昔から尿素は角質を柔らかくするのに、外用剤として医薬品に多用される成分です。化粧品にも広く使用されています。
尿素はおもしろい成分ではありますが、「使い続けて大丈夫?」というところで、サッポーは今まで積極的にお勧めすることはしていませんでした。
しかし、ダメダメとだけ言っていたのでは、美肌情報に目がない読者の好奇心は抑えられないようです。実際、尿素には素晴らしい良さがあります。ここは良い点と良くない点の両面を知っていただくことで、正しいつきあい方・利用の仕方を知っていただくことにします。
尿素を利用した化粧品の話題は、大きくなったり小さくなったりを繰り返しています。でもけっしてなくなりません。ここに尿素の秘密があります。
尿素は肌が持つ天然保湿成分の一つ
尿素は硬くなった角質を柔らかくする
尿素は、NMF(天然保湿成分)の一つとして、角質層内に保持されている成分です。ただ、ごく微量で、汗にも微量に含まれています。昔から抗角化症薬として治療薬や市販薬に広く使われている成分です。
尿素の働きに保湿能がありますが、もう一つ注目すべき作用があります。それはタンパク質を分解する働きです。角質はケラチンというタンパク質なので、角質を分解していく作用が働くのです。
どのような症状に利用されるかを見てみると、
ひび、あかぎれ、しもやけ、アトピー性皮膚、進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、老人性乾皮症、掌蹠(手のひら)角化症、足蹠部(足裏)皸裂性皮膚炎、毛孔性苔癬、魚鱗癬…
といったものです。
症状を想像するとお判りのように、角質層が乾いてカチカチになり、角質が目に見えるほどの大きさに重なった状態でボロボロと塊で剥がれやすくなっている肌です。あるいは、硬くなった角質層だけに留まらず、真皮層まで道連れに、ひび割れしやすくなっている状態の肌もそうです。通常の肌と比べ角質層が極端に硬い状態にある肌と言えます。
尿素の功と罪
乾きやすく硬くなりがちな肌にとって保湿能はよいことです。しかしタンパク質を分解する働きはいいの?角質層がさらに壊れ、剥がれるならよくないのでは?等々、角質を大切にする美肌塾読者ならきっと疑問に思われたでしょう。
ところが、このような哀れな状態の肌、通常の化粧品の保湿能や保護能だけでは改善しなくなった肌においては良い方向に働くのです。タンパク質が分解されて軟弱になるおかげで、大がかりな壊れ方をしなくなるのです。角質(層)が重なり連なったまま、ゴソッ、ゴソッと剥がれていた状態が緩和され、小さい単位で剥がれる状態に安定してきます。
これが尿素の良い点です。このような働きから皮膚の柔軟剤として、医薬品・化粧品に利用されます。
しかし、そこそこ良い状態を維持している肌が、尿素配合のスキンケア製品を使用したらどうなるか想定してみましょう。
- 硬い角質表層の分解が速まり、肌に柔らかさを感じる
- 角質の剥がれ方が早まり、ターンオーバーが速くなる
使い始めは、肌が柔らかくなったように感じ、「いいな!」と思うでしょう。しかし、分解され剥がれやすくなった角質の肌は、ターンオーバーのサイクルが早く・短くなってきます。まだ十分に育っていない表皮が角化し始めます。角質層は未熟な角質が増えてきます。水分保持力のない乾きやすい肌が進行していきます。それでも続けていたら敏感肌に転落していきます。
化粧品に配合される尿素の働きはそんなに強くないので、急にターンオーバーが早くなっていくわけではありません。使用するたびに肌の柔らかさを感じながら、肌は次第に未熟な硬い角質に変わっていきます。いいな!いいな!と思いなから、一ヶ月前と比べると、あれ!?何かおかしいな!というわけです。
これが尿素の注意すべき点です。
つまり、非常用の緊急利用で、けっして日常使用してはいけないということですね。
尿素利用の化粧品は使い方次第です
尿素の良い面と悪い面を見てまいりましたが、良い面だけ取り入れることが出来たら、素晴らしいですね。そこでポイントとなる尿素配合製品利用のガイドラインをまとめてみました。
必ずケアのチェンジを
尿素を配合した化粧水やクリームは、角質層の状態が極端に悪い部分だと、角質の剥がれを促進するのではなく、むしろゆっくりと剥がれるように作用します。これは角質を分解する働きが柔軟効果として働くからです。
従って、極端にひどい状態の肌に対して、ある程度良くなるまでの期間に限って使用することは大いに効用があります。しかし、必ず途中で尿素の配合されていない製品の使用へ移行しないと、肌の状態はさらに良くなっていきません。
元々肌の育ちを後退させながら、改善のきっかけにするものだからです。悲劇的な状況が改善されたあとは、尿素の角質を分解する働きが、角質の剥がれを早めるだけのものになっています。
サッポーの視点
尿素を利用した製品を使用すべきかどうか……これは、肌が今どのような状態にあるか…が判断するポイントになります。
- ◎…肌(皮膚)が硬く、荒れた状態がよくならない
- ×…肌(皮膚)の状態に不満はあるが、肌は安定している
- ×…肌(皮膚)はそれなりの状態にあるが、もっときれいにしたい
「薬のような使い方」と考えるとわかりやすいですね。非常事態に使用し、症状が緩和されると、今度は栄養をとり、適度な運動を始めて健康体を作っていくように、薬はいつまでも使用を続けるものではありません。尿素配合の製品も同様に考えるのが基本です。
尿素配合の化粧品を必要とする肌は少ないのが実態、たいていの肌は普通の化粧品や環境作りで肌が育つ段階にあります。良い角層の状態はさらに良い細胞が生まれ育つ環境となり、美肌が育つ好循環を作っていきます。
尿素と肌の関係、ご理解いただけましたでしょうか。
一つの方法、一つのアイテムだけにこだわったケアは、いつしか肌改善の障害になっていることがよくあります。
尿素を利用するとよい肌もあるのですが、顔の肌でそのような状況に陥ることは稀で、角質層の超厚い手の荒れや、足の裏の不都合な状況改善に役立てるのが妥当な使い方となります。
- 少しよくなったら中止し、ケアのチェンジが尿素使用の鉄則
- 尿素は、手や足裏のように超厚い角質の荒れに利用がベスト
編集後記
他の化粧品(成分)にも言えることですが、一概に肌への善し悪しの判断ができない難しさがあり、尿素のように条件さえ守れば、大いに役立つものもあります。
でも、そこがスキンケアの奥深いところ。サッポー美肌塾で興味ある講義を読む、それだけでも肌は変わってきますよ。
「サッポー美肌塾」第222号
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