肌が敏感で、何かしらの炎症性の赤みや、かゆみなどに悩まされることが多い肌にマスト細胞の話を以前、脂漏性皮膚炎で題材にしました。3つの刺激を簡単にまとめ書きしただけの解説であったためか、多くの質問をいただくことになりました。
もう少しわかりやすく伝えないといけないと思った次第です。(以下、抜粋)
マスト細胞とは
免疫細胞の一つで、毛細血管や神経組織への連絡係をしている細胞です。脅威を感じるとヒスタミンを発砲し、毛細血管を拡張させて炎症を起こす(免疫反応)準備をしたり、痒み神経を刺激して痒みを感じさせたりします。本来は身を守るための大切な免疫反応ですが、マスト細胞が過敏・過剰に働くようになると、ちょっとした刺激で炎症を引き起こすことになります。
痒み、赤みの発生、湿疹やかぶれ症状の起きやすい肌は、バリア能の低下から、免疫細胞の一つであるマスト細胞が過敏・過剰に働き、炎症を加速するという悪循環に陥りやすい状況にあります。
マスト細胞を活発化させる三つの刺激
- 肌への侵入物(例:紫外線、化粧品、雑菌・汚れ・汗など)
- 冷・熱の刺激(冷たい・熱いの刺激…例:39℃以上の入浴は×)
- 物理的な刺激(例:マッサージ、メイクブラシ、パフ、髪の毛先など)
健康な肌にはなんでもない刺激が、過敏になった肌にはマスト細胞が過敏・過剰に騒ぐ原因になると考える必要があります。
上に挙げた三つの刺激を、もう少し生活場面に照らして解説することにします。
1.肌への侵入物(例:紫外線、化粧品、雑菌・汚れ・汗など)
- 敏感肌は紫外線の影響を受けやすい
-
紫外線はストレートに肌に侵入してくる刺激です。浴びた瞬間から酸化破壊が始まっています。防御のケアをしていたらそうでもないのですが、素肌だと真皮層下層まで侵入して刺激を与えています。でも、これくらいの刺激は時間が短いと健康な肌なら何も反応しません。でも、確実に破壊活動は行われています。直ぐにダメージが表面化するものではないので、残念ながら体感としては、わかりません。
しかし、(敏感さの程度にもよりますが)敏感な肌だと、紫外線を少し浴びただけで、ピリピリ・チリチリした刺激を感じます。さらに反応する肌は、赤みや炎症として直ぐに現れます。肌状態によって、このような幅があります。
- 侵入するのは化粧品に違いないという思い込み
-
紫外線は見えない侵入物ですが、化粧品や雑菌・汚れ・汗などは存在感もあり、化粧品は自らつけているものですから尚更なのでしょう。「○○をつけたから赤くなった、肌に合わないようだ」と早合点しているケースをよく見かけます。
化粧水は浸透し(なじみ)やすいので、肌内部に侵入もしやすい製品です。バリア能の低下した肌、つまり敏感な肌では、これらを付けると直ぐに侵入し、肌も反応します。この場合、今の肌には合わないと判断して正解です。でも間違えないで下さい。“今の肌状態”に合わないと言うことですからね。肌が健康を取り戻し、バリア能が高まれば普通に使用できるのです。肌に合う・合わないの評価は、敏感ではない状態の肌で行ってください。
一方、乳液やクリームなどの油性化粧品は化粧水のように直ぐに浸透しません。ゆっくりとした時間の経過とともに角質層(バリア層)になじんでいきます。お昼を食べて、午後の仕事中にピリピリしたりします。気になって鏡を見ると赤くなってる部位が…こんな反応のパターンになりがちです。
では、このように時間が経過してからの反応はいつも油性化粧品なのかというと、必ずしもそうではありません。雑菌や汚れ、それに汗が影響しているケースも多いのです。汗は肌に浸透しやすく、肌上の汚れや雑菌とともに侵入するのです。
- 乾燥がバリア能を、より一段と低下させている
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乾燥とは、角質層の水分が少なくなることを言います。角質層を作っている一つひとつの角質は表皮細胞が平たい死細胞となって完成、それは、わずかに水分を含んでいます。これらの角質は脂質によって連なり、層を作っています。この角質が乾くとどうなるでしょうか?
正解は、縮んで硬くなります。一つひとつの角質が縮むと、角質間に隙間ができてしまいます。何も通さないはずのバリア層なのですが、この隙間から通しやすくなってしまうのです。すると、肌上の化粧品を始めとした様々なものが侵入しやすくなります。
- 肌への侵入物への対策は?
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最も注意すべきは合う化粧品を探すことではなく、肌に化粧品や汚れ・雑菌・汗などの侵入を防ぐことです。だからといって、肌にケアをしない……というわけにはいきません。なぜなら乾燥や紫外線も侵入の原因になるからです。
では、具体的にどんなケアをしていけばいいのでしょうか?
洗浄剤を用いた肌洗浄は中止し、浸透・侵入しにくいサッポーのクレンジングクリームで汚れを浮かし、あとはすすぎだけの洗浄法に切り替えます。
浸透しやすい化粧水や、乳液、クリームはしばらく中止し、ワセリンでの保護か、あるいはサッポーの浸透・侵入しにくいクリーム「エスカバー」で肌を乾燥から保護することで下地作りとします。
上のようにして作った下地に、UVケアを重ねます。この辺りが、マスト細胞が落ち着きを取り戻す敏感肌ケアの標準的なスタートと言えます。
でも、侵入物も一つの要素に過ぎません。
次に解説する2種類の刺激にも注意が必要です。
2.冷・熱の刺激(冷たい・熱いの刺激…例:39℃以上の入浴は×)
肌につける化粧品やその成分については異常なほどの注意や関心を向けるのですが、この冷・熱刺激は、気づくことなく与えているケースがほとんどです。あまりに生活に溶け込んでいるので、まさか肌が異常を感知して、悲鳴を上げているとは思えないのでしょう。
冷たい刺激とは何かというと、例えば、冬の風(空気)に触れ続ける時などです。冬は寒く冷たいに決まっていますから、肌が悲鳴を上げていても自覚できません。5分で悲鳴を上げるマスト細胞の肌もあれば、10分くらいなら様子を見て大騒ぎしないマスト細胞の肌もあります。よく育ち、バリアーのしっかりした肌のマスト細胞なら、一時間でも騒ぐことはありません。このような視点で自分の肌を見つめ直し、冷たさを防御するすべを知り、備えておくべきです。
まぁ、でも、この冷たさ対策は比較的出来ている人が多いように思います。
問題は熱の刺激…代表的なものは、お風呂、入浴ですね。
「敏感な反応の多い肌は、39℃以上の入浴はしない。」
「敏感肌の標準として38℃台がいいですよ。」
「冬でも、浴室温さえ30℃以上に出来たら、38℃でしっかり暖まります。」
サッポーはこのようにアドバイスしています。これが守れたら、過敏・過剰に大騒ぎしやすくなっているマスト細胞も次第に落ち着いて、多少のことでは反応しなくなっていくのですが、解っていながらも、なかなか出来ない人が多いようです。今まで、40℃、41℃、中には、42℃のお湯に平気で入っていた人にとって38℃台のお湯はすごく寒く感じるからです。
しかし、このような熱刺激を毎日与えていると、過敏になったマスト細胞は、肌を敏感に反応する体制を維持しようとします。いつでも炎症を起こして、危険から身を守る正義の役目を果たしているつもりなのです。
風邪を引いて病院に行くと、「しばらくお風呂には入らないように!」という医師がいれば、「お風呂でよく暖まって、しっかり休みましょう。」という医師もいます。なぜだかわかりますか?
実は、どちらも正解なのです。もちろんケースバイケースなのですが……。このお話と、敏感肌のマスト細胞と入浴の関係には通じるものがあります。
入浴して温まった血液が体中を巡り出すと、免疫機能が高くなります。マスト細胞だけでなく、様々な白血球を含めた免疫細胞が活発化します。風邪菌をやっつけてくれるから、早く風邪が治るわけです。でも、既に発熱して、しかも38℃台、39℃台の熱が出て、ふらふらしていたらどうでしょう。入浴して暖まらなくとも、熱が出て免疫機能が猛烈に働いているのです。さらに入浴するのは、弱った体力がさらに奪われ、風邪をこじらせるだけです。
敏感な肌は湯温39℃以上の入浴はダメ、38℃台が良いと一律に解説しておりますが、現実には、37℃台にしないと落ち着きを取り戻さない敏感肌もあれば、40℃を超えなければ落ち着いていく敏感肌もあります。この湯加減については、あなた自らが肌と相談しながら掴んでいくことが必要です。
3.物理的な刺激(例:マッサージ、メイクブラシ、パフ、髪の毛先など)
髪の毛先が触れるだけでかゆみや赤みが現れる超のつく敏感な肌がありますが、問題は、このような分かりやすい状態ではなく、気づくことなく与え続けている物理的刺激です。
一つ相談例を挙げてみましょう。
サッポーのクレンジングクリームでクルクルしてすすぐだけ。エスカバーをつけて、UVケアもちゃんとしてる。なのに、冬になって敏感さが増してきた?肌の調子が良くない、いつになったら敏感肌から脱出できるの?
ケアを始めた夏にはどんどん肌の調子が良くなっていく実感があったのに……
相談者のボトルネックは、冬が近づき、汗が少なくなるとともに肌が硬くなっていたのを気づかなかったことにあります。優しくクレンジング出来ているつもりだったのです。指の滑りも滑らかで、肌に刺激を与えているなど想像さえしませんでした。
肌が硬くなっていても、指の腹と肌の間に柔らかいクリームがあると、硬さに気づくことが出来ません。この状態でクルクルすると、角質一つひとつの硬さが、肌内部をスクラブでごりごりしているような刺激を与えていたのです。この内部から伝わる強い物理的刺激に、マスト細胞は悲鳴を上げ続けていたのです。
……これはなかなか思いつかない刺激ですね。
もし、このような理由でマスト細胞が騒いでいると感じたら、どのような注意をすればよいのでしょう?
サッポーでは次のように、案内しています。
クレンジングクリームを肌にのばす前に予洗いして、肌に水分を含ませ、すっかり柔らかくなってからクルクルすることです。
冬ということを考慮すると、これでもまだ不十分かもしれません。予洗いして直ぐクルクルを始めるのではなく、一呼吸、二呼吸おいて始めることをアドバイスしました。実際には、お風呂で暖まってから、クルクルするようにされたそうです。以降順調なご様子で、この冬の終わりを目標に、敏感肌からの完全脱出を目指されるとのことです。
いかがでしたか?
3つの刺激を紹介しましたが、1の侵入物には気づきやすいのですが、2の冷熱と3の物理的刺激は見落としがちになるため、敏感肌脱出を邪魔するボトルネックとなり、長引くことに繋がります。思い当たる節がないか、確認してみましょう。
肌の炎症とマスト細胞には、様々な関係が作られています。大切なのは、1~3のそれぞれにおいて、
『私の肌はどの程度のこと(刺激)で、マスト細胞が過敏・過剰に働いてしまうのだろう!?』
ということを常に意識し、あなたの肌の現実を掴んでいくことです。
少し長い講義になってしまいましたが、1歩踏み込んだ生活場面を紹介して知識を深めていただきました。これが良い!という情報や、知識だけでは不十分です。知識を実際に活用できる「知恵」として身につけましょう。
- 3つの刺激をよく知り、気付きにくい刺激にも配慮する。
- マスト細胞が、どんなことで刺激を受けているのかを追求する。
「サッポー美肌塾」第577号
更新
スタートを誤らない!敏感肌脱出の「鉄則」
赤みや、湿疹、アレルギー症状などの炎症が常にどこかにある…、敏感肌は実に様々な理由・きっかけで陥る症状です。
- たとえば、ニキビがいつの間にか赤みや痒みを伴う炎症ニキビに!
- ピーリングケアで、気が付けば、何をつけても反応する肌に!
- etc...
あれが良いこれが良いと聞いて、いろんな情報に振り回されて、ますます悪化させていく、どうして良いか分からず途方にくれる……。これが敏感肌の人がハマりやすいパターンです。
理由・きっかけは様々ですが、肌のバリア能が低下して、いろんな刺激やダメージに過剰に反応するようになったのが敏感肌の全てです。
このような肌が使う化粧品には鉄則があります。
「肌に浸透しにくい」化粧品で肌を守るのを、敏感肌ケアのスタートにすることです。ここを間違うと、敏感肌から脱出できません。
サッポーの「敏感肌脱出プログラム」で最初の一歩を踏み出しましょう。間違いのないスタートが大切です。
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