ハイドロキノンといえば“美白剤”。このような認識が一般的だと思います。
2001年の薬機法(当時は薬事法)改正時に、配合禁止リストから外れ、2%以下の濃度であれば、市販の化粧品でも使用が可能になりました。それまでは、医師の管理下でのみ処方されていました。
海外では、もっと早く一般に使用されている国もありましたが、配合制限があるというのは同じです。効果はあるが、リスクも高いというのが背景にあるからでしょう。
スキンケア相談室にも、たくさんの問い合わせが来ています。一部を紹介します。
- 「ニキビ跡がひどいです。ハイドロキノンを試してみたいのですが、大丈夫でしょうか?」
- 「1cmほどのシミが気になり、皮膚科でハイドロキノンを処方されたのですが、強い薬だと聞いたので使用を迷っています。」
- 「シミにハイドロキノンを使用していましたが、赤みが出て、やけどのような状態になり、中止しました。」
- 「処方されたハイドロキノンに反応し、炎症してしまいました。さらに塗った跡がうっすらと残ってしまいました。」
- 「シミだらけなので、ハイドロキノンクリームを使用しましたが、効果が感じられません。」
このように、あげるときりがありません。ただ、ハイドロキノンを扱っていないサッポーに届いたものなので、嬉しい報告や相談よりも不安や不満が大半です。しかし、一方で関心も高いことが窺えます。
他の美白成分に比べて100倍の効果がある、などとも言われていますから、とにかく期待してしまうのでしょう。
ところが化粧品として販売する際に、美白効果があるとか、ホワイトニング効果があるという案内は禁止されています。
使っている間、肌は白くなり、シミも薄くなるはずなのに……薬機法ではその効果がまだ認められていないため、薬機法違反になってしまうのです。
ハイドロキノン、奥が深そうですね。一体どんな成分で、私達の頼もしい味方になってくれるのでしょうか?
解説していきます。
ハイドロキノンの働きと弊害
ハイドロキノンは古くから、写真現像などの還元剤として利用されています。それを職業とする人達の手の肌が白くなることから美容成分として着目されたものです。
ハイドロキノンの働き
ハイドロキノンはとても酸化しやすい性質を持っています。このことがメラニン色素を還元し、漂白する働きとなります。
でも、それ以上にユニークですごいところがあります。
肌色を決めるメラニン色素は、メラノサイトという細胞が作っています。その過程では、チロシンというアミノ酸にチロシナーゼという酵素が結合することにより、メラニン色素が合成されています。
ところが、ここにハイドロキノンがあると、チロシナーゼはチロシンと勘違いして、結合してしまうことが多くなります。するとメラニン色素合成の効率が悪くなって、生産量が少なくなります。
これが、“シミを薄くする”“肌を白くする”仕組みです。しかもハイドロキノンは、他の美白成分と比べ、飛び抜けてこの能力が高いのです。
また使用をやめると、元通りのメラニン色素の生産に戻る(シミが復活する)ので、肌機能に影響を与えず、安全だとされています。
ハイドロキノンの使用に伴う問題点と弊害
安全と書きましたが、これはハイドロキノンの配合量が市販品で2%以内であることが前提になっています。それ以上に配合されたものは薬剤として、医師の処方下でのみ使用可能となります。
つまり、そもそも不安定で刺激が強く、肌が反応しやすい成分だということです。医師の治療においては、2%を超えた高濃度のものも使用されますが、炎症等のトラブルと付き合いながらとなります。
でも、使用や治療を中止すれば、シミは元通りに復活……それなら、ずーっと使い続けるしかないということになります。
しかし、サッポーはそのような使用をお勧めしません。その理由は、
- 医師のお世話になると、保険適用外なので費用がかかります。
- 市販品を利用するにも、トラブルは起こりがちで、新たなシミを作るリスクがつきまといます。
- 医師処方・市販品にかかわらず、一年も続けると肌の過敏さが増し、さらにトラブルが多くなります。
- バリアー層(角質層)を通過させて、表皮内部にハイドロキノンを投入し続けるのですが、肌にとってはどんな良い成分も異物です。いつしかそれに耐えられなくなり、限界を迎えます。
肌は、赤みや炎症を起こし、身体の危機を知らせると同時に防御もしている存在です。シミを作るのも肌のSOSと防御態勢作りなのです。美白ケアで白斑を作ってしまうなどは、やり過ぎて肌機能が壊れた…という失敗結果です。
一時的で良いから、肌を白く見せたい!シミを見えなくしたい!という場合、ハイドロキノンは他にない有効な方法だといえます。しかし、肌トラブルに巻き込まれるリスクと、いつも隣り合わせであると認識していなければなりません。
もっと肌に優しいハイドロキノンがあれば、ずっと使い続けることが出来るのに、と願うところですが、実はこれがあるんですね。
でも……。
それはどんな製品か、見ていきましょう。
肌に優しいハイドロキノンとは?
肌に優しいのは、ハイドロキノン誘導体、あるいは安定型ハイドロキノンなどと呼ばれるものです。有名なアルブチンもこの仲間です。
肌に優しいわけと、その代償に失われたもの
上で案内したように、とても酸化しやすいのがハイドロキノンの特徴です。この時の酸化と還元が引き起こす反応により、強い刺激物質が産生される…‥これが様々なトラブルの引き金になっています。
それなら、ハイドロキノンが酸素と結合する前に別の何かを結合させて、酸化しないようにすればよい……このようにして作られたのが、ハイドロキノン誘導体や安定型ハイドロキノンです。
すでに様々な化粧品が出回っています。成分名には、“ハイドロキノン”とあり、本来のハイドロキノンと同じで見分けがつきませんが、案内や解説等をよく見ると、誘導体(安定型)であることがどこかに記載されています。
加工されていないハイドロキノンに比べると肌に優しく、長期間使用しても、トラブルに巻き込まれることは格段に少なくなっています。
しかし、シミを薄くする、肌を白くする能力は100分の一程度に低下するようです。もう、全く別の成分と考えてよいでしょう。
ハイドロキノン5%配合とか10%配合など、2%を超えた案内の製品は、すべてハイドロキノン誘導体や安定型ハイドロキノンのタイプです。比較的安全に使用できるタイプといえます。
日常のスキンケア製品としては、このような優しいタイプで良しとすべきなのでしょうね。
美白を目指すなら、サッポーの肌が育つケア
肌が育つケアとは、肌が育つ適切な環境を整えるケアです。肌は育つと必ず健康になります。健康な肌は丈夫で、しなやかで、トラブルに巻き込まれません。
余計なメラニン色素の量産は行わなくなり、それだけで白さが増します。すでにシミがあったとしても、メラノサイトが大量生産を止める日がいずれ訪れます。
いわゆる美白成分のように、強制的にメラニン色素の生産量を抑えるような働きはありませんが、肌自らが白くなっていくのです。
サッポーは、この方法こそが本当の意味での、“美白”だと考えています。
- ハイドロキノンは肌を漂白したり、メラニン色素生成の邪魔をする
- 誘導体や安定型のハイドロキノンは効果は低いが、安全である
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