冬の足音が間近に迫ってきました。
冬といえば肌の乾燥がイメージされます。でも、どうして冬は肌が乾燥するのでしょうか?
「冬は乾燥してるからに決まってる」
「冬は風が冷たいからじゃないの?」
何となく、このようなイメージで冬の乾燥をとらえているのではないでしょうか?
間違いではありませんが、もう一歩踏み込んで冬の乾燥を理解する必要があります。その上で適切な対応ができると、肌は冬でもあまり乾燥しなくなります。
冬は乾燥しているのではない、肌が乾燥しやすい環境…と理解する!
さて、どういうことでしょうね。
事実を見てみましょう。よく乾燥するといわれる東京の一年間の湿度推移は以下の通りです。(気象庁のデータ※,期間:2016年11月~2017年10月,単位%)
年/月 | 平均 | 最小 |
---|---|---|
2016.11月 | 71 | 29 |
2016.12月 | 59 | 25 |
2017.01月 | 53 | 15 |
2017.02月 | 49 | 16 |
2017.03月 | 60 | 13 |
2017.04月 | 66 | 17 |
2017.05月 | 72 | 18 |
2017.06月 | 73 | 21 |
2017.07月 | 78 | 42 |
2017.08月 | 83 | 45 |
2017.09月 | 79 | 32 |
2017.10月 | 82 | 30 |
※毎年の温度や湿度は気象庁のサイトで調べることが出来ます。
確かに冬の方が夏より湿度は少し低目ですが、思ったより変わらない気もします。冷暖房された環境の方がよほど湿度が低いです。20%台、30%台はあたりまえの状態ですからね。
そもそも、どうして冬は肌が乾燥しやすいのでしょうか?
原因は気温低下に伴う汗の減少と、肌が発熱体だからです。そして、ここに風の存在があると、乾燥を飛躍的に促進しています。
東京の冬の平均気温は5℃~8℃ですが、体内温は37℃前後に維持され、肌表面の温度も30℃以上を常に保とうと努力しています。つまり、肌周囲の空気は肌に暖められるため湿度が低下して、とても乾きやすくなっているのです。暖房器具の近くに洗濯物を置くと乾きやすいのと同じで、温かいほうが湿度が下がるのです。
しかも、気温が低いため肌を潤す汗は減少しています。このような肌に風というか、微妙な空気の流れが加わるだけで、ますます乾きやすくなって、どんどん乾燥ダメージが進んでしまうというわけです。
さらにこの風が冷たいとどうでしょうか?
毛細血管は縮み体温を維持しようとします。肌は冷えるままになり犠牲になっています。さらに冷たい風が当たり続けると、血流は停滞、凍傷に至ります。皮膚の代謝活動そのものを諦めてしまうのです。実際はこうなる前に、異常を感じて何らかの対処をするわけですが、冬と肌にはこのような関係もあると理解しておきましょう。
さて、それではどうしたら冬の乾燥を防ぐことができるのでしょうか?ポイントは3つです。
- 水分蒸散を防ぐ化粧品による保護のケア
- 身体を暖かく維持し、肌表面の温度を下げない工夫
- 肌上の空気の流れ(風)を少なくする工夫
1は要するに乳液やクリームなどの油性化粧品で、水分の蒸散を防ぐ保護のケアをするということです。これはいわれなくても多くの人が実行していることですね。
それでは、2や3の意味はどういうことでしょう。
2は、汗が極端に少なくなる状態にしてはいけないということです。流れるような汗をかく必要はありませんが、絶えず分泌されている不感蒸泄の汗を減少させない配慮を求められているのです。寒い冬はこの汗が極端に少なくなりがちだからです。
3は要するに、肌に直接風が流れる状態を、極力避けてあげなさいということです。乾燥しにくくなり、肌としては大助かりなのですね。
もう少し具体的に、2と3についてみていきます。冬の乾燥対策、ここがポイントです。
汗の極端な減少を防ぎ、風の害を少なくする具体策
汗を減少させない…2.身体を暖かく維持し、肌表面の温度を下げない工夫
まず一番に思いつくのは、暖かい衣類・服装を心がけ、身体を温めることです。過ぎるとべたつく汗になるから、ほどほどでいいのです。顔の肌にも絶えず汗が供給されるようになります。もちろん見えない汗、感じない汗でいいのです。他に、運動をするとか、暖かい場所にいるなども対策になります。
多少寒くても騒ぐほどではないという状況はよくあります。でも、問題はここに隠れています。身体が多少でも寒さを感じていると、露出している顔の汗は極端に減少し、肌は汗の供給がないままに乾燥する一方になっています。本人は平気でも、顔の肌は大騒ぎどころか、悲鳴をあげたい状況です。物言わぬ肌の声を聞き届けてあげましょう。暖かい格好をすることは心がけ次第でできることですから……。
ところが、暖かくしていると油断が生じます。身体が寒さを感じないと、顔も無防備になりがちです。化粧品による保護のケアはもちろん、次の風対策も忘れないのが冬の乾燥を防止する基本です。
肌に直接風を当てない努力…3.肌上の空気の流れ(風)を少なくする工夫
究極の防止法は目出し帽をかぶることですが、これは日常生活においては現実的ではありません。マフラーやストール、フルフェイスのヘルメットやフェイスガード、大判のフェイスマスクなど、ケースバイケースで使えるようにしておくことが大切です。
それから意外と知られていないのが、フード付きの衣類の利用です。パーカーやコートを始めフードのついたものです。「顔を覆うわけではないから風は防げないのでは?」と思いがちですが、これがさにあらず、顔表面に風が流れにくくなるのです。肌はずいぶん助かっています。
そしてもっと大切なことは、手軽でおしゃれなものであることです。なぜなら、気に入ったものでないといつの間にか使わなくなるからです。習慣にならなければ、穴だらけの乾燥防止法となってしまいます。冬は長いのですよ。
風がなくても、じっとしているだけでも乾燥しやすいのが冬の季節。いつもと違った観点から、冬の乾燥防止の基本を解説しました。
- 冬の肌が乾燥する隠れた原因は体温にあった
- 対策を知っていても、習慣化しなければ成果はない
「サッポー美肌塾」第573号
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