冬になれば、かなり多くの人が肌にカサつきを覚えるようになります。顔で感じる方もいれば、手足の皮膚で顕著に感じる方もいるでしょう。
見た目が悪くなったり痒みが生じたりして、病院に行くと、医師に乾皮症や皮脂欠乏性湿疹などと診断されます。ステロイド剤が処方されると、「えっ、大丈夫なの?」と不安に感じたり、中には治療に疑心暗鬼に陥り、使用しない方もいるようです。
皮膚疾患には違いないのですが、よく理解出来ない病名がつくと、何かとんでもない病気になったように感じるのかもしれません。同じ症状でも乾燥肌と言われたのなら、さして驚かないでしょう。日常使われている言葉だからですね。
そうです。乾皮症や皮脂欠乏性湿疹などは全て乾燥肌の延長上にあるものです。けっして、生まれつきの体質などではありません。肌の乾燥を放置していると、誰でも乾皮症になります。また、皮脂分泌機能も低下してきます。乾皮症には様々な程度があるのですが、赤みを帯びたり、湿疹や炎症を伴うと皮脂欠乏性湿疹(皮膚炎)といった呼ばれ方が多くなります。
要するに、皮脂分泌量が少ないからなるのではなく、乾燥肌を進行させた結果起きる皮膚疾患だと知っておきましょう。
でも、「なんだ乾燥肌のことなの」と安易に考えてはいけません。乾燥は肌老化の三大ダメージの一つであるだけでなく、あらゆる皮膚トラブルの最大要因でもあります。乾皮症や皮脂欠乏性湿疹などはその一つに過ぎません。あまりテーマを拡大しすぎると収拾がつかなくなりますので、講義を元に戻します。
様々な肌を乾燥させる原因 ⇒ 乾燥肌 ⇒ 乾皮症 ⇒ 皮脂欠乏性湿疹と、このような流れで認識頂ければと思います。
さて、それでは、どのような症状があり、どのような対策と予防法があるのかを見ていくことにします。
乾皮症・皮脂欠乏性湿疹の特徴や症状
特徴
- 肌が乾燥しやすくなる冬期に増える症状です。高温多湿で汗や皮脂が増える夏は症状が少なくなり、治ってしまう人も多くいます。しかし、環境により夏でも発症することはあります。
- 子どもと高齢者に多い疾患です。子どもは皮脂分泌が少なくバリア層(角質層)がまだ未成熟で弱いため、また高齢者は肌老化が進んでいることが多く、皮脂分泌や汗も少なくなる傾向にあるため発症しやすいのです。でも、青年・壮年層にも普通に見られます。
- 無防備であることの多い足や腕に発症しやすいのですが、頭皮や顔の肌、背中などにも発症してしまうものです。頭皮のフケ、顔の肌の粉ふき、皮むけ…はその兆候です。背中も衣類との摩擦により、発症しやすいのです。
疾患の始まりと症状の進行
- 皮膚が乾燥し、カサカサ・ガサガサした感触を覚えるようになります。よく観察すると、肌が粉を吹いたように見えたり、フケのような落屑(らくせつ)が起こっています。(頭皮のフケも同質です)この状態が続くと痒みも出始めます。痒みが出て初めて落屑していたことに気づく人もいます。
- 乾燥が続き症状が進行すると、肌(皮膚)がまるで魚の鱗を貼り付けたような様相、あるいはまた、肌がひび割れたような模様を見せるようになります。痒みも頻繁に感じるようになっています。
- 肌が本当にひび割れを起こすと炎症が起こり始めます。赤みが現れるだけでなく、湿疹が見られたり、水ぶくれができたりします。強い痒みを伴うようになり、就寝中に目覚めたり、眠れなくなる人も多くなってきます。
乾皮症・皮脂欠乏性湿疹の原因と対策・予防法
原因・促進要因
肌を乾燥させることが主原因ですが、その発症機序には様々なケースがあります。
- 冬の外気や風に肌をさらすことが多い
- 肌の乾燥を放置
- 老化の進行で代謝が低下、汗・皮脂の分泌機能が衰えている場合
- 痒みを我慢出来ず掻くことで症状を促進・深化させる
- 衣類による摩擦で発症、または疾患を促進。化繊(繊維)製品に多く見られる
- 台所用洗剤、洗濯用洗剤との頻繁な接触(主婦湿疹もこの疾患)
- 揮発油類(アルコールやベンジンなど)との接触が時々ある肌
- 肌洗浄剤(洗顔料等)の種類や洗い方で皮脂や角質を落としすぎている
- 耐水機能を強化した(ウォータープルーフの)UVケア・ベースメイク製品を継続使用
基礎となる予防法
洗い過ぎない化粧落とし・洗浄が行われ、適切な保湿・乾燥保護ケア、そしてUVケアがなされていたら、多少のことでは、乾皮症や皮脂欠乏性湿疹などに陥りません。十分な予防法となります。
ただし、冷たい風(空気)に当たったり、湿度の低い特殊な環境に居続ける場合、化粧品の防御だけでは不足します。衣類や小物を利用した防御の習慣が身に付いて初めて、合格となります。
つまり、いつも肌にとって良い環境を作り、維持してあげることです。サッポーが推奨する「肌が育つケア」そのものだといえます。
発症してしまったときの本格的な対策
一定以上乾燥が進むと、皮膚の基礎体力が下がり、回復にも時間がかかります。そうなると坂道を転がるように、さらに状態が悪化していきます。
乾燥した皮膚は、水分保持力が弱まり、汗・皮脂分泌の減少をも伴います。つまりバリア能が低下し、代謝環境が悪くなっているのです。そこに乾燥ダメージを受けたら、一層大きく影響してしまうのです。
このような経緯を踏まえた上で努力しても、「症状がよくならない」「回復力がなくなってしまった」と感じたら、皮膚科医のお世話になるのも賢い方法です。痒みや炎症が止まることで、回復のきっかけを作ってくれます。
医療のお世話になる場合
- ステロイド剤の塗布で炎症と痒みをストップさせる
- かゆみ止めの塗り薬(抗炎症剤のこと)を使用する
- サリチル酸・尿素配合の薬剤や化粧品で角質の腐食を速め肌を柔らかくする
- 保湿効果のあるヘパリン類似物質※の利用で肌を柔らかくする
(※ヒルドイド○○やビーソフテン△△が有名)
等々が多く見られる処方です。いずれも、痒みの発生を少なくし、掻いて症状を悪化させるのを防ぐのが主目的です。あとは、肌自身のターンオーバーにより、正常な肌に回復するのを待つことになります。
ここで忘れてはいけないのが、「回復するのは肌の力」であると言うことです。医薬品はよくなるきっかけを作ってくれるものに過ぎないのです。
安易にずるずるとこれらの薬剤に頼っていると、肌が育たず、症状を進行させてしまうことにもなります。乾皮症・皮脂欠乏性湿疹が慢性化してしまいます。正常な肌、よく育った肌に回復する力がなくなっていくからです。
あくまで基本は、日々のケアにあることに変わりはありません。上の「基礎となる予防法」で解説したように、肌が育つよい環境作りに徹しましょう。
日々の肌環境作り(ケア)がしっかりできていたら、多少の乾燥ダメージを受けても、2~3日ですっかり回復するようになっています。乾皮症とか、皮脂欠乏性湿疹のような状況に陥ることはありません。冬でも、しっとりすべすべの肌作りを目指しましょう。
- 乾皮症や皮脂欠乏性湿疹は、乾燥肌が進行した状態を言う
- 回復するのはあくまで「肌の力」日々のケアで育つ環境づくりを
「サッポー美肌塾」第651号
更新
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