化粧品とは、切っても切れない関係にある香り。香りは不思議な力を持ち、香りによる治療や療法=アロマテラピーとして広がりを見せています。
アロマテラピーとは、
- Aroma(アロマ)…香り
- Therapy(テラピー)…治療・療法
を合わせた造語です。
エッセンシャルオイル(精油=香りの溶け込んだ油)というアロマ効果のあるオイルを使用し、その香気を取りいれることにより、身体の健康や心の健康作りに役立てようと言うものです。
身近なところで言えば、芳香剤や柔軟剤の香りもその一種なので、私たちは普段から香りと共存していると言えるでしょう。
このような中、香りを美容にも取り入れる方法が紹介されています。なるほどと効用を予感させるものではあります。でも本当にそのような効用があるのでしょうか。
今回は、香りの作用やエッセンシャルオイルを使ったスキンケアについて切り込んでいきたい思います。
香りが心身に作用し、様々な分野で期待される
まずは香りについての知識を深めておきましょう。香りの物理的な伝達経路は、2つあります。
- 香気→鼻(口)→気管支→肺→血液→全身に運ばれる
- 香気→嗅上皮・嗅細胞→嗅神経→嗅球・視床下部に
そして、視床下部から大脳・神経系・免疫系・内分泌系へ伝わる
この経路を見れば、香気が全身に運ばれ、心身の健康を助けるのもうなずけます。
香気が大脳へ伝われば、気持ちをリラックスさせたり、逆に高揚させたりもするでしょう。反対に不快に感じる場合もあり、香りは人の感情や精神と深いところで繋がっているようです。
さらには、神経系、免疫系、内分泌系に伝わることにより、肉体への影響があるのも充分に想像できます。
身体の自然治癒力を土台に、医学は発展してきました。アロマテラピーは自然治癒力そのものを向上させ、医学の深化に繋がるものだといえるでしょう。
もちろん美容分野においても、化粧品によるスキンケア効果を土台から支える働きが期待されます。
化粧品に使用される香料の作用
化粧品に使用される香料は、以下のような作用を担っています。
- 原料臭のマスキング作用
- 抗酸化作用・抗菌抗カビ作用
- 心理・生理面活性作用
以上の3つです。
1.は、化粧品の原材料の臭いを消すことが目的です。無香料の化粧品とは、香料ではなく消臭剤を配合してマスキングしているものです。
2.は、化粧品そのものを酸化させない、傷ませない、いわゆる防腐剤の役割を担っています。このような処置がないと、一度開栓した化粧品は2、3日で腐敗が始まります。
3.は、まさにアロマテラピー効果です。サッポーは時々、昭和の香りと言われますが(^^;、伝統的な香り(フローラル・グリーン)であり、好まれる方も多いのですよ。
最近では、香料にとどまらず、エッセンシャルオイルそのものをスキンケアに利用する方法が紹介されるようになりました。みていきましょう。
エッセシャルオイルをスキンケアに利用するのは?
エッセンシャルオイルは、植物から香りのする油を抽出したものです。花や草木、その葉や根などからも抽出されます。一つの植物から少量しか取れないので、まさにエッセンスと呼べるものです。
揮発性の油であり、蒸発するときに香りを放ちます。揮発性の油といえば、アルコールやガソリンも同様です。
それぞれのエッセンシャルオイルに効果や効能が言われているのですが、たくさんの種類があり、ここでは書ききれません。代表的なものを引用し、紹介しておきます。
- ラベンダー
鎮静作用があり、ストレスで緊張した心と身体をリラックスさせます。やさしい香りで、古くからスキンケアに用いられてきました。手作りコスメにもおすすめです。
- ペパーミント
すっきりとした清涼感のある香りが特徴です。優れたリフレッシュ作用を持ち、ストレスや神経疲労を和らげて眠気を抑えます。また、鼻やのどなどのコンディションを整える作用もあります。
- オレンジ・スイート
神経の緊張を緩めてリラックスさせ、ストレスによるイライラの解消や質の高い睡眠に役立ちます。明るく前向きな気持ちに導く作用があります。なじみのあるオレンジの香りは、広い世代に人気があります。
日本アロマ環境協会(AEAJ、アロマテラピー関連で唯一の公益法人)より引用
エッセンシャルオイルで乾燥対策?
エッセンシャルオイルを化粧品に活用する方法は様々に紹介されていますが、代表的なものが手作り化粧水です。キャリアオイルに、エッセンシャルオイルを数滴混ぜ、精製水で溶くといったものです。
エッセンシャルオイルは揮発性のため、直接肌につけると気化し、その際に肌の脂質を溶かします。ちょうど、注射前のアルコール消毒と同じです。
なので、直接肌につけることはせず、キャリアオイル(オリーブオイルやホホバ油などの植物油)にエッセンシャルオイルをなじませて希釈し、揮発のスピードを遅くします。そして、精製水をベースにして化粧水が完成します。
自然に近い成分の化粧水で、尚且つ、保湿効果があり、乾燥対策になる??と言われれば、肌に優しくて良さそう!と思ってしまうのが人間心理。また材料費も安く済むので経済的ではあります。
でも、このような手作り化粧水で、市販の化粧水のようなスキンケア効果を期待するのは、ちょっと無理があります。
普通の化粧水は、水(自由水)と保湿成分がくっついて蒸発しにくい結合水になっています。それに対し、この化粧水はほとんど水でできているので、保湿力はありません。つけてもすぐに蒸発して、肌の水分を奪っていきます。
キャリアオイルによる乾燥保護を期待するのがせいぜいでしょう。でも同じ保護なら、乳液やクリームを使用した方が乾燥からの防御力が強く、肌は幸せです。
このように残念ながら、エッセンシャルオイルでスキンケアの効用は望めません。
好きな香りを化粧品で楽しみたい!というのが、香り本来のスキンケアにおける利用方法だと言えます。
普段お使いの化粧水にエッセンシャルオイルを数滴垂らします(一回の使用分ではなく容器に)。これで、スキンケアでアロマ効果を楽しめます。つまり、香料として使用するのです。
しかし、化粧品材料としては未知数なので、肌につけると害になるものがあるということは知っておきましょう。(柑橘系のオイルは光毒性があるので、特に注意が必要)
また、化粧水との香りのマッチングは保証できません。事前に手の平に化粧水を出し、エッセンシャルオイルを微量混ぜて、香りを試す必要がありそうです。
- 香りは、心身の健康に影響を与える
- エッセンシャルオイルは、スキンケアではなく、香りを楽しむもの
編集後記
私も柔軟剤などの香りが好きです。気持ちに大きく影響を与える香りですから、これからもきっと色んな分野で発展していくのは間違いありません。
でも、スキンケアに利用するというのは……積極的にお勧めできないのですね。最初は使っている化粧品の香りが苦手でも、そのうちに慣れて、好きになっていくことが多いものですよ。
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