私達がきれいだとか、汚いだとか評価している肌とは、角質層(角層)のことです。
図のように、表皮は上から「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層で構成されています。
基底層で日々誕生する基底細胞が有棘細胞に、さらに顆粒細胞へと成長します。そして顆粒細胞の核が消失し、死細胞として完成したのが角質(角質細胞)というわけです。これらの細胞は、角質化するのが目的の細胞なので、総じて角化細胞(表皮細胞)と呼ばれます。
表皮の厚みはわずか0.2mmと薄いですが、ここに肌の潤いや美しさの秘密が詰まっています。今日はその秘密を構成する3つの要素を見ていきます。
乾燥から肌を護り、潤いをキープ
3つの要素とは、皮脂膜・細胞間脂質・NMFのことです。世間では3大保湿因子などとも呼ばれているようです。それぞれ解説していきます。
- 皮脂膜
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汗腺から分泌される汗と皮脂腺から分泌される皮脂が、肌上で膜となったもので、肌の水分蒸散をある程度防いでいます。適度に水分を弾き、適度にヌメリを作り、乾燥から保護している、まさに天然のクリームとも言えます。
しかし皮脂の分泌は、一日全身で1~2g程度。これだけでは現代の乾燥環境から護るには不十分です。
また皮脂は比較的水分となじみが良いため、濡れたり汗をたくさんかいたりすると、皮脂膜が水分を多く含んで流れてしまいます。
このようなことから皮脂膜にプラスして、乳液やクリームなどの油性化粧品で、乾燥からの護りや水分を弾く能力を強化する必要があります。
- 細胞間脂質
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煉瓦塀のセメントのように、角質と角質の間に存在し、角質同士を繋いでいます。脂質と水分が交互に何層にも積み重なった緻密で柔軟な構造で、ラメラ構造と呼ばれます。
このラメラ構造により、肌の水分蒸散を防ぐと同時に、外部からの水をはじめ、ウイルスや汚れなどの侵入を防いでいます。細胞間脂質に含まれる固形脂質の一つであり、中心となっているのが有名なセラミドです。
細胞間脂質は、角化細胞内で作られ、角質細胞になるときに細胞の外へ移動します。よって角質細胞は平べったく積み重なり、厚みわずか0.02mmの角質層となるのです。
細胞間脂質のラメラ構造は、洗浄剤や紫外線、摩擦や圧迫などの悪影響を受けると、崩れます。すると角質層も崩れやすくなります。
- NMF(天然保湿因子=ナチュラル・モイスチャライジング・ファクター)
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角質細胞内の水分とくっついて存在しています。角化細胞内で作られるのは、細胞間脂質と同じですが、NMFは角化した後も角質細胞内に留まります。
NMFは、水分を保持する能力の高いアミノ酸が中心となっています。このことによって、肌の柔軟さが維持されています。
つまり角化過程において、より多くのNMFが作られることが大事と言えます。
肌の潤いや美しさのために、私達ができること
皮脂膜・細胞間脂質・NMFが個々の役割を果たすことにより、肌の潤いは作られ、守られます。私達がすべきは、これら3つが適切に産生される環境作りです。
言い換えれば、角化過程において、より健康で柔軟で保湿力が高い、バリア能のある角質層に育つ環境です。
良い環境が整えば、良いターンオーバーが行われ、美しい肌が作られます。
セラミドやアミノ酸系の化粧品の使用は?
世間では、細胞間脂質とNMFに多く含まれるセラミドやアミノ酸を配合した化粧品で、それらが満たされるかのような表現が見られます。大きな誤解を生み、独り歩きしているようです。
化粧品は角質層表面にのっているだけです。セラミドがラメラ構造を持つ細胞間脂質に置き換わるはずもなく、アミノ酸成分をつけても角質細胞内のNMFに成り代わるわけではありません。
前述したように細胞間脂質やNMFは、角化細胞が角質として完成する前に作り出すものです。細胞レベルで行われることが、化粧品にできるわけがありません。
セラミドという脂質は乾燥保護成分、アミノ酸成分は保湿剤の一つとしての目的以外で考えると期待が外れます。
どんな成分や化粧品なら良いの?
肌を構成する要素と同じ成分だからと言って、化粧品として肌につけても同じように働くわけではありません。
化粧品成分や化粧品の役割はたった一つ、肌が肌を作るための環境を整えることです。角質を傷めない洗顔ケア、適切な保湿ケア、乾燥や紫外線から正しく護るケアこそが化粧品に求められるものです。
具体的な内容については、ここでは割愛します。当美肌塾に化粧品の選び方から、より良い角質として育つための環境作りのノウハウまでたくさんの講義があります。
サッポーが「古びて見える角質も大切にしましょう!」と言っているのは、角化細胞に育つ時間を十分に与え、少しでも立派な角質に育ってもらうためです。
サッポーの“肌が育つケア”は細胞レベルで肌を考えたケアなのです。
- 皮脂膜、細胞間脂質、NMFの存在が角質層を護る
- 一つ一つの細胞がよく育った肌には、潤いや美しさが生まれる
編集後記
3大保湿因子の2つである、細胞間脂質とNMFを増やすような表現の化粧品が販売されています。つい期待をしてしまいますが、実際はどんな成分であっても、直接肌のそれに置き換わるわけではないのですね。
肌が育てば、結果的に細胞間脂質とNMFがたくさん生産される肌になります。このような方向で頑張ってきましょう。
更新
角質を大事に……でも一体どうすれば?
講義はいかがでしたか?
毛穴、ニキビ、シミ、しわ、たるみ、肌のくすみ……さまざまな肌トラブルがあり、そして、これらに対処するため、専用化粧品が数多く用意されています。
しかし、ここまで講義を読まれた方はお気付きかもしれません。
こうしたトラブルへの見た目の対処、表面的な対処も大切だけど、その「根本」に目を向けなければ、いつまで経ってもトラブル解消にはならないだろう……と。
いつしか見栄えと表面的な対処だけが、私達のスキンケアになっています。
「根本」とは、健康に育った角質で肌が作られることに他なりません。つまりターンオーバーが正常に働く環境を作ることこそ、基礎となるスキンケアなのです。(サッポーでは「肌が育つケア」と呼んでいます。)
……と言っても、正常なターンオーバーと聞いて、ピンとくる人はいないでしょう。
ターンオーバーは肌表面0.2mm、ミクロの世界で行われていることです。目に見えないばかりか、イメージすることさえ難しいというのが実感です。
角質を大事するとは、実際のところ、どういうことなのか?
正常なターンオーバーの維持とは、一体どんな状態なのか?
その答えの一端は、「スキンケアモニター」で知ることができます。
踏み出してみましょう。
トラブル知らずの美しい肌が、あなたを待っています。