前回では、角質が悪者扱いされるようになった経緯を見ていきました。今回はずばり、角質そのものについて解説していきます。
当たり前にあるものなので、あまり意識することはないかもしれませんが、角質の立場や視点で、講義を読み進めてみましょう。新しい発見があるかもしれません。
角質を構成する、角質層が身体のバリアーとして役割を果たしているのは、広く知られています。“バリア層”などという言葉が、スキンケアで頻繁に使われるようになったからでしょうか。
バリアーとして、身体の健康を守り、また皮膚の健康も守っています。この機能こそが、角質層の最も大切な使命です。
そして、同時に角質層(肌)は「美しさを魅せるもの」としての宿命を背負っています。
2つとも大切なのですが、私たちは、肌の美しさを優先しがちです。つまり、第一使命である肌の健康よりも、第二使命の見映えに重きを置いてしまうのです。
ここに美肌づくりの迷い道、大きな落とし穴があります。
美しさを見せるために、安易な道を選ぶと……
肌の美しさは角質層の美しさ、これを逆に言うと、美しくない肌は角質が原因とも言えます。
美しくない肌の例を見ていきましょう。
- 乾燥しやすい肌
- 硬くなった肌
- ザラザラした肌
- かさついた肌
これは肌の乾燥した姿です。
もう少し詳細にいうと、角質層の水分が少なくなり、縮んで硬くなった角質で構成された肌の姿です。
このような美しさを損なう角質は取り除き、保湿力や保護力のある化粧品で肌を覆ってあげれば、かさつきは見えなくなり、肌の感触も柔らかく感じ、肌がイキイキと見えます。気分だって良くなります。
もう一例見てみましょう。
- 毛穴が黒っぽく見える
- 毛穴に皮脂が詰まる
- 角栓ができるようになる
毛穴という窪んだ皮膚の表面も角質の層で作られています。黒っぽく見えるのは汚れや皮脂・化粧品が酸化し、毛穴の出口付近の肌(角質)にこびりついたものです。このようにこびりつくのは、その部分の肌が硬くなっているからです。
皮脂が毛穴の出口付近で詰まったり、貯まり出すのも、角質がスムーズに剥がれず、角栓が出来るのも、同様に毛穴付近の肌が硬くなっているからです。
これらの汚れや皮脂を溶かしたり、取り除くことができれば、肌はきれいに見えます。毛穴付近に滞る角栓を剥がすことができれば、肌もつるつるになります。
このようなガサガサした乾燥肌や毛穴や角栓が目立つ肌に悩んでいると、悪魔のささやきが聞こえてきます。
- 「古くなった角質を、落とそう!」
- 「硬く厚くなった角質を、剥がそう!」
- 「毛穴の汚れや皮脂を、取り除こう!」
- ……
前回の様々なコピーやフレーズ達です。あなたはこの誘惑に抗することができますか?
迷いますね……このようなケアで、実際に肌が美しく見えるのは、本当なのですから。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
それは、つまり、
- 美しくなったあと、さらに美しくなるということがない
- 一週間、1ヶ月もすればまた以前と同じ悩みが……
前と同じ悩みであればまだ良いのですが、継続していると、悩みが拡大していくことが多いのです。
美しさが続かないわけ~続くにはどうしたら?
肌を美しく見せることは大切ですが、そのために醜くなった角質を人為的に取り除き、角質層の持つバリア機能を弱めてしまっては、マイナス面も同時に作ったことになります。
つまり、一時的に美しさを作り出すことができたとしても、肌自身の持つ力は劣化しているのです。
様々な環境にさらされる顔の肌は、いくら優秀な化粧品の保湿力や保護力に守られていても、バリア層の力が低下すればそれだけ不利になることは自明のことです。
この時、肌の持つ力の弱まりと化粧品の持つ力の均衡点が、肌の状態ということです。ここから、さらに美しくなるというのは夢物語、それどころか、マイナスになることが多いでしょう。
化粧品の持つ力は一定なのに、肌の力は弱まる一方なのですから、その均衡点は低くならざるをえないのです。
では、美しさが続く、さらなる美しさを求めるには、どうすればよいのか?
答えは、簡単です。
- 角質のバリア層としての機能を低下させない
- さらに美しい角質が作られるようにする
つまり、角質を取り除く方向ではなく、美しい角質が育つようなケアに切り替えることです。
角質を剥がす方向のケアを止め、それに代わる製品を使い、スキンケアを進めて行くことで、均衡点は上がっていくのです。
今日明日の肌をきれいに見せるというわけには行きませんが、確実に肌は美しく健康になっていきます。
次回では、その具体的に解説に入っていきます。
- すぐにキレイになるケアは魅力的だが、肌は劣化している
- キレイが続くケアこそ、本来あるべきスキンケアの姿
編集後記
自分にとって不快なものが、すっとなくなると、爽やかで晴れ晴れしい気持ちになります。
でも、肌の場合はそれが仇になるのですね。『美肌は一日にしてならず!』を心に留めておきましょう☆
「サッポー美肌塾」第84号 / 2002年8月2日 発行
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