「素足が気になる…かかと部分がひび割れのように白っぽく…」
読者の皆様も、一度足の裏を見直しておきましょう。
白い筋が現れていたらもうかなり進行しています。
“なび”さんからいただいた相談です。
“なび”さんのご質問・相談
足のかかと部分は他の皮膚表面と異なり、硬く、時にはひびが入ったように白く浮き上がってみえることもあります。
入浴中、かかとがふやけたときにもみしごいてみると、かかとの乾燥した皮膚がはがれおちることがあります。日本人は昔から、この部分は軽石などでこすり手入れをしてきたようですが、サッポー流のお手入れ方法をご指南ください。
柔らかく美しいかかとの素足を目指す大切さ
サッポー流のお手入れ方法……。相談をいただき、早く公開しなくてはと思いました。
かかとだけでなく、足裏は多くの女性のちょっとした“悩み”を作っています。“なび”さんの場合、足裏のご様子からは、少し乾燥が進み水分が不足気味になっている…といった兆候の段階です。でも、油断は禁物、かかとの硬さが緩やかに進行中であるのは間違いありません。
かかとの状態が酷い方は、冬になると見るも痛々しげな本当のひび割れができたり、ひび割れができなくてもかかとの硬さから歩くときに違和感を感じる、さらには痛みを感じる人までいます。ここまでくると、もう深刻な悩みと言うべきです。
このような酷い状態はさすがに20代の女性には稀ですが、30代を過ぎる頃から増えてきます。さらに困ったことにたいていの場合、毎年のようにその状況が深刻化していく傾向があることです。これはもう、美肌塾読者の方々にはしっかり解説し、美しいかかと、美しい足裏になっていただきたく思います。
“なび”さんのご質問を種に、もう少し範囲を広げて講義してみようと思います。
まずは現状認識
- かかとに白っぽく見える部分が目立ってきた
- 次第にかかとの硬さが増し、気になってくる
- 歩く時にかかとの硬さを覚える、時に痛みを感じる
- 歩き出したときに強い痛みが走る、ひび割れが発生
角質の塊がごそごそと剥がれる落屑(皮むけ)が始まるのは、2の途中からです。もちろん3・4を通じて発生すると理解して下さい。かかとを対象に書きましたが、強い圧力がかかる足裏部位なら、いずれでも同じことが起こりうると考えて下さい。
もし、足裏のどこかが2~4になっていたら、これはもう本気で取り組まないと、年を経る毎に着実に進行していきます。するともう、「これが私のかかとなの……」と、まるでもう治らない体質であるかのように思い込んで、生涯を硬くひび割れやすい足裏で過ごす人も多いのです。
でも、そんなことはありません。ちゃんとよくなります。
顔の肌を柔らかく生き生きした肌にするのと対処の原理は同じですが、回復させる対処方法はずいぶん違ってきます。
ただ、“なび”さんのように1の段階で気づくことが大切です。1~2ヵ月ですっかりよくなります。でも、2→3→4と進行すればするほど、回復には時間がかかるようになります。
足裏は毎日私達の全体重を支えてくれています。健康な足裏を保証してあげて、働いて貰いましょう。でないと、足裏が可哀相です。
足の裏、特にかかとが硬くなる。どうしてひび割れが?
どうして足のかかと部分は硬くなるのでしょう。対策を解説する前に、硬くなる原因と経緯を押さえておきましょう。
顔の肌は角質層が部位により、7~8層から14~15層程度の極めて薄い層(0.02mm)なのですが、足の裏、特にかかとや指の付け根部分は50~100層の厚さになっています。厚いかかとでは150層程度にも、異常な場合は200層にも達する場合があります。これは顔の肌と大きく異なる点です。
もう一つ大きな違いがあります。足裏には皮脂腺が無いのです。従って皮脂が分泌されません。但し角質由来の脂質(セラミド等)は顔の肌同様に存在します。しかし、これだけ厚みある角層を守るのに皮脂腺が無いのは厳しいところです。その代わりといってはなんですが、汗腺は特に多くなっています。この厚い角質層を潤し護るのは、汗腺の汗と角質由来の脂質だけに頼っています。
顔との違いを言えば、メラニンを作るメラノサイトがないことも挙げられます。日焼けしようにも日焼けできないため、紫外線ダメージを受けやすく硬くなりやすい部分です。でも、紫外線を浴びることはまずないのでこれは除外しても良いでしょう。
かかとや足指の付け根部位の特徴
- かかとの角質層は50~100層もある
- 皮脂腺がなく皮脂が分泌されない
- 汗腺は多く、汗も多い
- メラニンが作られない
なるほどですね。硬くなる理由が少し見えてきました。
顔の肌も乾燥して荒れると、角質がガサガサと硬さを感じさせます。でも足裏の硬さはそんなものではありません。同じことが起きているのですが、スケールが大きいのです。わずか10層前後の顔の角質層に比べ、100層も150層もある足裏の場合は、まるで硬さも与える影響も違ってくるのです。
乾燥した角質が異常に硬くなり、そのことが悲劇を生む原因になっています。全体重を支えるかかとや足指の付け根は常に大きな力が加わっています。乾燥して水分を失い、硬く柔軟性を失ったかかとに、大きな力が加わると、時にひび割れが生じるのは不思議ではありません。
硬くなった厚い角質層部分だけがひび割れるなら、顔の肌荒れと同じ現象で済みます。ひび割れが悲劇になるのは、まだいくぶん柔らかさを持つ下層の角質、そしてその下層の生きた表皮部分、さらに下層の真皮層部分、そして皮下組織までをも道連れにひび割れが波及するからです。
これが、厚くなり硬くなった角質層を放置する怖さです。
- 角質は爪と同じ材質のケラチン質で、乾燥すると乾いた爪のように硬くなる
- 角質層が厚いため、硬くなるスケールが大きい
- 硬くなった状態で強い力が加わると壊れやすい
- 壊れ方もスケールが大きく、真皮層下まで達する
赤ちゃんの足裏のように…は叶いませんが、いつまでも柔らかさを確保していたいものです。足裏の皮膚が柔らかいのは若さと元気の証です。
硬くなってトラブルになる原因と経緯はわかりましたが、どうすればいいのでしょうか?
硬くなったかかと対策、ひび割れたかかとの改善
とりあえずの緊急対策と、根本的な対策との併用が基本です。
とりあえずの緊急対策
- 厚くなった部位を削り、薄くすることによって、とりあえずの柔らかさを作る
硬く厚くなったかかとを放置していると、痛みを伴ったり、時にひび割れを起こす危険があるので好ましくありません。歩くだけでもひび割れすることがあるのですから……。これらを削り、薄くすることによって、とりあえずの柔らかさを確保することは、やはり最低限必要なことと言えます。
まず直接的でわかりやすいツールを案内します。
- 1.軽石で硬くなったかかとの角質を削り、滑らかにする
-
軽石とは火山砕屑物の一種で多孔質ガラス質の岩石です。たくさんの穴を内包し空気を多く含むため軽く、水に浮く不思議な石です。爪で傷付けることができるくらいの柔らかさ・もろさがあり、かかと削りに古くから用いられました。最近ではこれらの軽石類を粉砕し、固めなおした人口軽石が多く市販されています。
- 2.様々な“かかとやすり”グッズを利用し、角質を削る
-
- ダイヤモンドダストを吹き付けたやすり
- ステンレス製のやすり
- 麦飯石製のやすり
- 電動やすり
- etc…
1、2のいずれでも良いのですが、方法はお風呂等で角質にある程度水分を含ませ、柔らかくしてから削る方法と、乾いた硬い状態を削る方法があります。サッポーとしては柔らかくしておいて削る方が、削られるべき部分が自然に無理なく削られるのでお勧めです。しかし、硬いままに削った方がよい場合もあります。既にひび割れを起こし、下手をすると炎症を起こす可能性が高い場合です。
- 3.次第に削る頻度を減らし、ひび割れリスクがなくなれば中止する
-
次項で解説する根本的な対策と併用することが条件です。次第に硬さが軽減していきます。最初は週に一度くらいの頻度で、少し柔らかくなれば、2週間に一度に、さらに柔らかくなれば月に一度というように削る頻度を徐々に減らしていきます。ひび割れリスクの心配がなくなれば、かかと削りは中止します。それでも続けていたら、一定以上によくなりません。足裏も顔の肌同様、肌の育ちが止まってしまえば改善しないのです。
とりあえずの緊急対策であり、常用すべきケアではないことを押さえておきましょう。
根本的な対策
- 削ったかかとを保湿し、保護する
ここからは、荒れてガサガサした顔の肌と同じ考え方です。角質を削り取り、薄くなった柔らかさは本当の柔らかさではありません。角質自体が柔らかくなったのではなく、薄くなって壊れにくくなっただけなのです。ひび割れの危険性は少なくなっただけで、脆い肌質は依然として残っています。
乾燥して硬くならないように、お風呂上がりに化粧水を厚い角質層に浸透させ、さらに乳液あるいはクリームで保護します。翌朝は軽く足を洗ってから、また同じように保湿と保護のケアをします。硬さがさほどでもない場合はこのようなケアを続けるだけでよいでしょう。
しかし、硬さと硬い層の厚みが尋常ではない場合、この程度のケアでは改善は遅々として進みません。さらなる乾燥させない対策が必要です。
保湿・保護のケアを施したかかと部分を覆うように、台所用のラップフィルムを張り付けます。
靴下等を利用してずれないように工夫します。このようにして毎日を過ごすようにします。十分に柔らかくなったら、保湿と保護のケアだけを続けるようにします。
ここで留意事項をチェックしておきましょう。
- 正常なかかとの角質層でも50~100層もあり、ターンオーバーが一巡するのに2~3ヶ月かかる
-
ターンオーバーの過程を、よく育った表皮が角質になる循環に維持してあげれば、硬化しないよく育った角質に入れ替わっていくのですが、とにかくターンオーバーのサイクルが長いのです。顔の10倍の層があるから280日かかるのかというと、そこまで長くはなく、2ヶ月から3ヶ月、つまり2~3倍の期間をかけてやっと角質層全体が入れ替わっています。硬くなってしまった角質層には200層に達するものもありますから、かかとを柔らかくしようと思ったら、とにかく気長にとり組んでいくことが必要になります。
- かかとは過酷な環境におかれていることを忘れない
-
スニーカーや男性の革靴のように密閉度の高い靴を履く人はまだ救われます。しかし、風通しの良い履き物、あるいは靴下だけとか、あるいはまた素足で過ごすことの多いかかとは、乾燥や冷たさから案外無防備な状態で放置されていることが多いのです。これでは表皮細胞が育たず、未熟な角質として送り出されます。
この二点を考えると、一度硬くなってしまった角質層というのは、硬い角質層部分が数十層に及んでいるわけで、この部分を保湿し保護するということはかなり難しいことがわかります。ラップフィルムを張り付けるような極端さも必要になるわけです。かかと用保湿パックをし続けるというわけです。
次に注意すべきは、表面だけの柔らかさを信じ、すっかり良くなったと思ったとしたら、それは甘いというものです。実際見た目はすっかりよくなるので騙されないようにしましょう。十分にかかとの柔らかさを感じてから、なお1~2ヶ月は保湿・保護のケアを続けないと、厚い層全体としては立ち直れていない場合が多いからです。
柔らかいかかとを維持するには
一度良いターンオーバーの循環にはいると、良く育った角質は柔らかいままに、自ら剥がれていく力を備えるようになります。入浴時にごしごし洗わなくても角質は剥がれていき、適切な管理がされていたら、厚くなることも硬くなることもありません。
普段の生活における注意事項が見えてくると、なぜ厚く硬くなったかが解ります。顔の肌と同じで角質が未熟化したからです。育たない角質を急いで送り出し、剥がれ落ちる能力を低下させてでも厚くなって身体を(かかとを)守ろうとしたからです。
このような循環にならないようにするにはどうしたらよいか、主だったところをピックアップしてみました。細かいところは自分の生活に合わせて考えてください。
- 1.顔の肌と同じように、保湿・保護の環境を考える
-
注意すべきは顔とはまた異なった環境であることです。個人の生活スタイルの違いも大きいと思われます。
いざとなれば、乳液やクリームで保護したり、上の段で説明したような直接ケア(保湿パック)で環境を補強することになりますが、足の場合の環境作りは、顔より容易なはずです。靴下などを使用することができるし、顔ほど見た目を気にしなくて済むからです。 - 2.洗浄も顔と同じように優しい洗浄でよい
-
改善時は激しいピーリング(軽石ややすりで角質を削る)ケアで、改善のきっかけを作りましたが、良い状態を維持していくためにはこのような角質を積極的に落とそうとするケアは、(正常な顔の肌と同じで)逆効果になります。毎日きちんと優しく洗浄するだけ、が最上の方法です。
- 3.足裏全体で体重を支える癖を身につける
-
歩いている時はあまり関係ないのですが、じっとしている時はかかとに重心が移っています。かかとだけ血の巡りが悪い状態になっています。あくまで傾向としてですが、靴のかかとは少し高めの方がかかとだけに重心がかからない良さがあります。あなたなりに意識して工夫しましょう。
- 4.柔らかい底地の、足裏に優しくフィットする靴を選ぶ
-
足裏には体重以上の圧迫が加わります。この圧迫がいびつだとすごい圧迫となり、未熟で硬い角質を作る原因になります。健康サンダルのように、わざわざ強い圧迫を部分的に作り出す履き物もありますが、常時その様なものを穿くのは少なくとも足裏だけを考えると、不健康を作ります。その他にも、合わない靴、底の硬い履き物の常用は全てマイナス要素です。
ちょっと長いアドバイスになってしまいましたが、“なび”さんにはあまり関係のないところまで、範囲を広げてしまいました。今まで扱っていない良いテーマでしたので、これは美肌塾のテーマだなと考えたわけです。悪しからず、ご了承下さいませ。
良いテーマをありがとうございました。今日の講義はこれまでとします。
- かかとの特徴と、2つの対処法を知る
- 美しいかかとは若さの証、維持する環境を整える
「サッポー美肌塾」第226号
更新