肌を怠けさせてはいけないって本当?

ナマケモノの肌はどうなる?(画像はイメージです)

サッポーのモニター制度「スキンケアモニター」は1995年から本格的に行っています。かれこれ20年になります。一度に、余り多くの件数を受け付けることはできないのですが、継続の力は偉大で、膨大なスキンケアデータが蓄積されました。サッポー美肌塾にとっても、講義ネタの宝庫になっていると言ってよいでしょう。もちろん本来の目的は、肌が育つケアのレベルアップです。

スキンケアモニター開始当初、ご協力者全員に「過保護度テスト」と名付けたアンケートをいただいておりました。モニターを始める前に、朝と夜だけ石けんによる洗顔をし、そのあとは、約3日間何もつけないで過ごしてもらい、その間の肌状態がいかなるものかをレポートする……という内容です。

ご協力者、一人ひとりの肌能力を知りたかったからです。その後の化粧品試用によって、肌の変化をできるだけ正確に評価するのが狙いでした。モニターが終了する1ヶ月後に、また同じテストをお願いしていたのです。

もちろん、肌が悲鳴を上げる場合、その旨レポートいただき、その時点でこのテストを終了し、モニターに入っていただくことにしていました。悲鳴は、けっして肌に良いことではないからです。ところが驚いたことに、肌が悲鳴を上げていても、頑張って三日間のテストを完遂される方が続出したのです。

さらに驚いたのは、肌が悲鳴を上げた方にとって、とても辛い三日間であったはずなのに、モニターが終わったあと、この「過保護度テスト」を高く評価された人が多かったことです。

  • 「肌が健康になった、強くなったように思う」
  • 「今まで肌を甘やかしていたから、いけなかった!」
肌の変化の理由は?

肌が良くなったのは、モニターを通じたスキンケアの結果……のはずなのですが、「過保護度テスト」そのものを良いケア方法のように、前向きに捉えた方が多くいたのです。これには戸惑いました。「過保護度テスト」という名前だから、悲鳴は肌を過保護にしていた結果が現れたと捉えたのでしょう。一般的に過保護はいけないというイメージがありますからね。

今では、テスト内容を改善して、肌を知る方法としては、洗顔後の「30分ノーケアトレーニング」と称して、30分の状況をレポートいただくようにしました。これなら、肌へのマイナス影響は起きず、また、十分に肌状態を伺うことができるからです。

さて、サッポーにもこのような話があったわけですが、世間では今でも同じようなことが言われています。例えば……

  • 「肌を怠けさせてはいけない」
  • 「肌を甘やかしてはいけない」
  • 「肌を過保護にしてはいけない」
  • 「肌は鍛えないといけない」
  • 「肌に栄養(化粧品)を与えすぎるのは良くない」

といったフレーズです。このようなことをしていると、結果として肌の機能が低下したり、働かなくなるというのです。これらの解説や解釈の全てが間違っているとはいいませんが、間違ったケアに結びつく危険な要素を多く含んでいます。

上のフレーズの“肌”を、“人”とか“子ども”に置き換えると、「その通り!」と膝を打つ人が多いように、「肌もそうなんだ!」と思い込みやすい仕掛けが随所に隠れています。

間違った思い込みが作られ、間違ったケアに結びつくと、気づくことのない大きなロスが生じます。肌がより健康に、より美しくなろうとする努力にブレーキをかけ続けることになるのです。肌を悲惨なトラブルに追い込んでいることもよく見られます。

正しく、肌の真実を捉えていくことにしましょう。

目にしている肌とは、皮膚が作り出した衣服である

私達が触れ、見ている肌とは、角質の層です。日々誕生している表皮細胞が代謝を繰り返し、準備ができると生命活動を停止し、死細胞である角質として完成したのが角質層です。だから、傷めば傷むほど角質としては劣化した状態になります。二度と修復はされません。死細胞なのですから。

肌とは皮膚が作り出した衣服のようなものです。良い状態で長持ちするように毎日のケアに取り組んでいかねばなりません。
ただし、衣服が使えば使うほどくたびれていく一方なのと違い、肌の場合、新しい角質が日々補充され、古くなった角質も日々垢としてはがれている特徴があります。角質が衣服として使われるのは約2週間程度で良いというのは、これは衣服より有利な点であり、大きな強みです。

さて、これらの基礎知識を前提に前段で挙げたフレーズを見直してみましょう。

肌には何もつけないほうが良い?

「肌を怠けさせてはいけない」

「肌を甘やかしてはいけない」

「肌を過保護にしてはいけない」

それなら、どうすれば良いのかというと、何もつけないで過ごす時間を多く持てということが薦められます。極端な場合は、何もつけない方が良い、と言い切る解説もあります。化粧品を利用して、保湿したり、乾燥から保護したり、紫外線から保護するケアは、いつもいつもしない方が良いという薦めです。

はたして、そうでしょうか?

怠けさせる、甘やかす、過保護にする……これらの言葉には、何となく悪いイメージがつきまとうので、「そうかな」と思いがちですが、肌が衣服だと考えれば、明確に判断できるはずです。大切に傷まないように管理した方が、きれいな状態で長持ちするのは間違いありません。

肌は筋肉や骨のように鍛えられる?

肌も鍛えれば強くなる?

「肌は鍛えないといけない」

これは、何もつけないケアの正当性を補完するフレーズとしてよく使用されます。鍛える、鍛錬するという言葉は、運動能力や精神力、考える力などにおいて使われますが、同様に肌も鍛えると強くなるというイメージを持たせるためでしょう。

しかし、それは間違いです。

肌を乾燥させたら、硬く脆くなるだけです。粉を吹いたり、皮向けしたり、毛穴が目立つようになります。紫外線をストレートに浴びると、皮膚内部も傷みますが、肌表面も酸化破壊され、乾燥の影響を受けやすくなるだけです。肌は衣服と同じだと考えると、素直に理解できるはずです。

肌は筋肉や骨のように負荷を与えると強化されるものではありません。死細胞の層なのですから、そんな復活する力は持ち合わせていないのです。傷んだだけ劣化するのみです。

さらにいえば、傷んだバリア層(角質層)は、水分保持力が低下し、バリア能が著しく低下します。すると、バリア層に護られた生きた表皮細胞の代謝環境が悪くなります。つまり、正常なターンオーバーができなくなり、育ちの悪い角質を送り出すことに繋がるのです。悪循環の始まりです。

与え過ぎるのは良くない≠与えてはいけない

「肌に栄養(化粧品)を与えすぎるのは良くない」

ずいぶん昔からいわれ続けている言葉です。現代では、ダイエットに重ねて、良くない面を連想する人が多いのかもしれません。しかし、未だに生きたフレーズとして使われているのは、きっと一面の真実を持っているからでしょう。解説します。

「栄養を与える」とは、化粧品で保湿したり、乾燥からの保護ケアをしたり、UVケアを指すのでしょうが、中には、性能の高い化粧品のことを指す場合もあるようです。

与えすぎるのが良くない一面の真実を挙げてみましょう。

  1. 過剰な保湿ケアや、保湿能力の高いものを使いすぎると、べたつきやてかりの原因に……
  2. 汗が多い肌に保湿ケアが過ぎると、肌をふやかす原因に……(※a)
  3. 油性化粧品による乾燥保護のしすぎは、触感や見映えの悪さの原因に……
  4. UV防止効果の高いものには、ウォータープルーフや紫外線吸収剤の利用製品が多い……(※b)

1と3は、罪が少なく、強いていえばもったいない使い方と言えるでしょう。肌に悪い作用はありません。しかし、2と4は角質の剥がれを促進し、ターンオーバーを早め育ちの悪い肌に変化する原因です。与えすぎは良くないという言葉の的を射た部分と言えます。

ただし、このフレーズの「与えすぎるのは良くない」という部分が、「与えるのは良くない」という意味に転用されている場合を見かけます。これでは間違ったケアの拡散に繋がる罪多きフレーズになってしまいます。

※a…肌がふやけると角質層が崩れ剥がれやすくなることで、ターンオーバーが狂い、育ちの悪い肌になります。

※b…ウォータープルーフ製品や紫外線吸収剤利用製品に毒性があるのではありません。肌の水分が次第に少なくなったり、紫外線吸収剤の熱刺激を受ける機会が増える欠点があるという意味で、常用さえしなければ、悪い面は気にすべき問題には発展しません。

いかがでしたか?
肌は1日24時間、1年365日、もっと健康な肌に、もっときれいな肌に育とうと努力を続けています。

「過保護にしない」とか、「鍛える」と聞くと、私たちは何か良いことをしているような、ポジティブなイメージが浮かんできます。しかし、肌に関しては、必ずしも当てはまるわけではありません。それどころか、かえって肌の努力を無駄にしていることがあるのです。

こうした言葉に惑わされず、肌のことをよく知り、適切なケアに取り組んでいきましょう。

今日のサッポー美肌塾まとめ

  • 角質は死細胞の層であり、筋肉のように鍛えることは出来ない
  • 言葉に惑わされず、正しい肌知識と、適度なケアを
黒板に注目!

編集後記

日本人は真面目だからでしょうか。今回のテーマのような言葉につい惹かれてしまうようです。相談室には、甘やかしたことへの反省の声まで届きます。

でも、お気に入りの服を扱うように、肌も大事に扱ってあげて下さいね。きっと、肌はあなたの優しさに応えてくれますよ。

「サッポー美肌塾」第629号 / 2017年1月11日 発行


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