肌がベタベタ・テカテカする、いわゆるテカリと呼ばれる現象があり、男女を問わず大きなストレスになっているようです。
このようなテカリに悩む肌の方にタイトルのように言ったら「えっ?皮脂じゃないの!」と驚く人が多いと想像します。
そして、皮脂が原因だと思い込んでケアを構築していくと、逆にテカる肌を促進するケアになりやすいという事実があります。
最初に結論を言いますと、皮脂はテカる原因の一つではありますが、さらにテカらせている主役は、実は汗の存在です。
しかし、さらに詳細に言えば、皮脂も汗も肌をテカらせている原因ではなく、要素・要因に過ぎないのです。
それなら、肌がテカるようになった原因とは何でしょう。
そもそもの原因は「肌のバリア能力が低下」したことにあります。バリア能が低下すれば、それを補うために、皮脂や汗の量が増えるのです。
肌は適切な反応として、皮脂や汗を増やしているのに、テカリ対策の多くは、皮脂や汗を無理矢理、減らそうとしているように見受けられます。つまり、肌の機能を邪魔するケアになっているのです。これでは上手く行かないばかりか、肌はますます頑張ってテカリを促進することになります。
従って、真の対策は、バリア能を復活させることです。肌を構成している一つひとつの細胞が、本来の姿に戻れば、バリアーとして十分な能力が備わるようになります。
今回の講義は、このような視点で理解を深めて頂くよう、解説してまいります。
テカリの要因である皮脂と汗をしっかり理解する
肌そのものが身体を守るバリアーとして働いていることは、自然に理解されていることでしょう。その肌が柔軟さを失わず、様々な環境に対応できるためになくてはならない働きをしているのが、皮脂と汗です。このような皮脂と汗について、もう一歩踏み込んで理解しておきましょう。
皮脂の存在
皮脂は蝋(ろう)様の脂と、スクアレン、そして中性脂肪が混在する脂質状の油脂です。毛包内にある皮脂腺で作られ、皮表に分泌される過程で常在菌に分解され、液状の脂肪酸となります。この皮脂が肌を覆うことにより、肌の水分が失われにくくなって、乾燥から守ってくれます。もし、皮脂の存在がなければ、肌は乾き、カサカサになってひび割れ、すぐに壊れてしまうでしょう。
このように大切な役割を果たす皮脂ですが、その分泌量は驚く程少なく、一日に全身で分泌される皮脂の量はわずか1~2g程度しかありません。
皮脂の分泌量を調整しているのは主に性ホルモンで、男性ならテストステロン、女性ならアンドロゲン、俗に男性ホルモンと呼ばれるものです。季節によっても気温の高い夏季に増加傾向が認められます。皮脂の分泌量はこのような影響下にありますが、いろいろな要因が重なって増えたとしても、せいぜい一日で全身、2~4g程度が限界の分泌量です。
全身で一日かけても、ティースプーン一杯に満たない皮脂分泌なのに、「皮脂が多すぎる!」と嘆くのは、肌を守るために必死で働いている皮脂腺に失礼な態度と言えるでしょう。皮膚のバリアーを弱めてしまった非は自分にあるというのに……。
汗の存在
肌にとって、汗は必須の存在です。天然の化粧水とも言えます。しなやかでタフな柔軟性を備えた肌は、汗なくして考えることができない程、重要な存在です。
最表層の角質は乾くと硬くなるケラチン(タンパク質の一つ)でできています。爪もケラチンですが、乾くとやはり硬くなります。爪の様に厚くない角質の場合、乾いて硬くなるとすぐに壊れ始めます。粉を吹いたり、カサカサ・ガサガサするのは、その始まりなのです。
汗の中でも、「不感蒸泄の汗」といって、寒いときでも、暑いときでも絶えず分泌されている微量の汗があります。もし、このように肌を潤し続けている汗がなければ、肌はたとえ皮脂で守られていても、万全ではないので、日にちを置かず干からびてしまいます。微量の皮脂と、絶えない微量の汗によって支えられているのが、私達の肌です。
一方、汗には「体温調整の汗」があります。普段、汗をかいた、と実感している汗はこちらです。同じ汗腺から分泌されるのですが、体温調節の汗は格段に量が多くなる時と、極端に少なくなる時があるのは、ご存じの通りです。やはり、この汗もなくてはならない存在なのです。
このような不感蒸泄の汗、体温調節の汗を含めた一日の発汗量は、普通に生活する状態で、汗を掻かない冬でも、1000~1500cc程度の発汗量が普通です。ちょっと汗ばむことが多いと、2000ccを軽く超え、激しいスポーツや労働があると、数リットルの汗を掻いていることになります。
これが、テカリの要因となる皮脂と汗の本当の姿です。いずれも大切な存在なのです。
では、テカる肌については、どのように考え、どのように対処していけばいいのでしょうか。
肌になくてはならない皮脂と汗……なのに、テカるのはどうして?
そもそも、皮脂や汗で、なぜ肌がテカるのでしょうか。
汗だけなら、大汗をかいても乾くとテカりません。
しかし、肌上にわずかな皮脂があり、本来混じり合うことのない汗が混じると……途端に乾きにくくなるのです。本来ならすぐに乾いてなくなるはずの汗がより長く肌に留まる状態が作られるのです。
つまり、こと肌に留まった汗がテカリを見せているのです。汗だけなら、すぐに流れたり蒸発するのですが、皮脂が常に混じり合うことで、乳濁液の状態を作り、肌に留まりテカリを演出しているのです。
この時、指で肌を触ると、汗よりも皮脂のぬめりを感じてしまいます。そのために、テカリは皮脂が原因だと思い込む人が多いのです。皮脂が汗の様に1000ccも出ている錯覚に陥るのでしょう。それで皮脂を取り除くことに一生懸命になったり、皮脂が減少する様なその場しのぎ対策に終始することになります。
他人の目を意識したり、ヌルヌルした感触……これらが実際の見かけ以上に「イヤだ!」「何とかしたい!」と思わせ、間違ったケアに走らせるのでしょう。
このような気持ちや感覚は痛い程わかりますが、皮脂や汗の安定は、冒頭のようにバリア能力が高まらないと最終的な解決には至りません。脂取り紙等で軽く優しく汗を吸い取る程度をその場対策とし、根本的なテカリ解消は、時間がかかるのだと覚悟を決めましょう。これこそが着実な方法です。
では、その方法とは?
まず、バリアー能の高い肌とは、一つひとつの細胞がよく育った肌のことです。
でも、すぐにゴールは見えてきません。長期的な視点で肌を育てていくことにあります。1ヵ月や2ヵ月では、途上ですから、成果は見えないのが普通です。3~4ヵ月でそこそこの成果を実感できる肌もあるでしょうが、たいていは、半年ぐらいかけてようやくテカらなくなったのを実感できるのが平均的なパターンでしょう。
肌に過剰な敏感さが現れている場合、もっと長期のまなざしで肌を見守る必要があります。炎症性の赤みや。炎症トラブルから脱出することが先に求められるからです。一年くらいかけて、肌改善を行う……といった覚悟が必要です。
具体的なスキンケアの方法に関しては、サッポー美肌塾講義を読み漁ってみましょう。肌状態から季節のケアから、ヒントと答えは600を越える講義の中にあります。
このように大きな視点で、テカる肌との決別という大まかなストーリーをしっかりと描いてみましょう。そして、そのストーリーから外れないことです。
テカリに長年悩み続ける人が多いのは、長い道のりなので、寄り道をして進路を誤ったり、枝道に逸れて道に迷ってしまうことが多いからです。
いかがでしたか?
「どうして私の肌のテカリは良くならないの?」といったモヤモヤが晴れましたら幸いです。
世間では、その場対策ばかりが宣伝されています。例え、その時良くなっても、回り道のことが多いので、嵌まらない様に注意して下さい。
- テカリは、大量の汗に、微量の皮脂が混じることで生じている
- テカリに対するその場ケアに惑わされると遠回りをしてしまう
編集後記
一日の皮脂量が全身で、ティースプーン1杯以下……といわれても、テカリに悩む方には信じられないかもしれません。
でも、水の中にサラダ油を一滴落とすと、ヌルヌルになるように、肌でも同じことが起こっているのですね。
「サッポー美肌塾」第637号
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