ミネラルオイルについては様々な情報が流れていますが、今回は“nono”さんよりネガティブな面について質問を戴きました。
スキンケアの世界においても、アメリカ大統領選のように、ネガティブキャンペーンがそこかしこに蔓延しています。何食わぬ顔をして当前のごとく振る舞うネガティブ情報に、知らないうちに乗っている私達がいます。
健康な美肌を目指していただくため、これら間違いを含む情報に感染しないよう、美肌塾を役立てていただければ幸いです。
今日の美肌塾はネガティブ情報によく取り上げられる「ミネラルオイル」についてです。
ミネラルオイルが毛穴を詰まらせる!?
“nono”さんの質問
ミネラルオイルは毛穴をつまらせるといいますが、メイクを落とすはずのサッポーのクレンジングに何故使用しているのでしょうか?安価だからですか?
ミネラルオイルは毛穴をつまらせる……このような風評がどこかで生まれ、流されているようです。そして材料価格として安いという評価がされているわけです。
それぞれ、何を根拠にしているのかは不明ですが、理由が曖昧だからこそ、このような評価が通るのでしょう。ネガティブ商法に利用され、それなりに広まったものと推定されます。
ミネラルオイルの基になっているワセリンは、精製技術が未熟な時代がありました。半世紀近く前、化粧品に利用される際に不純物を取り除くことができず、トラブルが多発していたのです。その時のことを根拠にしているのかもしれません。
今は精製技術も進み、このようなワセリンが流通することはまずありません。
ミネラルオイルをありのままに理解する
ミネラルオイルとは、ワセリンを構成する二つの油脂、固形パラフィンと流動パラフィンの内、流動パラフィンだけを分離して精製したものです。化粧品に使用される場合、ミネラルオイルと表示されます。スクワランと同じ構造のオイル成分です。
ワセリンは、傷口や手術あとの保護材、様々な皮膚に塗布する治療薬の基材として多用されます。これは、生体組織がむき出しになった超過敏な部位であるため、植物油等の不純物が多く重いオイル類での保護はリスクが伴うからです。
ワセリンは化学的に安定しており、酸化しません。また肌に侵入(浸透)しにくい性質を持つため、もっとも安心・安全な油脂材料として、多くの医薬品だけでなく、化粧品にも利用されます。
化粧成分の材料として使用される場合、医療用と違い日常的に使われるため、さらに安全が求められ、精製レベルのより高い水準が求められます。
ただし、テクスチャーというか肌に塗った感触と見映えが今一つなので、肌に塗る化粧品としては嫌われる側面を持ちます。また紫外線(UVA・UVB共に)をよく通すのでUVダメージを受けやすいという弱点もあります。
クレンジングクリームにミネラルオイルを使用する理由
サッポーが推奨するクレンジングクリームにミネラルオイルが配合されているのは、けっして安いからではなく、クリームが、化粧浮かし、汚れ浮かしとして働く中で、なくてはならない働きをしてくれるからです。
一般のクリームに使用されるオイル成分のように触感のよい保護力を期待するのではなく、その軽さ故に、様々な汚れの保留剤として働いてくれることが最大の狙いです。
ちなみにこのクレンジングクリームには12種類の油脂成分と6種の水相成分(保湿成分等)が配され、様々な汚れになじみやすい調合がされています。
水溶性の様々な汚れは6種の水相成分になじむことで、すすぐだけで簡単に洗い流されるようになります。
油溶性の化粧品成分や汚れは、肌上で優しくクルクルすることで、12種類の油脂成分になじみ、取り込まれていきます。
これら油脂成分の一つにミネラルオイルが加わっていることにより、取り込んだ汚れも肌に逆流しない、洗い流しやすい状況を作る保留剤として機能します。むしろ、毛穴に詰まりにくい成分と言えるのです。
このことが、ミネラルオイルは肌に侵入(浸透)しにくい、安全・安心の化粧浮かし、汚れ浮かしが可能な製品作りに貢献している理由です。
いかがでしたか?
ミネラルオイルに備わる長所と短所を知っていたら、クレンジングクリームに配合されたミネラルオイルが毛穴をつまらせる心配は無用だということがわかります。
- 長所も短所もあるミネラルオイル、問題はその使われ方
- 根拠がはっきりしない情報は、眉に唾をつけて!
編集後記
ミネラルオイルやワセリンを主成分としたクリームだと、素肌でいるよりも多くの紫外線ダメージを受けることは事実です。
でもそれはミネラルオイルのせいではなく、UVケアをしないことがそもそもの原因です。
こんなケースの情報が一人歩きして、ミネラルオイルにも飛び火したのでしょう。
「サッポー美肌塾」第431号
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