スキンケアにおいて、色素沈着という言葉がよく使われます。でもこの沈着している色素って何でしょう?
メラニン色素?汚れの色?ほんとに色素なのでしょうか?何かよくわからないけど使用されています。便利なのでしょう、愛用者からの相談にも色素沈着という言葉を見ます。
でも、相談に答えるには、その色素沈着がどのようなものなのか詳細に聞かないと、間違った対策やアドバイスを提供することになりかねません。
「色素沈着ってシミ、つまりメラニン色素のことでしょう?」
「日焼けで黒くなるのも色素沈着ってこと?」
「目の下のくすんだ部分が色素沈着じゃないの?」
「ニキビ跡の赤みを色素沈着といってるけど?」
「毛穴の黒ずみが色素沈着!洗ってもとれないし……」
「アトピーの治った跡がまだらに茶色っぽくなってる、これが色素沈着!」
「皮膚科の先生がソバカスを色素沈着って言ってたけど?」
このように、様々な色素沈着があります。だから、色素沈着だけではなんだかよくわかりません。読者の皆様は、色素沈着という言葉をよく使用していますか?
サッポーは色素沈着という言葉を使用しないように心がけています。どんな色素沈着を想定するかは人それぞれだからです。
色素沈着を三つのパターンに分けて対策を考える
色素沈着という言葉をどのように扱うべきか、サッポー流にわかりやすく分類して、大雑把に正しい対策の方向性を提示することにします。まるでトンチンカンな対策にはまり込んでいたら悲劇ですからね。
- メラニン色素の増加が原因となるもの
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様々なシミがその代表ですが、日焼けだって色素沈着といえるでしょう。シミの場合は境界線が明瞭です。日焼けは範囲が広く境界線はよくわかりません。日焼けの場合、UVケアをしっかり継続することで、かなりの日焼けでも1~2ヶ月で元の肌色に戻ります。メラニンの生産量が減少し、たくさん作られたメラニンもターンオーバーとともに排泄され、やがて元通りのメラニン量に戻るからです。
しかし、シミの場合はUVケアをしっかりしていても全く変化しません。メラニン色素が肌に沈殿して貼り付いてしまったように見えます。色素沈着という言葉がしっくりと合いますね。でもいつまでも沈着・沈殿しているわけではありません。毎日ターンオーバーとともに排泄されています。それなのに相変わらずシミとして存在し続けています。これは紫外線ダメージなどの何かが引き金となって、メラニンを生産しているメラノサイトがメラニン色素のフル生産活動を止めなくなっているからです。レーザーやピーリング治療でしみが消えても、しばらくすると再発するのはこのような仕組みになっているからですね。
医学的には、このようなシミを作っているメラノサイトの働きをコントロールできません。だから、シミは治せないことになっています。しかし、シミが消えて無くなるケースはしばしば見られます。医療としてはまだコントロールできないが、肌はシミを治す方法を知っているからです。サッポー流にいえば、紫外線対策を徹底した肌が育つケアを一年も継続できたら、肌はメラニン色素の大量生産をやめるものです。
以上は一般的なシミですが、炎症由来のシミもあります。炎症の刺激でメラニン色素の大量生産が始まったものです。炎症を伴うニキビや、アトピー性皮膚炎や様々な皮疹・湿疹の跡にできるシミです。この場合は、炎症が治まると2~3ヵ月で大量生産も停止し、シミは急速に消えていくのが普通です。とはいっても、肌が過敏な状況にあるときに紫外線などの刺激を無防備に受けているようだと、一般的なシミに変化し定着してしまいます。
- 血液のヘモグロビン(赤血球)の赤みが映っているもの
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炎症ニキビ跡や湿疹跡の赤みも色素沈着と呼ばれます。何でも色素沈着ですから、紛らわしいですね。ニキビ跡の赤み…などと具体的に表現してほしいところです。赤いシミがあるのだと思い込んで美白製品を使用して、ホントのシミを作ってしまったりする笑えない悲喜劇がけっこうあるのです。炎症跡は毛細血管が拡張し血液が滞留しているだけです。このような場合は、まず炎症からの完全回復が最優先です。炎症が治まった後は、通常のケアでよいのです。
血液に関連する色素沈着で紛らわしいのは、目の下のくすみとか、くまと呼ばれるものです。黒っぽくどんよりとくすんだ肌色に見えるもので、赤みが目立つことはまずありません。……が、これも赤血球の赤みが黒っぽく映っているものです。表皮直下の毛細血管より深いところの毛細血管が拡張し血流が滞留しているので、赤く見えず黒っぽく見えているのです。シミの黒っぽさとだと勘違いする人もいますが、境界がはっきりしていない限りシミではありません。何かを押しつけると色が薄くなるのでシミではないと判ります。ただ、この場合の対処はスキンケアではありません。
- 皮脂・油脂の酸化で、肌が黄色~黒く色づいたもの
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肌が部位により何となく黄色っぽい~茶色っぽく見える現象があります。毛穴などでは茶色を通り越して黒っぽく見えていることもあります。これも色素沈着といわれます。洗っても色が抜けないので、「これはシミだ」と誤解している人もいます。
これは肌(角質)についた皮脂や油脂が酸化してこびりつき色づいているものです。台所で白いタイルに油がつくと茶色っぽくなり、放置していると次第に黒くなってこびりつき、少し洗ったり拭くくらいではとれなくなっているのと同じです。
ところが、顔は毎日洗っている、こびりつかなくても良さそうなのにどうして?と思いますね。これは肌(角質)が硬いからです。柔らかくしなやかな肌ならこびりつくことはありません。硬さは肌の育ちが未熟で水分保持力が弱いためすぐに乾き硬くなるためです。
このようなわけですから、対策は“肌が育つケア”そのものですね。ピーリングや美白ではありません。
「色素沈着」を三つのパターンに分けて解説しましたが、これらが組み合わさっている場合もあります。いずれにしても、色素沈着なんて言葉を使っていたら、適切な対策に結びつかないことがあります。さらには、間違ったケアにはまり、トラブルの拡大生産につながりかねません。
肌で起きている現象は正しくとらえ、正しい対処が基本です。たとえ皮膚科医や美容部員、エステティシャンなどの専門家が使っていても、何を意味しているのかよくわからない言葉には注意しましょう。美肌作りの隠れた秘訣の一つかもしれません。知ってるふりをするのではなく「今の○○○○ってなーに?」と尋ねましょう。それでも、よく分からなければ、サッポー美肌塾スキンケア相談室を利用しましょう。
- さまざまな色素沈着があり、それぞれ対処法は異なる
- 意味の定まらない言葉には注意する
「サッポー美肌塾」第557号
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