ドラッグストアに行けば、スキンケア製品に負けず、たくさんのヘアケア製品が並んでいます。ボトルもカラフルで、どれがよいのか迷ってしまいます。
そんなヘアケア製品の中でも「石けんシャンプー」について、時々相談をいただきます。「肌に石けんが良いのなら、石けんシャンプーはどうですか?」等々です。
今回は、この石けんシャンプーについて解説していきます。どうも誤解が多いようです。
石けんシャンプーの特徴と髪に与える影響
まずは、石けんシャンプーの特徴をまとめました。
石けんシャンプーとは、石けん素地(○○脂肪酸)を洗浄の主成分とした液状の洗髪料です。固形石けんを泡立てて髪を洗う人もいますが、多くの方は液状の石けんシャンプーを使用します。
石けんシャンプーの構造と性質
固形石けんが、各種脂肪酸を「水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)」で鹸化するのに対して、それら脂肪酸を「水酸化カリウム」で鹸化したのが、液体の石けんです。
水酸化カリウムで鹸化すると、乾いても固形石けんのように硬くならず、液状化した石けんとなります。ボディソープも同じ構造です。
固形も液状もアルカリ性であるのは同じですが、液状石けんである石けんシャンプーはアルカリ度が低いため、洗浄力の弱いのが特徴です。
ただし使用後、髪や髪内部に入り込んだアルカリを、取り除く必要があります。髪はアルカリに弱いからです。
石けんシャンプーを使うとどうなる?
髪の毛は、肌の角質と同じケラチン(タンパク質)が骨組みとなっています。
髪の外壁は鱗のようなキューティクルで守られ、その中に無数の硬いケラチンの線維が寄り合い(コルテックス)、卵の白身のような流動タンパクに満たされた状態で髪の骨格を作っています。さらにその中心は空洞(メデュラ)で筒状の3層構造になっていて、しなやかで強い髪を作っています。
石けんシャンプーを使うと、洗髪中はキューティクルがふわふわと開き気味になるため、石けんのアルカリが入り込み、ここに問題が発生します。髪内部に入り込んだアルカリにより、髪内部の繊維群が傷つき、壊れやすくなるのです。
これは、アルカリ泉の温泉に浸かると、皮膚の角質が溶けて、ヌルヌルになるのと同じ現象です。同じケラチン質ですからね。
このことが、切れ毛、枝毛の原因になります。パーマやカラーリングで髪を傷めていたら、傷みはさらに促進されます。このような洗髪が続けば、細毛や薄毛の遠因にもなっていきます。
髪内部に入り込んだアルカリを中和させる必要がある
石けんシャンプーには、専用のリンス類が一緒に販売されていたり、独自に酢やクエン酸を利用して、髪内部のアルカリ性を中和、酸性に戻す処置がとられます。
ところが、髪内部の無数の繊維に入り込んだアルカリは、丁寧に時間をかけないと取り除けません。石けんで洗髪するのが普通だった時代、女性は桶に張った水に髪を30分間程度浸し、桶に水流を作ってすすぎ続けたそうです。
酸性リンス剤の登場により、その時間はずいぶん短縮されました。そのままコンディショナーと同じように使えるものや、パウダーを湯水に溶かして使うものなどがあります。
しかし、全てのアルカリが中和されるわけではなく、どうしても一部は残留してしまいます。髪の繊維群は流動タンパクによって、しっかり保護されているため、一度取り込んだアルカリは流れにくくなっているのです。
石けんシャンプーにメリットはあるの?デメリットをおさらい
メリットは、ただ一つ!頭皮の健康作りに良いことです。
その理由は、サッポーが石けん洗顔を勧めているのと同じです。頭皮に界面活性剤が残らないのです。
石けんは界面活性剤そのものですが、水に触れると界面活性能が消える性質を持っています。一方、石けん以外の界面活性剤は洗い流しても肌に残ります。角質同士を繋ぐ細胞間脂質(セラミド等)にくっついて分解し、角質を剥がれ易くするのです。
ところが、頭皮の皮脂分泌量は格段に多いのです。顔の肌は身体に比べ、皮脂量は3倍、頭皮はさらにその3倍の皮脂で守られています。
洗髪料の界面活性剤はこれら皮脂にくっついて角質剥がれを防いでくれます。それに多くの髪の毛がいつも頭皮を守っているのです。
なので、普通のシャンプーだと界面活性剤が残るという弊害は、顔ほど神経質に考えなくて良いのです。
では、石けんシャンプーのデメリットはというと……上で解説したように、
- 石けんが髪内部に入り込み、繊維を傷める
- 髪が軋み傷みやすいので、切れ毛や抜け毛の原因になる
- 酸性リンス剤を使用するも、アルカリ全ては取り除けない
が挙げられます。
石けんは、昔から生活に密着していたからでしょうか、漠然と「優しい」イメージと安心感が根付いているようです。洗浄力が弱いと思われがちですが、それは誤りです。界面活性剤の中でも、洗浄力が強く、脱脂力も高いのです。
石けんシャンプーは、頭皮への悪影響はありませんが、頭皮が未熟な状態で繰り返し洗髪すれば、逆効果になります。角質剥がれのスピードが速くなって、フケ(角質)や痒み、脂漏性皮膚炎等の発生に繋がります。
頭皮や髪のことを考えて、石けんシャンプーを使っているはずなのに、これでは本末転倒です。
石けんシャンプーが適しているのは、髪の短い男性や子どもでしょう。
ボディソープで身体を洗ったついでに、頭も洗う……といった感じで済ませてしまってもOKです。坊主頭やすごい短髪であれば、専用リンスの必要もありません。髪の毛は傷むまもなくすぐに伸びてくるし、また直ぐに短くカットするからです。
でも、女性の髪は短くても20~30cmあり、少なくとも2~3年は、良い状態をキープしなければいけません。デメリットの多い石けんシャンプーを毎日使うというのは、将来の髪を考えると、あまり賢い選択とは思いません。
では、どんなシャンプーを使用し、どんなことに気をつければ良いのでしょうか?
シャンプーの選び方と洗い方
頭皮や髪のことを考えるなら、洗浄力控えめの「アミノ酸系洗浄剤」を使用したシャンプーがお勧めです。毎日洗髪しても洗い過ぎにならず、安心です。
そして、洗うときは頭皮ではなく、髪だけを泡でフワフワ洗うようなイメージで行います。よく「指の腹で頭皮をマッサージするように、洗いましょう」とありますが、このように聞くとたいていの人が、頭皮をゴシゴシしがちです。こんな洗い方では、頭皮が傷み、洗い過ぎ・角質の剥がれの弊害が出てきます。
頭皮に対して、指の腹は触れるか触れないかくらいの軽~いタッチでよいのです。清潔は保たれますし、髪の毛を洗う刺激が伝わるだけでも、頭皮にとっては十分なマッサージなのです。
普段お使いのシャンプー、洗髪時の力の入れ方などから見直してみましょう。フケの出ず、毛穴もきれいになり、切れ毛や枝毛のない髪が育ちます。将来の細毛、薄毛、禿げ対策になります。
- 石けんシャンプーは頭皮には良いが、髪は傷みがち
- アミノ酸系洗髪料で髪だけ洗ってるつもり……がベスト
編集後記
石けん神話というか、石けんが優しいというイメージは多くの方が持っているようです。
なので、肌にも頭皮にも優しい♪と思いがちですが、ちょっと意識が変われば、製品選びも変わってくるのですね。
「サッポー美肌塾」第367号
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