気温が下がり、肌にとって厳しい季節になってきました。
乾燥は様々な肌トラブルを招き、さらにトラブルを深刻化させるダメージの元締めのような存在です。そして、これから本格的に始まる冬は何といっても肌を乾燥させやすい季節です。
そもそも、冬はなぜそんなに乾燥するのか。乾燥の背景を知り、今年の冬は肌の育ちをもう一段上げていきたいものです。
冬に乾燥肌が進行しやすい二つの背景
乾燥度合いを測るものとしては湿度が何%で、というのが一般的です。そして、冬は湿度が低いから乾燥する、夏は湿度が高いから乾燥しない、と私達は考えます。
ところが、平均湿度で各月を見わたすと、東京で冬場は50%前後、夏場は70%前後です。大阪だと冬場は60%前後、夏場は70%前後。湿度が高いといわれる富山を見ると、冬場も夏場も80%前後あります。
このように冬は湿度が極端に低いかというと、そうでもありません。
もちろん、平均湿度だけで考えるのは乱暴ですが、湿度と肌の乾燥はそんなに高い相関関係があるわけではなさそうです。夏でも湿度が20%台~40%台のエアコン空間で長時間過ごすこともあるのですから。
しかし、冬に肌が乾燥するということは、誰もが知っています。では、どうして乾燥するのでしょう?
- 背景1:汗の減少 → 冬は肌を潤す水分が少なくなっている
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肌を絶えず潤す水分には、不感蒸泄の汗と有感蒸泄の汗があります。
不感蒸泄の汗とは、体液中の水分が絶えず滲み出ているものです。有感蒸泄の汗とは、気温や運動などにより汗腺から分泌される、いわゆる汗です。体温調節が主目的ですが、肌を潤す大きな源泉にもなっています。
気温が低くなる冬は、不感蒸泄の汗だけでは潤いが足りません。潤いを与えられると同時に、肌は水分蒸発もしているからです。
肌に汗を溜め、ベタベタする夏のような状態は困りますが、蒸発する分を補うくらいの汗は、冬にも欲しいところです。運動して体温を上げると気温が低くても汗が増えますが、いつも運動しているわけにはいきません。
このように、冬は絶えず肌の水分が不足し、乾燥する背景があるというわけです。
- 背景2:体温が一定に保たれている → 体温が肌からの水分蒸発を促進している
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人間は恒温動物です。気温が低くなっても、発熱装置(筋肉等)が働き、体温は一年を通じ一定に保たれるようになっています。
外気に触れる肌表面も表皮の0.2mm下に張り巡らされた毛細血管を流れる血液によって絶えず温められています。この状態が肌からの水分蒸発を促進しているのです。
湿度が50%、60%あったとしても、体温によって温められた肌周辺は温度が高くなっているため、湿度が一気に低下し、乾きやすい状況が作られます。気温が10℃や15℃で、湿度が60%あったとしても、肌の周囲は湿度が20%台、30%台になっているのです。とても乾きやすい環境です。
寒い冬、湿度が高くても肌が乾燥しやすいのはこのような背景があるからです。
乾燥対策の基本は、肌を護ること
このように、外でも室内でも、冬の肌はいつも乾燥の危機に直面しています。乾燥しないのは入浴中ぐらいです。しかし、汗も体温も生命を維持する身体の根幹的な仕組みです。これらに抗うことはできません。
では、どうするか?
まず私達がしなければならないのは、乾燥した空気から肌を護ることです。油性化粧品でしっかり水分の蒸発を防ぎます。乳液をクリームに変えたり、乳液とクリームを重ねるなどして、保護力をアップさせておきましょう。
その上で、マスクやマフラーなどのツールを利用して、物理的に肌を護ります。コートの襟を立てたり、フード付きのアウターなども風よけ効果があり、肌を護ってくれます。
化粧水や美容液による保湿ケアは、乾燥を癒すケアです。水分蒸発を少しは遅らせますが、乾燥から護る力はありません。
でも、冷たい風に当たった日などは、この癒やしが嬉しいものです。乳液やクリームの前にしっかりと保湿ケアもしてあげましょう。
- 冬に肌が乾燥するのは、汗と体温が関係している
- 冬は、乳液やクリームによる乾燥保護ケアをしっかりと
編集後記
冬の乾燥は、湿度が低いからではなく、私達の肌環境に要因があるのですね。
冬の対処法を知って、少しでも快適な肌環境を作れたらいいですね。肌を護れるのは、持ち主であるあなただけです。
「サッポー美肌塾」第496号
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