一昔前に、デトックスという言葉が流行りました。最近では、血液クレンジングなんてものが話題になるくらいですから、私達は身体から悪いものを排泄するとか、浄化すると言った言葉に魅力を感じるようです。
世間では、体内の老廃物を排出することをデトックスと呼んでいますが、本来の意味はそうではありません。
元々は医学用語であり、薬物中毒、薬物依存症などの患者が解毒剤を利用し、体内から薬物の影響をなくす治療法のことです。いわゆる「解毒」です。身体最大の化学処理工場である肝臓や排泄器官である腎臓への働きかけです。
これらの働きを利用して「体内の老廃物をデトックス」するといったプラスイメージの言葉が生まれたのでしょう。様々な健康法や美容法に使われています。
ネガティブイメージキャンペーンの反対、言わば『ポジティブイメージキャンペーン(商法)』とでも呼ぶべきなのかもしれません。
少々余談っぽくなりましたが、余談で済まない誤解を生んでいたら、これは捨て置けません。今回は、このデトックスと肌について、解説したいと思います。
最も身近なデトックスのイメージは、汗!
健康や美容と切っても切れない関係にある汗ですが、たくさんかくことによって、汗と一緒に老廃物を出してくれる……というイメージはありませんか?
しかし、サッポーがいつも言っているように、汗は99.9%以上は純粋な水です。また残る0.0…%のほとんどはミネラルです。もちろん中には、極々少量の他の不純物(老廃物)が含まれる可能性は否定できませんが……。
このように排泄される汗をデトックスのイメージに結びつけたのが、サウナや岩盤浴、ホットヨガなどでしょう。
サッポーは、決してこれらを否定しているわけではありません。でも、デトックスと主張するのは、オーバーな表現で誤解を生んでいるように思います。
汗をかくことは、精神的なリフレッシュにもなり、また何といっても、身体に欠かせない重要な機能を担っています。
皮膚には汗腺が備わっており、汗の排泄量によって上昇する体温を調整し、同時に肌表層を潤しています。こうして私達の生命は守られています。
身体になくてはならない汗、でもデトックスとは切り離して考えましょう。
次は、デトックスを用いた美容法について見ていきます。
デトックスで美肌になる?
デトックスの良いイメージは、美容法にも利用されています。世間で使われているものをいくつかピックアップし、サッポーの見解をまとめてみました。
ピーリングでデトックス!?
- 毛穴の汚れや角栓、古い角質を肌に残しておくと、ニキビやくすみの原因に!さらに、化粧品のなじみも悪くなるため、角質をピーリングして、リセット&デトックス!
サッポーの見解
ピーリングをすると、肌表層でバリアーとして働いてる角質が取り除かれます。
すると肌は慌てて、角質を補填しようとします。でも、それは育つ時間が十分与えられていない間に合わせの角質です。
これらは未成熟なために、水分保持力が低く、すぐに乾いて縮み、硬くなります。つまり、古くはないのに、古びた角質に見えてしまうのです。
毛穴部分の角質が硬くなると、上手に皮脂が排出できず、皮脂が溜まり、ニキビが出来やすくなります。
また角質の水分保持量が少なければ、透明度が低下し、肌がくすんできます。
実は、肌上ではこのような危機が起こっています。でも、ピーリング直後はキレイに見えるので、なかなか気が付きません。
こうして、肌トラブルが起きたら「またピーリングでデトックスすればよい!」などと思っていると、悪循環に陥り、取り返しのつかない肌になってしまいます。
角質は剥がすのではなく、剥がれないように守ってあげないといけません。しっかり保湿し、乾燥や紫外線からの保護をして、細胞がしっかりした角質に育つように時間を与えてあげることが大切です。
美白化粧品でデトックス!?
- 蓄積されたメラニンがシミを作っている!だからメラニンを美白化粧品で排出し、デトックス!
サッポーの見解
美白化粧品に含まれる美白剤の役割とは、メラニンを無色化(漂白)したり、メラノサイトのメラニン生産活動を阻害することです。メラニンを排出しているわけではありません。
美白化粧品を使い続けると、シミは薄くなったように見えます。しかし、美白剤を肌内部のメラニンやメラノサイトに届けるには、角質層(バリアー)を通過させないといけません。これはとてもリスキーです。
美白剤は肌にとって異物に違いなく、肌が炎症(接触性皮膚炎)を起こす場合があります。
炎症にメラノサイトが危険を感じれば、メラニンをたくさん放出して、シミが濃くなったり、新たなシミが作られます。逆にメラノサイトが壊れ、色が抜けた白斑を作ることもあります。
この炎症が軽微だと気づかない人も多く、美白化粧品を使い続けることになります。これがシミや白斑の原因です。
本当の意味でシミを薄くしたり、消すのは、肌にしかできません。安心できる環境が維持され、メラニンをもう量産しなくていい!とメラノサイト自身が思うことが必要なのです。
美白剤は、メラノサイトを脅かす異物以外の何者でもありません。デトックスとは真逆ですね。
マッサージでデトックス!?
- リンパに老廃物が溜まるとむくみの原因に!たるみやほうれい線がスッキリするマッサージで老廃物をデトックス!
サッポーの見解
全身を巡る血管に沿うようにリンパ管やリンパ節があり、その中をリンパ液がゆっくりと流れています。
リンパ液はタンパク質や脂肪の運搬以外に、老廃物を回収する働きも持っています。そのため、この流れが悪いと滞留するのは本当です。
リンパ液の流れに沿ってマッサージを行えば、滞留していたリンパ液が流れ、他の場所に移動します。その部位は、リンパ液の体積が減るので、顔の形が変化したように見えます。
でも、それは一時的なもの。やがて新しいリンパ液が流れ込み、元通りになります。
以前、リンパマッサージなるものが流行りました。結構強い力で押すマッサージもあり、その後でサッポーにしわやたるみの相談が殺到したのを覚えています。
これは、肌を押したり、擦ったりすることで、皮膚の筋肉(表情筋)やその腱膜の断裂を起こしてしまった結果です。肌を支えている筋肉や腱膜は柔らかいので、簡単に切れます。それが、しわやたるみとして現れたのです。
また、わずか0.2mmの表皮層の直下にある毛細血管も傷めることになるので、毛細血管が広がり、肌の赤みが戻らなくなるケースもありました。
マッサージは、肌滑りの良い柔らかなクリーム等の潤滑油を使って、触れるか触れないかの強さで行うくらいが丁度良いのです。日々の洗顔や化粧品をつける行為だけでも十分肌は満足している、ということです。
いかがでしたか?
世間で言われるデトックス美容法、実際は裏目に出る方が多そうです。本当にデトックスをしたいなら、運動や食事に気をつけて、健康な身体を作り、肌が育つ環境を整えて、よく育った肌にすることです。
健康な身体は老廃物が適切に処理され、自然に排泄されるようになっています。よく育った肌は、角質が然るべきタイミングで剥がれていきます。スキンケア等で肌環境が適切に保たれていたら、シミやたるみもできません。
善人の顔をした『ポジティブイメージ商法』には『ネガティブイメージ商法』以上に注意が必要かもしれません。
- デトックスは本来「解毒」を指す医学用語
- デトックスのイメージを利用した美容法には注意
編集後記
デトックスという言葉の響きから良いイメージを連想しがちですが、本来の意味とスキケアに結びつけると……ちょっと疑問が出てきます。
デトックスよりも“肌が育つケア”がもっと多くの方に浸透すれば、みんな美肌になれるのになぁ~(^_^)
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