肌に赤外線やブラックライト(紫外線)を当て、撮影します。すると、メラニンの多いところが黒っぽい斑点として浮き上がって見えてきます。よくテレビや雑誌で見る光景です。実際に化粧品カウンターなどで撮影してもらった方もいるかもしれません。
- 「シミ予備軍が…」
- 「シミの種が…」
- 「シミの素になる…」
- 「隠れジミが……」
このような説明がされています。気になる表現といいましょうか、上手く言い表していると感心すべきなのか……とにかく、思いもよらぬ自分の肌の画像に、『あー、大変!シミが増えたらどうしよう~!!!』と、ショックを受けるのは間違いありません。見えなかったものが映っているのですから、インパクトがあります。
シミ予備軍であることは確かですし、シミの種と言ってもいいでしょう。シミの素でもいいです。隠れジミはちょっと先走り過ぎとも言えますが、言葉の綾(あや)だと聞き取れます。
でも、ここで、
- 「表皮深部に潜み出番を待っている」
- 「色素(メラニン)が沈着している」
- 「このまま放置していると…」
- 「早く排泄(or美白)しなければ…」
などの言葉が加わると、間違いなく将来のシミが予定されているように思えて来るのですから、「何かしないと不安!」という気持ちになっても不思議ではありません。そこに、
- 「何といっても紫外線対策!」
- 「メラニンを早く排泄するピーリング剤、スクラブ洗顔」
- 「この美白成分がシミ(メラニン)に届く」
- etc…
といった提案があると、『それでよくなるなら…きっとよくなる…これで一安心』と、素直に受け入れてしまいます。
でも、果たしてこれでホントにいいのでしょうか?
美肌塾読者の皆さんは、このような『悪魔の囁き』に乗ることのないように一歩距離を置いて、このシミ予備軍を考察してみましょう。
シミ予備軍の真実と、正しいシミ予防策
黒っぽい影の大小の斑点が映し出される現象は、実は誰の肌でも起きている現象です。メラニン色素を作るメラノサイトが正常に働いている証といえます。例えば、紫外線を普段よりたくさん浴びてしまったら、日焼けもするし、黒っぽい斑点は増え、濃くなります。紫外線ダメージから防衛するために、メラノサイトがメラニン色素の生成を急いだわけです。
顔中に分布しているメラノサイトには、よく働いてたくさんのメラニンを作るものとあまり作らないものとがあります。よく働くメラノサイトの集まっているところがより黒っぽい影を見せます。
さて、この現象をどう捉えるかです。
「シミ予備軍と見る」は、一面の真実です
「シミ予備軍」の呼び方には一面の正しさがあります。但し、シミに発展するかどうかは今後の肌管理次第、という段階でもあります。
紫外線をシャットアウトしても、メラノサイトが毎日のメラニンの大量生成をやめなくなった、つまり、メラニン生産のコントロール(制御)をしなくなった部位がシミです。黒い斑点が増えたり、濃くなったりするのは、まだ正常にメラノサイトが制御している状態です。日焼けする能力の高い部位と低い部位があるだけです。
しかし、これ以上メラノサイトを警戒させるのは危険ですよという黄信号が点灯した段階とも言えます。黒い影の斑点ができている部位は、メラニン量産の機能を高め、シミを作る準備が進んでいる状態とも取れるからです。ここで警戒が限界を超えると、制御を諦めたメラノサイトがメラニン大量生産のスイッチを入れっぱなしにしてしまい、シミが作られるというわけです。その意味で「シミ予備軍」は一面の正しさを捉えた評価だといえます。
そして、これらシミ予備軍の画像を見て、慌てて「何かしなくては!」と考えるのではなく、継続して観察していくことで、危機が拡大しているのか解消に向かっているのか、変化の方向を知ることこそが大切なのです。
でも、ただ観察を続けるだけではいけません。一方で、シミにならないように手を打っていくことが求められます。
正しいシミ予防策とは
メラノサイトはメラニンを作って危機から肌を守ることが仕事です。しかし、制御不能のシミになるようなメラニンの作らせ方は肌管理の明らかな失敗です。メラニンをたくさん作らなければならないような状況を少なくしてあげるのが正しい対策の方向です。言い換えると、メラノサイトがメラニンを作る機能を高めなければならない状態をなくしていくことです。
このようにすると、黒い影の斑点も消えていきます。薄くなっていきます。
世間でよくいわれる冒頭の対策例をネタに正しい予防策を解説します。
1.「何といっても紫外線対策!」
これは半分正しい対策です。大切なのは、肌に優しい紫外線対策であることが必要条件となります。具体的には、
- 耐水機能を強化していないUVケア製品を日常使用する
- 紫外線吸収剤の日常使用を避ける
- 雨でも、曇りでも、UVケアを基本にする
が、三原則です。
紫外線を防御するだけが、メラノサイトの機能亢進をさせているわけではないという事実を押さえることです。紫外線によるメラノサイトの機能亢進を防止できても、その他の要因でメラノサイトを警戒させていたら、長い目で見ると、着実にシミ作りに貢献するケアになってしまうのです。
2.「メラニンを早く排泄するピーリング剤、スクラブ洗顔」
スクラブ洗顔やピーリング剤でターンオーバーを速めると、シミが薄く見える一時的な効果はあるかもしれません。しかし、生成されたメラニンを早く排泄することでメラニン分布が疎になって薄く見えているだけです。肌が弱くなる分、メラノサイトは機能亢進をする確率が高まります。つまり、逆効果、将来のシミ作りに貢献することになります。
3.「この美白成分がシミ(メラニン)に届く」
美白成分がバリア層を突破して、メラノサイトやメラニンのある表皮細胞層内に侵入させなければ美白剤の効果は出ません。しかも、その効果は一面的で、色が白く見えるという表面的な一時効果に過ぎません。メラニン生成の邪魔をしたり、作られたメラニンを漂白しているだけだからです。
本当の美白は、メラノサイトがメラニンを余計に作る必要がないようにしてあげることです。肌の健康と本当の美しさが実現します。バリアーを突破させて、メラノサイトやマスト細胞の警戒心を抱かせるのは、シミ発生のリスクを高めるだけです。
いかがでしたか?
肌が育つ環境を保証してあげることが、最高のシミ予防策となることに繋がったでしょうか?
肌が育ち、体力の備わった肌は、多少の失敗があったとしてもシミになることはありません。
心がけているシミ予防策、今一度見直してみましょう。大きな勘違いをしている方は多いのです。
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