今回は、電話で頂いた相談を元に講義を勧めていきます。
“E.S”さんは、皮膚科でピーリング治療を始められたようなのですが……。
“E.S”さんのご相談
- 年齢:21歳
- 中学生の頃から始まったニキビに悩んでいる
- ニキビ痕もある
- 乾燥するのにニキビが出る
- ニキビ改善のため、医師によるピーリング治療
- 2回の治療を経て、随分良くなっていた
- 3回目の治療後、赤みが目立ち、ガサガサしてきた目の周りまで赤くなって、とても心配
- 明日は医師に診て貰うことにしている
このようなご相談でした。
“E.S”さんの肌にどのようなことが起こっているのでしょうか?
まず最初に、赤くなったり、敏感になったりするのは、ピーリング治療ではよくある現象です。スキンケアで改善するのに比べると、ダイナミックで荒療治な方法なのですから、弊害が表面化しやすいのは、ある程度しかたないところかもしれません。
これが医師によるものでなければ、大きなトラブルに発展していく可能性が大いにあります。でも“E.S”さんの場合は、慌てないで医師に従いましょう。
ピーリング後の肌はとても過敏でバリアー(防御能)の弱い状態になっています。様々なダメージに対し、過剰に反応しやすい状態で、肌の護りに徹すべき時でもあります。
ピーリング後の肌は、例えば、少し冷たい乾いた風に当たるだけでも、その影響は大きなダメージとして肌に伝わります。
肌の角層は乾きやすい状態なのでガサガサになり、乾燥と冷たさは真皮層に過敏に伝わり、毛細血管を刺激し充血を起こすと赤くなります。まさに悪循環に陥りやすい状態なのです。
ピーリング治療後の対処法
ピーリングによるニキビ治療を荒療治と言ったのは、ニキビのできない肌作りとは逆の、大胆な改善法だからです。
ピーリング治療では、角質を人為的に剥がしますから、肌は必死になって新しい細胞を生み、早く角化させようとします。表皮細胞の誕生から、成長し、角化して剥がれるまで、標準は40~50日位かけて行われる(ターンオーバー)べきところ、1週間で全て行うようなもの凄さです。
すると、肌がどんどん入れ替わります。これは、皮脂詰まりを起こしやすい肌にとっては、肌構造を再構築し直すチャンスとなります。ピーリングがニキビ肌改善治療になる所以です。
ところが、ピーリングによって短期間に作られた表皮及び角質の層は、急いで作られたものだから、痩せていて能力の低く、弱い細胞達の集まりです。事後の保護ケアがまずいと(あるいは肌環境が良くなかったりすると)、一気にガサガサしたり、硬くなり、より一層ひどいニキビ肌、あるいは赤みなどの過敏なトラブル肌になる危険性をはらんでいます。
このような状況に陥ると、“E.S”さんのように心配になりますね。
でも、“E.S”さんに“慌てないで”と申し上げたのは、ピーリングにおいても大切なのは、治療そのものよりも、その後のケアだからです。
一時的にとても嬉しい早さで改善されたかに見えても、それはきっかけができただけ、実はまだニキビ解消の着地点には到達してないのです。
本当のケアはここからなのです。日常の肌管理が不適切だと、また逆戻りするのは、肌が根本からは変わっていないからです。
“E.S”さんにおかれてはぜひ、医師の治療を受けながら、日常における本格的なスキンケアを身につけて頂きたいと思います。
エステにおけるピーリング
医療機関でなく、エステサロンなどでもピーリングは行われています。医療機関のような高能力の荒療治ではないので、効果も危険も少ないのですが、次のようなリスクがあります。
傷んだ角質を取り除くので、その場はきれいに見えます。でも、2・3日もすると、確実に以前より劣化している肌を見ることになります。それならもう一度!ということで、利用頻度が多くなったり、常用する人が多いようです。
いくら効果や危険が少なくても、繰り返すと肌はどんどん劣化していくので、炎症等のリスクも増えます。このようなとき、エステでは医療的な対処ができません。
肌を健康にするという本来のケア目的がどこかへ消えてしまい、“角質をはがして、肌をきれいに見せること”が目的と思い込んだことが、悲劇を生んでいるようです。
このようなことなので、炎症が起きることまで考慮すると、医師の適切な判断、薬の処方をして貰いながら、行うピーリングの方が幾分かリスクは少なく済みます。(皮膚科に頻繁に通うことが条件ですが)
ニキビ肌から美肌へは、スキンケアだけでも可能です
ピーリングが短期的な治療だとすれば、サッポーの提唱する“肌が育つケア”はスキンケアによる長期的な方法だといえます。
でも、最終の着地点は同じ、ニキビの出来ない肌、であることには変わりありません。違うのは、ピーリングはリスクが大きいのに比べ、サッポーの場合は、リスクがないと言うことです。
サッポーのニキビ肌改善法は、表皮がゆっくりと、しっかりと、充分に育つ余裕を与え、その表皮が角質になることです。
時間をかけて作られた角質は、水分たっぷりで柔らかいので、皮脂がいくら出ても詰まるようなことはありません。スムーズに排泄されていくのです。そのためには、角質を不用意に剥がさないことが大事です。ピーリングとは逆ですね。
具体的な方法は、肌状態によっても違うので一概には言えません。敢えて言うなら、肌状態に合わせた適切なスキンケア方法と、スキンケアの知識、そして角質を大切にする化粧品があれば、あとは肌が育つのを気長に待つだけで、肌は変わります。
トラブルや肌状態に合わせて、当美肌塾を読み漁ってみましょう。答えはきっと見つかります。
肌はいつも美しく健康になろうとしているのです。見映えが悪い角質を取り除くのは、手っ取り早く肌を美しく見せるかもしれませんが、美肌作りではありません。肌の努力を、水泡に帰している行為なのです。
ターンオーバーの仕組みを知っておこう
上でも触れましたが、ターンオーバーとは、表皮細胞が誕生してから、角質としての役目を終えて剥がれて行くまでの期間のことです。
表皮の基底層で誕生した細胞が育ち、結果として美しい角質に変化し、肌として身体を守ることになります。そして、やがて垢として剥がれて行く。
この表皮細胞の生まれ変わりというか、入れ替わりのことをターンオーバー※といいます。
- 生まれる準備期間…約14日間
- 表皮として育つ期間…約14日間
- 角質として働く期間…約14日間
※表皮細胞誕生後、約28日のことをターンオーバーと呼ぶ場合もあります。
乾燥肌もニキビ肌もこのターンオーバーのサイクルが上手くいかず、よく育たないまま細胞が角化し、角質となっているために起きているものです。
水分量が少ないため、直ぐに硬くなり、痩せていて柔軟性もないので、カサカサしやすいのです。皮脂が多い部分ではカサカサにこそなりませんが、毛穴が目立つようになります。
このような未熟な角質で肌の表層が作られているのですから、
- 乾燥した肌状態になりやすい
- 毛穴が硬いので皮脂が詰まりやすい
- ニキビが出来やすい
のです。
悩みが乾燥や毛穴だけならピーリングなどしないで、適切なケアを続けていれば、危険を冒さなくとも改善ができます。しかし、ニキビによる炎症で肌を傷め始めると、悪循環に陥りやすく、敏感で弱々しい肌になっています。
しっかりしたケアの指針を持ち、取り組んでいかないと悪循環からなかなか脱出できない……というのが、ニキビと長くつきあっている肌の典型です。
肌のターンオーバーが正常に行われる状態が繰り返されると、乾燥肌や毛穴だけでなく、ニキビ肌も必ずよくなります。
いかがでしたか?
肌はいつも健康で美しい姿になろうと努力しています。スキンケアはいつも原点を大切にチェックしていきましょう。
“E.S”さん、よいテーマをありがとうございました。
- ピーリングケアでニキビ肌が良くなる場合もあるが、リスクも高い
- 適切なスキンケアが出来れば、リスクなしに肌が健康で美しくなる
編集後記
サッポーではピーリングを否定しませんが、されるならE.Sさんのように医師監修の元でされることを推奨します。いつ炎症を起こしても、素早く対処出来るようにですね。
でも本当は“肌が育つケア”でじっくり確実に、ニキビ肌を卒業して欲しいです。
「サッポー美肌塾」第153号
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