワンランク上の紫外線防止だとか、○粒の摂取で24時間紫外線カット……等々とても魅力的な言葉が目に入ってきます。
しかし色んな解説を読んでも、通常のUVケア製品のように、SPF値やPA値といった目安のようなものが見当たりません。多くは「ニュートロックスサン」というポリフェノールと同じような抗酸化作用を持つ成分の説明がしてあるのみです。
紫外線が肌内部に入ると活性酸素が発生します。この活性酸素は、皮膚組織を酸化破壊して、劣化を進めます。この時ニュートロックスサンを摂取していると、抗酸化作用により酸化破壊を軽減でき、そのことが炎症(日焼け・赤み)の減少にも繋がるというのです。
趣旨は判りますが、私達が知りたいのは、紫外線防御に実際どれだけの効果があるのかです。
すると、ある広告で「紫外線を60%カット」という謳い文句を見つけました。飲むだけで??本当だったら素晴らしい!どんな仕組みだろう……と調べていくと、スペイン語の資料に辿り着きました。
それを日本語訳でまとめると、次のようなことです。
毎日250mgの摂取を85日間続けると、MED(UVB照射24時間後に紅斑を生じさせるのに必要な最小の紫外線量)が、飲まない場合より56%増えたという成果を示したものでした。
この話をお馴染みのSPF値※に置き換えると、最小のSPF値1が飲むことによって、1.56になった……56%の改善だ!ということなのです。それも85日間飲み続けてです。
※SPF値……紅斑を生じさせる紫外線UVB波の防御指数
この56%の改善を60%という位はよしとして、いつの間にか、私たちが浴びている紫外線を60%カットするような表現にすり替わっているのは、大きな問題です。これだと、大きな誤解を生むでしょうね。
つけてすぐにSPF値15や20が期待できるいつものUVケア製品とは、次元の違うミクロの世界です。なので、飲む日焼け止めで実際の紫外線防御を行うなど、とても危ない考え方なのです。
いつものUVケアは化粧品で行い、その上でプラスαとして飲む日焼け止めを摂取するようにしましょう。抗酸化作用があるのですから、何らかの健康によい作用が期待できるかもしれません。
でも、私が抗酸化作用を期待するなら、赤ワインに甘さを抑えたチョコ一片でポリフェノールを摂取するのを選びます。
- 飲む日焼け止めの効果は、SPF値1が1.56になる程度
- 紫外線防御は、きちんといつものアイテムで
編集後記
飲む日焼け止め、気になっていた方も多いのではないでししょうか?手軽にUV防止が出来たら良いのですが、現実はそうではありません。
やはりここは基本に戻って、正しい製品を選び、まんべんなく塗る、取れたらメンテナンス!が自然に出来るようにしておきましょう。
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