サッポーです。
今回は読者からの相談を紹介しながら、脂漏性皮膚炎のスキンケアはどうあるべきかを見ていきます。女性にも男性にも多く見られるありふれた皮膚炎ですが、なぜか相談が急増しているように思います。
この症状は肌の健康や美容上のスキンケア以前のお話なので、まずは皮膚科で診て貰いましょう……というのが、サッポー美肌塾の立場です。ところが、診て貰ってもなかなか改善せず、鏡を見るたびに憂鬱になる……こんなケースのご相談が多いようです。
今回のご相談は“山さん”という男性でした。タイムリーなご質問をありがとうございました。
脂漏性皮膚炎とは
- 症状
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髪の生え際、小鼻の脇、頭皮に多く発生、赤みを帯びた紅斑様で、時には、脂っぽいかさぶたを伴うケースもよく見られます。皮脂腺が発達し、皮脂分泌の多い部分に発症するので、鼻周りの頬や額、眉間、胸や背中、腕など、顔や頭以外にも出来ます。
痒みを伴うこともありますが、その程度は、ほとんど感じない人から、ひどい痒みに悩まされる人まで様々です。
症状は以上のようなもので、男性女性共に、多くの肌に現れるありふれた炎症といえますが、その解明はあまり進んでいません。
- 対策
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脂漏性皮膚炎の原因として、「マラセチア」ではないかと言う説があり有力です。マラセチアとは、皮膚、特に皮脂を分泌する皮脂腺の出口から毛穴にかけて住んでいる真菌(カビ)です。
脂漏性皮膚炎の患部にこの真菌の増加が見られ、外用抗真菌薬を塗布すると、1~2週間で症状が消えます。ただし、数ヶ月で再発することが多く、外用抗真菌薬の再塗布が必要になります。
二ヶ月程度外用抗真菌薬の塗布を続けると、8~9割が完治するという報告もあります。
ところが、中には外用抗真菌薬の使用で逆に悪化する例も報告されています。肌にはニキビで有名なアクネ菌を始めさまざまな微生物が住んでおり、それらが原因になっている場合があるためです。真菌の減少が逆に禍したのでしょう。
補完する対策として、抗ヒスタミン剤の内服で痒みを防止したり、ビタミンB2(フラビタン)・ビタミンB6(ピロミジン)の摂取で皮脂を減少させ、予防的効果を期待する対策もとられます。
いずれにせよ、脂漏性皮膚炎の治療には、まず第一に外用抗真菌薬を使うのが良いとされています。
昔は、とにかく炎症をなくそうと言うことで、ステロイドが多用されていたそうです。しかし塗るのをやめると直ぐ再発するので、塗り続けた結果、副作用で、酒さ(しゅさ)様の皮膚炎、毛細血管が拡張し皮膚萎縮が起こり、赤い皮膚になってしまう弊害がよくみられました。
以上概説いたしましたが、皮脂の多い部分に赤みが発生し常態化するようだと、脂漏性皮膚炎を疑い、まずお医者さんに診て貰うのが得策です。
“山さん”のご相談と相談員のアドバイス
“山”さん のご質問・相談
こんにちは。僕は顔に脂漏性皮膚炎をわずらってます。男です。こんな感じの肌です。(※URLが記載。ご自分のホームページで写真をアップして下さいました)
洗顔料を使うとひどく突っ張って痛いので、今は水だけで、朝とお風呂に入っている時の2回、軽くぬるま湯で流す程度の洗顔をしています。
スキンケア相談室からのアドバイス返信
サッポーのクレンジングクリームがあれば、朝と夜の二回、洗顔前にこのクリームで軽~くマッサージして、すすぎ洗いするのを毎日の洗顔パターンにすることをお勧めしています。夜はぬるいお風呂で暖まったあとにして頂くのも、肌を刺激しない優しい洗浄となります。
洗浄力のないクリームですが、ある程度の酸化物に馴染み、すすぎ洗うことでかなりの程度肌から取り除くことが出来ます。洗顔の完成度としてはいわば70点程度で、まずまず合格点といった段階ですが、炎症のある肌が育つベース作りとしてはこれくらいが丁度いいのです。
ニキビや炎症に悩む肌にお勧めしている方法です。石けん洗顔をして良いのは、肌がすっかり安定してからですね。
相談員としては、とにかく炎症を促進させないことを最優先して案内しています。
“山”さん のご質問・相談(続き)
そのあと化粧水とかは使っていません。お風呂上りは痛いってほどではないですが、少し突っ張ってます。お風呂上りは乾燥しているみたいなので化粧水とかつけたほうがいいのでしょうか?
でも、こういう肌にいろいろ何か付けるのは、かえって炎症おこしたりして悪化するのではないかと心配です。
スキンケア相談室からのアドバイス返信
基本的な視点としては、今お考えになっている方向性が宜しいかと思います。ただ、そこに少しでも肌を改善していく、積極的な面を取り入れたいところです。そのケアのポイントは、炎症反応にあります。
- 炎症反応を促進することは避ける
- 炎症反応を促進させない範囲で、肌を守るケアは好ましい
この二つを満足させるのが、肌の未来を考えた最適のスキンケアです。肌が育つ環境を少しでも支援することが改善には大切なのです。
サッポーでは、洗顔以降のスキンケアを「整肌」「保護」と二つの区分に分け案内しています。
「整肌」を簡単に説明しますと、肌が保湿された状態を作り、生きた表皮細胞層が正常な代謝活動をする適切な環境作りとなるものです。
表皮表層の角質層がその環境を作っているのですが、この角質層の水分相を増やし、より安定した環境を作ります。一般的には「保湿」ケアと呼ばれています。サッポーでは、この役割を化粧水や美容液に求めています。
しかし、上のように保湿して整えられた肌状態も、そのままでは水分が蒸散してしまうので、環境は劣化します。そこで、整えられた肌状態を維持するため、乾燥からの「保護」ケアが求められます。この役割を担うのが、乳液とか、クリームなどと呼ばれる油性化粧品です。
本来上の二つの大役をになっているのは、汗と皮脂です。汗といっても「不感蒸泄の汗」といって、気づくこともなく、絶えず分泌されている汗です。流れるように出る汗は、体温調節のための汗です。不感蒸泄の汗が化粧水で、皮脂が乳液やクリームともいえます。
ただし、未熟化が進行した肌状態にある“山さん”の場合、日々誕生している表皮細胞が順調に育つ環境としては、皮脂や汗だけに任せていては不十分です。より良い環境作りには、乳液やクリームなどの助けがあった方がいいわけです。バリアー層のバリアー能そのものが低下しているわけですからね。
サッポーは、肌に浸透・侵入しにくい保護クリームを薦めるようにしています。
“山”さん のご質問・相談(続き)
脂漏性皮膚炎にはどういうケアをすればいいのでしょうか?サッポー式ケアは通用するのでしょうか?
それと医者にはこの病気は完治することはないといわれました。いろいろ医者をまわり、薬つかったりしましたが治りませんでした。正しくケアをこれからしていってももう治らないのでしょうか?よろしくお願いします。
スキンケア相談室からのアドバイス返信
私どもは、スキンケアカウンセラーなので、迂闊に口を挟むことは出来ない立場です。以下、その前提で敢えて案内致しますので、ご理解の上、参考にして下さい。
脂漏性皮膚炎そのものは至極ありふれた皮膚炎の一つです。しかし主婦湿疹を始め、多くの皮膚湿疹は医学上は十分解明されておらず、当然完治させる特効薬の存在もありません。
このような意味で、お医者様は「完治させる方法があるわけではない」と言いたかったのではないかと想像します。
しかし、皮膚湿疹が無くなった人はいくらでもおられますし、脂漏性皮膚炎の症状が無くなった肌の方が多いのも事実です。
「治るのだが、治す方法が確立されていないだけ」と理解しましょう。
最近は医療分野でも訴訟が多く、迂闊なことが言えないのかもしれません。
産婦人科医の減少に危惧の声が高まっているように、医療の道を目指す方もリスクは避けたいのかもしれません。でも、良くなる肌の方が多いのですから、余りに否定的な発言は避けて頂きたいところですね。
スキンケア相談室からのアドバイス返信
炎症歴は長いのでしょうか?脂漏性皮膚炎が肌の健康や美しさ作りの大きなブレーキになっていた側面が強いと思われます。
これからのスキンケアは、この炎症に対するのと同時に“肌が育つケア”でも対処してゆく事が、肌が変わっていくキーポイントになるように思われます。
まずは炎症対策
一つは医師のお世話になり、外用薬を利用する方法ですが、これら治療と並行して、サッポーがお薦めしたいのは、免疫システムが過剰に働くのを回避するように、毎日の生活環境や習慣を見直すことです。炎症を繰り返したり、続いていた肌は必要以上に炎症を起こしやすくなっているからです。
サッポーがお薦めする見直しとは、肌の見張り番をしている免疫細胞=マスト細胞を落ち着かせる対策となるものです。
マスト細胞とは
免疫細胞の一つで、毛細血管や神経組織への連絡係をしている細胞です。脅威を感じるとヒスタミンを発報し、毛細血管を拡張させて炎症を起こす(免疫反応)準備をしたり、痒み神経を刺激して痒みを感じさせたりします。本来は身を守るための大切な免疫反応ですが、マスト細胞が過敏・過剰に働くようになると、ちょっとした刺激で炎症を引き起こすことになります。
痒み、赤みの発生、湿疹やかぶれ症状の起きやすい肌は、バリア能の低下から、免疫細胞の一つであるマスト細胞が過敏・過剰に働き、炎症を加速するという悪循環に陥りやすい状況にあります。
マスト細胞を活発化させる三つの刺激
- 肌への侵入物(例:紫外線、化粧品、雑菌・汚れ・汗など)
- 冷・熱の刺激(冷たい・熱いの刺激…例:39℃以上の入浴は×)
- 物理的な刺激(例:マッサージ、メイクブラシ、パフ、髪の毛先など)
健康な肌にはなんでもない刺激が、過敏になった肌にはマスト細胞が過敏・過剰に騒ぐ原因になると考える必要があります。
「私のマスト細胞を騒がすのは何か?」
「今のマスト細胞はどの程度のことで騒ぐのか?」
このような視点で、マスト細胞の安心できる状態を思いやることが肌を安定化させるのに大切な時です。上の説明欄にある“三つの刺激”を念頭に、普段の生活環境・習慣を見直してみましょう。
相談室でよく出会う悪習慣として「入浴時の湯温」があります。過敏な肌が常態化した肌は37℃台、38℃台の湯温にして欲しいのです。
40℃の湯温は健康な肌にとってはいい湯加減なのですが、炎症が常態化した肌のマスト細胞にとっては脅威となる温度です。39℃や40℃に温められた血液が顔の炎症部位の毛細血管を駆け巡ります。これではマスト細胞が安心することはありません。毎日の入浴が敏感さを維持する習慣になっているのです。浴室温度を30℃以上にできると、冬でも38℃前後のお湯で十分暖まることができます。
このようにして、炎症による肌へのマイナス影響を最小限に留める努力には、大きな成果が伴います。そして一方で、サッポーの“肌が育つケア”を進めてゆくことで、肌質が変わっていきます。改善のスピードが速まります。
脂漏性皮膚炎だけでなく、アレルギー性皮膚炎や炎症を伴うニキビで長年お悩みの方に、よくお勧めしますが、あとで嬉しい報告をたくさん頂戴します。劇的に炎症が改善されていくことが多いからです。
脂漏性皮膚炎もニキビも炎症が軽減すると、「肌が育つケア」がとてもスムーズに運ぶようになります。炎症発生の存在がいかに大きな障害になっているかがよくわかります。
最近(※配信当時)の話題として、ニキビとマラセチア(真菌)による炎症が合併しているケースが多いのではないかと想定した治療への取り組みが、成果を上げているようです。
サッポー美肌塾のスキンケア相談室に戴く事例とも一致するので、意を強くしております。
- 脂漏性皮膚炎を治す方法は確立されていないが、必ず良くなる
- 治療と並行し、マスト細胞を落ち着かせる生活習慣に改める
「サッポー美肌塾」第365号
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