前回では、角質を取り除くことによって、一時的な肌の美しさを作っても、本当の美肌づくりにつながらないばかりか、一ヶ月先の肌(角質)はむしろ悪くなっているという話でした。
このような取り除くケアを止め、日々作られる角質がしっかりしたものになれば、肌は美しくなっていくはずです。毎日のスキンケアは、この方向でなされるべきなのです。
でも、そう簡単にできるのでしょうか?
実は、原理はとても簡単です。角質を作り出しているのは、肌自身。あなたがすることは、肌が思い通りに働ける環境を作ってあげることだけです。
まず、悪い環境作りの例を見ておきましょう。
角質を取り除くと、肌はどうなる
見映えの悪い角質を取り除くと、比較的しっとりときれいな角質が最上層となり、肌が美しく見えます。
さらに化粧水や美容液で保湿し、乳液やクリームで保護すると、肌はみずみずしさを取り戻し、いきいきとして見えます。
しかし、元の角質が取り除かれたことにより、角質層全体の防御能力は弱まります。すると、最上層に来た角質は、以前より少しだけ早く水分を失い、縮み硬くなるので、見映えも悪くなります。
この角質は寿命が短く、以前より早く剥がれます。あるいは、見映えが悪いことで、剥がれる前に除去の対象にされるかもしれません。元の角質がそうであったように。
こうなると、肌は「これは大変!防御が弱くなる!」と慌てて、最上層の下に控える表皮細胞の角質化(角化)を早めようとします。ところが、準備不足のまま予定より早く角化した角質には、未熟で水分保持力のない弱々しさがあります。
そして、健気にも外部ダメージから肌を守ろうと、必死で働きます。弱い身体に鞭を打ち頑張るのですが、すぐに燃え尽き、剥がれるのも早くなっていきます。すると、見映えの悪く脆い角質ばかりで角質層が構成されるようになります。
古くなった角質…老化した角質…残った角質……誰が思いついた形容詞か、確かに取り除きたくなる響きがあります。本当は、古いのではなく新しい、老化ではなく若すぎる、残ったのではなく早く剥がれた、角質なのに。
角質の剥がれるテンポが速くなった肌はどうなる
角質剥がれが続きテンポが早まると、量は減るどころか、表皮は必死にたくさんの角質を作り厚みがでてきます。しかし水分量が少ないため、乾燥し、カサカサ。時には粉ふきや皮むけが見られます。皮脂の少ない部位ではそれが顕著です。
皮脂の多い部位では、皮脂に護られているおかげで、そこまで影響はありません。かさつきや皮むけなどもそう見られません。しかし、弱々しい角質の層で構成されていることに変わりないため、肌理の粗さが目立ち、毛穴が拡がってきます。
皮脂量の多少に関わらず、角質が小さく硬いため、毛穴には皮脂が詰まりやすくなります。今までできなかったニキビや大人のニキビに悩むことが増えてきます。肌の柔らかさはなくなり、肌の硬さが気になるようになります。毛穴付近は特に硬くなりやすく、肌がざらついてきます。角栓も増えてきます。
どの部位においても、外部ダメージからの防御力が弱いため、ダメージが伝わりやすく、肌はおびえ過敏に反応するようになります。敏感肌の始まりです。
また、表皮層に留まらず、ダメージは真皮層にも伝わりやすくなります。すると、真皮層組織の劣化が進行、肌の力が衰えていきます。
コラーゲン繊維など弾性繊維組織の壊れはしわやたるみとして現れます。皮膚全体のハリを作っている間質成分=ヒアルロン酸を初めとする糖タンパク、が減少するため、肌のハリがなくなってきます。
必要な材料を提供し、表皮を支えている真皮層の劣化は、表皮の劣化に繋がっているのです。このように、角質の不用意な剥がれから始まり、悪循環が次々と連鎖していきます。肌をほんの一時きれいに見せるために、ちょっと無理をしたことから、この悪循環は始まるのです。
- 表皮角質層の弱体化
↓ - 表皮全体の弱体化
↓ - 真皮層の弱体化
↓ - 表皮の弱体化
↓ - 角質の弱体化
このようなことからも、角質が肌全体の健康と美しさをコントロールしていることが判ります。放っておいても一日一層ずつ剥がれるものなのに、明日剥がれる予定の角質を今日剥がしてしまっては、その場できれいな肌を手に入れたとしても、明日以降の肌を哀れな状態に導いていくのは間違いありません。
いかかがでしたか?
ちょっと怖い角質の話でしたね。決して、間違った角質ケアに踏み込まないように、肌が起こす悪循環のストーリーをしっかり覚えておきましょう。
そして、忘れてはいけないのは、このような状態を作っているのも、肌の持ち主である本人ということです。
今回は、しっかりとした美しい角質を作るケアまで進めませんでした。次回の楽しみということにしましょう。
- 見映えの悪い角質を剥がすことによって悪循環が生じる
- 表皮層の劣化は、真皮層の劣化にも繋がる
編集後記
悪循環、嫌な言葉ですね。でも肌においては、自らの手で起こしている人がたくさんいます。しかも、良かれと思ってしている人がほとんどですから、罪作りなことですね。
このストーリーがいつも頭にあれば、スキンケアに迷いが出ませんし、応用も利くようになってきます。私がそうでしたから、保証します(^_^)
「サッポー美肌塾」第85号 / 2002年8月9日 発行
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