手指がきれいな人を見ると、羨ましく思います。
酷い手荒れや湿疹に悩まされる人は、近年減少しています。しかし、悩むほどではなくても、荒れがちであるという方はまだまだ多いようです。
今回の美肌塾では、手荒れをテーマに講義をすすめてまいります。大きくは、二つのアプローチがあります。
一つは、手指に湿疹等の炎症やあかぎれが起きている状態への医療的な対処です。
もう一つは日常のスキンケア(肌管理)により、健康を取り戻し、さらに強く美しい手指を目指す方法です。
後者を中心に解説していきますが、湿疹やあかぎれ対策も織り交ぜて案内します。
手荒れ……手指に何が起きているのかを知る
手指と顔の皮膚は大きく変わるものではありません。違いがあるとししたら、角質の層数が多い分、手指の方が丈夫です。但し、物理的な接触が多く、顔より過酷な環境に置かれています。
手荒れが起こると、手指のバリア層(角質層)が貧弱になり、バリアー機能が低下し、乾燥しやすい状態になります。
貧弱といっても手のひらの角質層は50層程度もあり、顔と比較すると数倍の厚みがあります。一方の、手の甲は顔とそれほど角質層の厚みは変わりません。したがって、手荒れ現象は手のひらと甲では異なった姿を見せます。
- 手のひらの場合
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毛穴が無く、皮脂腺がありません。皮脂腺がない代わりに、角質層の厚みがバリア能を補っています。また角質層にはセラミド等の細胞間脂質が豊富にあり、耐久性を作っています。
しかし、この部分が傷み続けると、新しく作られる角質は乾きやすく、十分な細胞間脂質も作られずに角質層を形成していくため、とても脆いバリアーとなります。さらに皮脂で守られないため、乾いた硬さが目立つようになってきます。
このように柔軟性を失った肌に、物理的な力が加わると、突如ひび割れを起こすことになります。いわゆる“あかぎれ”です。
- 手の甲の場合
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皮脂腺は顔ほど発達していませんが、角質は数層多くなっています。したがって、手荒れは顔のカサカサとほぼ同じような経過で現れます。
手の甲の荒れも、やはり角質剥がれが亢進し、未成熟な角質が作られるようになるために現れている点は同じです。酷くなると、肌の過敏さが昂じ、炎症を起こすようになります。
手のひらと甲で、このような違いがあるのですね。では、次に手荒れの原因と対策についてみていきましょう。
手荒れの直接原因と対策
何といっても水仕事が最大原因
使用される水の存在が角質をふやかせ傷つきやすくします。さらに洗剤が細胞間脂質を溶かし、角質を剥がれやすくします。そしてこれらのことが毎日それも何度も行われることが最大原因です。この手荒れが進行すると、主婦湿疹とも呼ばれる炎症を伴った酷い状態になります。
1.洗剤の悪影響を少なくする
- 水仕事をするときは手袋を着用する
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物理的に手指に洗剤がつかないようにします。
ゴム手袋でかぶれやすい人、手触りが判りにくくイヤだという人は使い捨ての薄い樹脂製の手袋があります。
でも、どうしても手袋に抵抗があるなら……下記の方法を勧めます。
- 洗剤が手指につく頻度と時間を少なくする
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食器洗いの際、スポンジに洗剤をつけて流水で洗うのは、大変リスキーです。強い洗浄力が手指に影響し、皮脂はおろか簡単に細胞間脂質も溶け始めます。
このような時は、洗い桶に水を張り、洗剤を適当に入れ、食べかすをザッと拭き取った食器を浸けて洗います。泡立ちは少なくても十分に汚れは落ちます。洗剤による手指への悪影響もグンと少なくなります。
2.使用する湯温は低い方がよい
冬だけでなく夏でも、お風呂のような湯水で洗い物をする人がいます。湯温が高いほど油脂汚れは早く落ちますが、手指の皮脂や脂質も奪われます。繰り返されると丈夫な手指でも荒れてきます。
かといって、極端に冷たい水も肌にとって危険です。血管が収縮し、血行が悪くなります。しもやけの原因にもなります。そこまででなくても、手指の皮膚に良くないのは明白です。
冷たくない程度の水温で洗い物をしましょう。
3.手が濡れたあと、その都度優しくふき取る
水仕事は、手が濡れては乾き、乾いた後また濡れる……を繰り返します。
水でふやけた肌は脆く傷つきやすくなっています。また乾くとき、水分と一緒に保湿成分(NMF)が奪われ、バリア層の劣化を促進します。その都度、水分を拭き取ることは肌の健康を守る上でとても大切な習慣です。
拭き取るときの優しさも大切ですよ。ふやけた状態の肌は物理的な力、摩擦に弱くなっています。顔の肌は注意していても手指は乱暴に扱っている人が案外多いものです。
4.水仕事のあとは必ず保護のケア
ハンドクリーム※を常備するか、ちょっと贅沢に手持ちの乳液か保湿クリームをつけるようにします。手指が完全に乾く前に付けるのがポイントです。水仕事をするたびに、つけることを習慣にしましょう。
以上4つのポイントのいずれが出来ていなくても、悪影響を与え続けています。手荒れが進行している場合、すっかり良くなるまで徹底して続けることが必要です。
※注意:ハンドクリーム
ハンドクリームには、医薬品や医薬部外品(=薬用)扱いで、尿素が配合されているものがあります。ひび割れやあかぎれ、湿疹のあるときの使用は適切と言えますが、そうでなければ普通のハンドクリームや化粧品にします。尿素は健康な肌作りのブレーキになるからです。
手指が働き者であることが原因
手指は顔以上に働き者です。よく動くだけでなく、強い力が加わることの多い点、十分な配慮が必要です。
手指を使った繰り返し作業からのガード
よくあるのは、紙を触る作業でしょう。新聞や雑誌のページをめくるのに手間取るのは既に指先の水分が奪われ、角質層の劣化が進んでいる状態です。
他にも、手指での繰り返し作業は多々あります。
- 入浴時に身体や髪を洗う
- 髪を乾かすとき、ドライヤーの風が手に当たる
- 部屋の掃除や片付け
- リムーバーやアルコールなど、溶剤の取扱い
- 等々
手荒れを起こしやすい場合、クリーム類での保護、あるいは指サックや手袋の着用などでガードする習慣を身につけておくことが大切です。
手は顔と同じように外部環境にさらされています。肌の三大ダメージである「紫外線・乾燥・酸化」については、同じような配慮が必要です。
ただ手指は洗う回数が多いので、酸化ダメージへの気配りは必要ありません。
手荒れ対策は、「気になる冬だけ注意」ではいけません。一年を通しての良い管理が、冬でも健康で美しい手指に繋がります。
- 水仕事や手指を繰り返し使う作業が手荒れの原因
- 手荒れのない手指を目指すには、一年を通じたケアを
編集後記
秋冬になると、手の荒れが気になり始めます。スキンケア相談室への問い合わせも増えます。
ケアは肌と似ていますが、手荒れになるまでに手指に何が起こっているのかを知ると、普段から注意ができそうですね。
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