今回は時々相談をいただく「妊娠中のスキンケア」について解説していきます。
妊娠中は、身体に自分以外の命が宿っている……実に神秘的な期間です。女性にしか出来ない大仕事であり、特権でもあるのでしょう。
そんな大切な命を育むために、身体は様々な対応をしています。その影響は良くも悪しくも肌に及びます。
スキンケア相談室には、よく妊娠中の相談が届きます。カウンセラー達は「おめでとうございます!!」と祝福しながら、幸せのお裾分けをいただいた気分になります。しかし、相談者は少し憂鬱な気分を抱えているケースもあります。
妊娠中の肌に何が起こっているのか?見ていきましょう。
ホルモンバランスの変動による肌への影響
折に触れ、私達の身体はホルモンバランスの状態に影響されます。女性は特に、身をもって知っています。妊娠だけでなく、生理や更年期を経験するからです。
代表的な女性ホルモンには、「エストロゲン(卵巣から分泌される卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の二つがあります。
妊娠~産後に至っては、この二つのホルモンのほかにも何種類ものホルモンが必要に応じて分泌されます。さらに量を増やしたり減らしたりが適宜行われます。これらホルモンの分泌とその増減は、司令塔である脳下垂体から分泌される「命令ホルモン」によって行われます。
多種多様のホルモンが関係し合い、激しく変動し、まるでジャグルの中で共生しているかのように、多少の混乱を起こしながらも人体の恒常性を保っているわけです。
そんなホルモンバランスの変化は、肌にも影響します。人体最大の器官である肌ですから、当然と言えば当然です。
次に、代表的な現象をまとめました。
妊娠中にシミが増える、そばかすが濃くなる
これは様々なホルモンのバランスをコントロールする命令ホルモンが、「メラニン色素増産の命令」を併せ持つことによります。
どうしてそうなっているのかは判っていません。メラニンを増産して身体を守るのが目的なのでしょうか。それとも何か危険を知らせるのが目的でしょうか。
ただこの時できるシミや、濃くなるそばかす様のシミは、「肝班」と呼ばれ、一時的なものです。出産や授乳が終われば、自然に消えて行きます。だから、いたずらに心配する必要はありません。
ところが、妊娠から授乳期の紫外線対策を怠ると、普通の消えないシミに変化する確率が極めて高いので、要注意です。紫外線対策をより意識して行う必要があります。
この時シミ対策に、美白効果のある化粧品を使う方がいますが、これは止めましょう。美白剤でシミが薄くなったり消えたように見えるのは、使用期間中だけの現象です。
美白成分で漂白されてメラニンが無色化しているだけ、あるいは、美白成分がメラニン生産を妨害しているだけで、メラニンをたくさん作る体制が変わったわけではありません。
それだけでなく、美白成分は角質層を通過して内部に入り込むので、肌が拒絶反応を起こしている場合があります。いわゆる接触性皮膚炎です。皮膚炎と言っても肌荒れのような軽微な症状なので、気づかない人が多いのです。
ところが、気づかずに美白剤を使い続けていると、この皮膚炎によりシミが作られます。美白剤がシミを作る最大原因になっている所以です。
妊娠・出産に伴う一時のシミのために、美白剤で将来の肌を犠牲にするべきではありません。
ニキビが増える、乾燥で肌荒れする
これはプロゲステロンの分泌が増え、ホルモンバランスが変動することで、皮脂分泌が活発になるからです。すると未熟な肌では、皮脂が詰まりやすくなり、ニキビに繋がります。
逆にプロゲステロンが減れば、肌が乾燥気味になり、肌荒れを起こすこともあります。
べたつきやニキビが気になり、アルコール配合量の多い、さっぱりタイプの化粧水を使う方がいますが、要注意です。
アルコールの量が多いと、角質が剥がれやすくなります。次第にターンオーバーが早くなり、肌はさらに未熟化が進行。よりニキビの出来やすい肌に変わっていきます。
サッポーのようにアルコール配合量が少ない、さっぱりタイプの化粧水を選びましょう。
また肌が脂っぽくなると、汗や水に強い耐水機能の強化された製品を使用する方がいますが、これも要注意です。
耐水機能強化製品(ウォータープルーフ)は、化粧崩れを起こしにくく便利ですが、肌が必要としている汗まで弾くので、乾燥肌に導きます。乾燥はあらゆるトラブルの根源ですから、肌荒れやニキビの原因にもなります。
ちなみに、エストロゲンが増えると、肌が潤ったり、心身にも良い影響を与えるとされています。妊娠中に、却って肌状態がよくなったり、身体の調子がよくなる方がいらっしゃるのも、このようなことが手伝っているのでしょう。
いずれにしても、肌に関しては、妊娠前から良い状態に保っておくことが大事です。よく育った肌は、ホルモンバランスが揺れ動いても土台がしっかりしているため、影響を受けにくいのです。
妊娠中や産後も、特別なケアの必要はありません。ホルモンバランスが元に戻れば、肝班は消えていきます。ニキビや肌荒れも良くなっていきます。
妊娠中のトラブル番外編 ~妊娠線~
妊娠線も妊婦さんにとっては、悩みのタネです。
大きくなるお腹に対して、現状の皮膚構造の変化が追いつかず、間に合わせの疑似皮膚組織(瘢痕組織)が作られます。皮膚の縞模様がそれ、妊娠線の正体です。
予防法としては、顔と同じように保湿・保護のケアをして、常にお腹の皮膚に柔軟性を持たせておくことです。
化粧品では乳液が最適なのですが、ちょっと勿体ないですね。妊娠線予防クリームがたくさん売られているので、そのような製品を選びましょう。
でも、これだけでは限界があります。もう一つの予防法も同時に行いましょう。
妊娠中は身体に脂肪が付きやすくなっていて、必要以上におなかも大きくなりやすいのです。すると、必然的に余計な妊娠線が増えてしまいます。
つまり、もう一つの予防法とは、「必要以上に太らないこと!」です(^_^;)
といって特別なダイエットは厳禁ですよ。妊娠中の、一日のカロリー摂取量は普段より100~200カロリー多めが標準的な考え方だそうです。つまり、ほとんど変わらないと考えて良いわけですね。
従ってカロリーを気にするよりも様々な栄養素、多品種の食品を取るように心がけることの方がよほど大切です。赤ちゃんにも様々な栄養素を与えてあげましょう。
妊娠が安定期に入っていれば、体調に合わせて、適切・適度な運動を心がけましょう。スキンケアと活動的な身体作りの二本立てです。余計な脂肪がつくのを防いでくれます。
- 妊娠中、ホルモンバランスの変化は肌に影響するが、出産後には落ち着く
- 妊娠中に特別なケアは不要!いつもと変わらないケアでOK
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