
肌が日々新しい肌を作り、日々古い肌を排泄する営みの全行程を「ターンオーバー」と呼んでいます。そしてこのことが、肌の健康と美しさ作りに密接にかかわっています。
スキンケアを解説するに当たって、ごく基本的な言葉にもかかわらず、なぜか多くの誤解を招き、様々な悲劇となる肌トラブルを生み出しています。
今回はこの辺りにポイントを絞り、「ターンオーバー」について案内してまいります。
「ターンオーバー」の誤った解釈が悲劇を生んでいる
まず、「ターンオーバー」について再確認しておきましょう。
ターンオーバーとは
表皮細胞の新陳代謝の様をこう呼んでいます。
新陳代謝は夏目漱石が編み出した俗語とされていますが、古いものが新しいものに入れ替わっていくことを意味し、現代ではあちこちで普通に使用されるようになりました。
表皮細胞は日々誕生しています。誕生した細胞は、角質になる準備を整えながら、押し上げられていきます。準備が整った細胞は平坦になって、核を消失し、死細胞の角質として完成します。このような角質が十数層も重なり、肌を護ります。最表層に至った角質は最後の勤めを終えると、垢となって肌から離脱していきます。

つまりターンオーバーとは、細胞の誕生から垢となって剥がれていくまでの工程を言います。28日ぐらいのサイクルで行われている状態が良いとされ、肌の健康と美しさに重大な影響を与えています。
ここで世間では、どのように「ターンオーバー」という言葉を扱っているのか、例を紹介します。
- ターンオーバーが速いほど、肌はきれいになる
- ターンオーバーが遅くなって、古い角質が滞留している
これらが何となく正しいと感じた方は要注意です。既に間違ったケアに一歩を踏み出している可能性があります。どういうことなのか、見ていきましょう。
ターンオーバーを正しく知るためのポイントを解説
- ターンオーバーが速い方が良い?
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ターンオーバーが速くなるのは、肌(皮膚)にとって危急存亡の時です。早く新しい肌を作って、何が何でも防御態勢(バリアー)を整えておかなければいけません。ということで、肌は細胞の誕生を速め、送り出しも速めます。粗い完成品でも仕方がないというわけです。
例えば皮膚が傷ついたり、炎症を起こした時がそうです。一つひとつの細胞に機能と美しさが備わる(成熟する)ことよりも、とにかく速くたくさん角質を送り出してガードを固めなければ……応急処置をしなければ……という防衛反応です。
このような場合、ターンオーバーが速くなることは、肌にとって当然の反応と言えます。しかし、この状態が続くことは、細胞が成熟する阻害要因であり、美しい肌にはなれません。
- ターンオーバーが遅いとダメ?
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よく言われる表現に、「ターンオーバーが遅くなっているのは、古い角質が肌に残っているから。取り除かないといけない」というのがあります。
これは明らかな間違いです。
サッポーの言葉で適切に言い直すと、ターンオーバーが遅いのではなく、速いため、未成熟な細胞が角質となっていることが原因です。
このような角質は、紫外線や乾燥ダメージを受けると、保湿能が低いのですぐに乾き、硬くなります。
さらに角質同士を繋ぐセラミド等の分解酵素が不足しているため、本来自然にハラハラと剥がれていく角質が、長く肌にとどまるようになります。肌がザラザラ・カサカサするのも、このように硬化した角質の塊が残っているからです。
ターンオーバー自体は速くなっているのですが、最後の段階、つまり角質層から垢としてはがれるのが遅くなっている……という現象です。これも未成熟な状態の肌を護る巧妙な仕組みです。
「加齢によって、ターンオーバーが遅くなる」ともよく聞きますが、通常のスキンケアをしていれば、それほど大きな影響を与えるものではありません。
- ターンオーバーの正常化を図るには
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ターンオーバーの速い・遅いの意味は理解できましたか?では、ターンオーバーを本来のペースにするには、どうしたらよいのでしょう。
「表皮細胞に十分育つ時間を与える」
これがどのような場合においても、正解となります。
そのためには、どんなに肌の見栄えが悪くても、あるがままに大切にすることです。
正しいクレンジングや洗顔を行い、保湿ケアをし、乾燥からの保護ケアを行う。そして必要に応じUVケアを忘れない……といったことです。
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具体的な内容は、長くなるのでここでは割愛します。こちらの講義を参考にしてください。
上のように、見栄えの悪い角質は取り除く、というケアもありますが、これは肌が悪循環に陥るパターンです。もちろんサッポーとは逆方向の対策です。角質が予定より早く剥がれると、ターンオーバーは必ず速まるからです。
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化粧品やスキンケアを選ぶ視点としては、
- 今日のきれいを重視したものか?
- 明日の美肌を目指したものか?
答えは決まっています。今日より明日の肌ですね。これから生まれる細胞がしっかり育つ環境を作ることが、美肌の原点です。
いかがでしたか?
ターンオーバーという言葉は、「知っていたつもり」の代表かもしれません。スキンケアを行うにあたって、重要な言葉なので、正しく理解しておきましょう。
- ターンオーバーは速くても遅くても、美肌にはなれない
- ターンオーバーの正常化は、角質層の保湿・保護が基本

編集後記
ターンオーバーという言葉はよく知られていますが、扱われ方によって大きな間違いが生じているようです。それらしく説明されると、疑うこともしません。
でも、この講義を読まれた皆さんは大丈夫ですね!ターンオーバーが本来の働きが出来るよう、スキンケアで肌を支えましょう。
「サッポー美肌塾」第144号
更新
角質を大事に……でも一体どうすれば?
講義はいかがでしたか?
毛穴、ニキビ、シミ、しわ、たるみ、肌のくすみ……さまざまな肌トラブルがあり、そして、これらに対処するため、専用化粧品が数多く用意されています。
しかし、ここまで講義を読まれた方はお気付きかもしれません。
こうしたトラブルへの見た目の対処、表面的な対処も大切だけど、その「根本」に目を向けなければ、いつまで経ってもトラブル解消にはならないだろう……と。
いつしか見栄えと表面的な対処だけが、私達のスキンケアになっています。
「根本」とは、健康に育った角質で肌が作られることに他なりません。つまりターンオーバーが正常に働く環境を作ることこそ、基礎となるスキンケアなのです。(サッポーでは「肌が育つケア」と呼んでいます。)
……と言っても、正常なターンオーバーと聞いて、ピンとくる人はいないでしょう。
ターンオーバーは肌表面0.2mm、ミクロの世界で行われていることです。目に見えないばかりか、イメージすることさえ難しいというのが実感です。
角質を大事するとは、実際のところ、どういうことなのか?
正常なターンオーバーの維持とは、一体どんな状態なのか?
その答えの一端は、「スキンケアモニター」で知ることができます。
踏み出してみましょう。
トラブル知らずの美しい肌が、あなたを待っています。
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