しわやたるみに良いと、一昔前に顔のリンパマッサージが流行りました。今も時々見聞きします。施術を行っているサロンやエステもあり、実際には自己流でしている人も多いようです。
ただ一歩間違えると、大きなダメージにつながることが予想されるので、一度美肌塾でリンパについて取り上げないと!と思っていました。
今回は、肌とリンパの関係について、基本的なことを解説していきます。
リンパ管・リンパ節を流れるリンパ液
心臓は全身に血液を送るポンプの役割をしており、その血液を運ぶのが動脈、それを回収するのが静脈です。これらを血液の循環器系(血液系)といいます。
血液系に伴走するように、もう一つの循環器系があります。それがリンパの循環器系(リンパ系)です。
リンパ系には血管の代わりにリンパ管があります。そして、リンパ管とリンパ管をつなぐリンパ節があり、ここを無色透明のリンパ液が流れています。
このリンパ系には心臓のようなポンプはありませんが、リンパ液は身体の動きで圧迫されたり緩んだりする影響を受けて流れていきます。
ポンプがない代わりに、リンパ管には弁がついており、リンパ液が逆流せず一定方向に流れるようになっています。
リンパ液は、最終的に左右の鎖骨の奥にある静脈角で静脈に合流し、血液系に戻されます。
身体に張り巡らされているリンパ管には、皮下の浅い部分にある浅リンパ管と身体の深部にある深リンパ管がありますが、本日は肌とも関連のある浅リンパ管を中心に話を進めていきます。
リンパ系の主な2つの役割
- 代謝物や老廃物の回収
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血液が運ぶ栄養素と細胞が作り出す酵素によって、全細胞は代謝活動を行っています。その結果、代謝物が作られます。
それらを回収するのは静脈ですが、回収しきれないものはすべてリンパ系が引き受けます。これがリンパ液です。
リンパ液は、リンパ節を通るときにろ過され、老廃物が取り除かれます。そして血液系に戻り、身体に再利用されるのです。
- 免疫細胞としての見張り番
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リンパ液には、白血球の一つであるリンパ球という免疫細胞が含まれています。この細胞が全身を遊走しながら、菌やウイルスなどの病原体を見つけては、リンパ節で排除しています。
体内で働くだけでなく、怪我をしたときには、リンパ液を体外に滲出させ、透明のカサブタを作ります。
子どもの頃、傷口から透明な液体が滲んでいるのを見たことはないでしょうか?あれがリンパ液(滲出液)です。最近では、この滲出液を利用し、薬を使わずに傷口を治す湿潤療法が増えています。
このように重要な役割を果たしているリンパ系、肌やスキンケアとの関係を見ていくことにしましょう。
肌とリンパ系の関係、リンパマッサージは?
表皮細胞一つひとつの代謝活動のおかげで、私達の肌は作り続けられます。
その結果として産出された代謝物を静脈に続き、回収するのがリンパ系ですから、肌の代謝活動を支える陰の立て役者と言えるでしょう。
リンパ系が機能せず、代謝物が回収されなければ、そこに蓄積していきます。女性によく起こるリンパ浮腫もその一つです。
また、毛細血管は表皮層直下(真皮層の最上層)にあり、それに沿うようにリンパ液の流れはスタートします。
表皮層はわずか0.2mm、コピー用紙2枚分の厚みしかありません。つまり、リンパ管もコピー用紙2枚を隔てたところにあるということです。
ところが、しわやたるみの原因がリンパ液の流れの悪さにあるかのようにイメージさせ、リンパマッサージが勧められています。しわやたるみのほとんどの原因が紫外線なのに……。
これには、サッポーも危うさを感じずにいられません。
リンパ系が傷む最大の原因は?
紫外線は、表皮層を通り越して、表皮を支える真皮層にまで侵入します。侵入した紫外線が、真皮層のコラーゲン繊維やエラスチン繊維が作る構造物を酸化劣化させるのが、しわやたるみの始まりです。
リンパ管は、さらに浅い表皮層直下にあるのですから、同様かそれ以上に紫外線のダメージを受けています。つまり、紫外線対策を正しく行うことが、リンパ系を守る最善の方法です。
リンパマッサージがしわやたるみを作る
しわやたるみは、肌にかかる物理的な力によっても作られます。顔を触る、擦る、マッサージする……といった行為、これが第二の原因です。
顔の皮膚全体を支える表情筋は繊細で、簡単に断裂したり外れたりします。そんな肌にリンパマッサージをすることは、しわやたるみの改善ではなく、作るリスクの方が遥かに大きいです。
かつてリンパマッサージが流行ったころ、実際サッポーにたくさんの相談が寄せられました。「しわが増えた」「たるみができた」「左右非対称の顔になってしまった」……等々。
マッサージは、触れるか触れないかくらいの力で行うだけで、十分、肌や血管、リンパ管にとって良い刺激となります。
つまり特別なことはしないで、毎日のスキンケアを行うだけでOK、表情豊かに過ごすだけでOKなのです。
リンパ液の流れは簡単な方法で良くなる
肌とリンパ系の関係について書きましたが、そうはいってもリンパ液の流れは良くしたいもの。どうすれば良いのでしょうか?
リンパ液は、身体の動きに合わせて流れているのですから、基本は全身を動かすことです。これは浅リンパ管にも深リンパ管にも言えることです。
激しい運動をする必要はなく、適度に身体を動かすだけでリンパは流れていきます。
しかし、電車や車での通勤が主で、デスクワークが多い現代では、極端に運動量が減っている人が多いようです。「それ私!」と思った人にお勧めの簡単な方法を紹介しておきます。
リンパ液の流れを良くする2つの方法
- 1. 肩を回す運動
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回収されたリンパ液が最終的に静脈と合流します。その地点が「静脈角」。左右の鎖骨の奥にあります。
右静脈角では右上半身の、左静脈角では左上半身と下半身全体のリンパ液が回収されます。
この合流点を動かし、スムーズにリンパ液の回収が行われることで、全身のリンパの流れが良くなるのです。
- 両手を肩の上に置いて胸を張り、肘で大きな円を描くように肩を大きく10回くらい回しましょう。肩甲骨を意識するといいですよ。
- 2. 腹式呼吸
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左上半身と下半身全体のリンパ液は、お腹の真ん中にある乳び槽に一旦集まり、胸管を通って、左静脈角に流れています。
乳び槽を圧迫したり緩めたりすれば、リンパ液の流れが良くなります。と言っても、腹筋のような激しい運動の必要はありません。
- 腹式呼吸をしましょう。鼻から息を深く吸って、お腹を膨らませます。口からゆっくりと息を吐きだします。これを1分くらい繰り返します。
どちらも簡単にできますね。一日に何度か、気が付いた時や仕事の休憩中などに行いましょう。
いかがでしたか?本日は肌とリンパ系の関係について、解説しました。
リンパ系は、肌の健康と直接的な関わりは少ないですが、身体の健康と深くかかわっているので、間接的に大事なことには違いありません。
リンパの役割や位置づけを知れば、世間で流れる情報に惑わされることはないですね。
- 下手なリンパマッサージは危険!しわやたるみの原因に
- リンパ液の流れをよくすれば、間接的に肌にも恩恵が
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