「医薬部外品扱い」あるいはまた、「薬用」、このような表示のある化粧品があります。簡単に言えば、化粧品と医薬品の中間に位置する役割のケア製品です。
ところが、これら薬用化粧品にはクリームもありますし、乳液もあります。ハンドクリームも……。化粧水、日焼け止め製品、ひげそり用に使用するもの、洗顔用の薬用石けんなどもあります。シャンプーやリンス(コンディショナー)のようなヘアケア製品にもあります。
「化粧品とどう違うの?」
「私は、どちらを選ぶべき?」
「毎日のスキンケアには、どちらがよいの?」
このような疑問が湧いて当然です。見た目や使用感に違いがあるようにも思えないし…というわけです。ところが医薬部外品(薬用化粧品)の常用によって、知らない内に失敗ケアになっているケースがあり、スキンケア相談室のにぎわいを作っています(^_^;)
医薬部外品とは?化粧品との違いは?
薬事法は、医薬品・医薬部外品・化粧品の3つのカテゴリーに分けて規制しています。サッポーは2分類にして欲しい、医薬品と化粧品だけが良いと思っています。どっちつかずの医薬部外品があると、あちこちで誤解を生み、誤った使用から不幸を生んでいる現実があるからです。
でもここで、そんな話をしても埒があきません。スキンケア用品としての、医薬部外品の存在を、まずは正しく認識して頂くことにしましょう。
医薬部外品は、化粧品のように全成分表示をしなくてもよいことになっています。但し、化粧品のように届出だけで販売することは出来ません。厚生労働省の認可を得て、初めて販売できる製品です。
医薬部外品…認可要件
医薬部外品扱いのスキンケア製品にするためには、以下の効能が認められる有効成分が何か一つ配合されている必要があります。効能は以下の内容です。
- スキンケア関連の医薬部外品申請の効果・効能
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- あせも、ただれ、ひび、あかぎれを改善補助するもの
- あせも、ただれの予防
- 手足のカサツキ、荒れの改善補助をするもの
- 日焼けによるしみ・そばかす予防(美白効果)
- ニキビ、肌荒れ、かぶれの予防
上の効能目的の製品として申請し、認可を得るわけです。すると、
- 医薬部外品扱いの製品は上記内容で効果・効能を表示出来る
化粧品は効果・効能を謳うことは出来ませんが、医薬部外品だと上の内容で表現できることになります。
以上が、消費者から見た一般の化粧品と医薬部外品扱い化粧品との、重要な違いです。想像通りでしたか?
「上以外の効果・効能はないの?」
「敏感肌用には医薬部外品がよいと思ってた…?」
上に挙げた効能・効果に限定された製品です。また、敏感肌に効果があるといった効能は医薬部外品とは関係ありません。また別の話ですね。(^_^;)
「思ってたイメージとは随分違うけど、医薬部外品扱いの化粧品使用で、どうして失敗するの?」
次節でそのお話しをしましょう。
医薬部外品(薬用)という曖昧な存在が作る功と罪
医薬部外品には、医薬部外品らしい製品と、一般の化粧品と何ら変わらない製品があります。
化粧品には使用が許されない成分を使用し、治療的側面の高い成分を使った目的性の高い製品がある一方、一般の化粧品に使用される成分を使用し、有効成分としての必要なデータを揃え、医薬部外品の認可を得た製品があります。
成果が上がり、同時に問題も発生しやすいのは、前者の真に医薬部外品らしさを持つ製品達です。後者は一般の化粧品と変わりませんが、扱いは薬事法上、化粧品ではなく、医薬部外品として分類されます。
消費者の視点としては、いかがでしょうか?
サッポー流に、医薬部外品を意訳して解釈した描写をご覧下さい。
医薬部外品は「肌を育てよう、健康を補助していこう」が優先した目的ではなく、肌が抱える比較的緊急性の高い問題点の解消を第一目的にすることが、本来の役割です。
従って本当に困ったときに、一時的に利用するのが消費者の立場として賢明なのですが、その時良い結果が出ると、使い続けるともっと良いだろうという判断をしがちです。
病気になってよく効いた薬を、病気が治ったあとも飲み続ける人は、まずいませんが、(医薬部外品に分類された)化粧品なら、平気で使い続けます。本来、病気が治れば次に目指すのは健康増進です。軽い運動をしたり、スポーツをしたり、食事を考えたりといった、より高次なステップに昇って行くものです。
肌のケアだって同じです。
ところが肌のトラブルなどは、医薬部外品を使用して運良く相当の成果を上げたあとも、ケア方法をステップアップせずに、治療的側面を持つ医薬部外品を使い続けて、
「良くならない、なぜ?」
「あの時良くなったのに、また調子が悪くなった(-_-;)」
…などと、悩んでいるケースが驚くほど多く見られます。
医薬部外品の罪の方を先に説明しましたが、もちろん功もあります。治療的側面が強いわけですから、成果が出るのが早いわけです。
大切なのは、ある程度の成果が現れた段階でケアをステップアップすることです。医薬部外品を卒業し、化粧品で本格的なスキンケア(健康ケア)に踏み込んでいくことが大切なわけです。
- 医薬部外品扱いの化粧品は、短期間使用を基本とする
医薬部外品(薬用)常用の失敗パターン
医薬部外品で、美白効果を謳った製品の問題点や、紫外線吸収剤使用製品の問題点はよく知られていますが、ニキビに良いという製品や敏感肌用の製品で、医薬部外品扱いの問題点はあまり知られていないのかも知れません。
ここではニキビに悩む肌を例に上げて説明してみます。
例えばニキビ
皮脂が詰まった状態をニキビといいますが、炎症を起こした状態のものも同じニキビです。医療用語ではいろいろと分類されていますが、一般用語は定義がないのであいまいです。
炎症が酷くなるようだと肌にとっては大打撃なので、スキンケアという範疇でなく、治療という手当が必要な状態といえます。しかしニキビくらいで毎日のように医者に通うこともできず、自己治療に励むのが多くの方の現状です。
そんな時、ニキビによいといわれる製品に医薬部外品とか薬用○○が多く見られます。
皮脂詰まりの原因である未熟な硬い角質を取り除いたり、詰まっている皮脂そのものを取り除きやすくしたり、あるいは炎症の防止や、炎症進行の防止に、あるいはまた皮膚の再生力を高める作用を期待するもの…等々の効能があります。
お気づきのように、これらの作用は、比較的急を要するニキビ防止とニキビ悪化に対しての効用であって、ニキビのできない健康な肌を作ることとは次元の違うケア(治療)であるわけです。
しかし、一度良い成果を体験すると、いつまでも上のようなケアを続けてしまう傾向があります。炎症を伴う状態は何と言っても厭だからでしょう。早い機会のどこかでケア方法をステップアップしなければならないのですが、なかなかそのような勇気が出て来ません。
その場その場で危機を回避しながら、肌としては劣化していくことがほとんどです。そしてその内どうしようもない過敏な状態の肌になってしまってから、「これではいけない」と考え、ケアを変えようとします。
ニキビとは皮脂が詰まる肌トラブルです。詰まると炎症を起こしやすいので、2つの方向からの対処が必要です。
炎症が起きると、肌を作っている細胞は大急ぎで作り直される為、治った肌はとても弱い未熟な細胞で作られた状態になります。ちょっとしたことで皮脂詰まりを再発させやすい状態です。
- 炎症が減少する、炎症が軽く済む対策(治療→医薬部外品利用→その他)
- 細胞の育ち度を上げ、皮脂が詰まらない肌を作る
もちろん、2.が最終目標ですが、既にニキビができやすい肌では、炎症対策と並行した肌が育つケアになるようにしていく必要があるということです。
肌改善の一過程でのみ利用するのが、適切な医薬部外品利用の鉄則です。
サッポーが医薬部外品(薬用)扱いのスキンケア製品を日常のスキンケアに利用するのを積極的にお勧めしないのは、
- 誤った使用が多い
- 成分を隠すために医薬部外品扱いに……??
- 医薬部外品の扱いにした方が販売しやすい…といった製品
……等の現状があるからです
消費者視点から見た医薬部外品(薬用)扱いの定義は実に曖昧なため、このような現状があり、いかがわしい製品の流通にも繋がっているように思います。
- 医薬部外品は肌が健康に育っていくという目的の製品ではない
- 肌を作っているのは、肌自身である
「サッポー美肌塾」第448号
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