稗粒腫(はいりゅうしゅ)、汗管腫(かんかんしゅ)など、あまり聞き慣れない名前ですが、どちらも実はよく見られる肌トラブルの一つです。
どちらも目の周り、特に目の下に発症することが多く、痛くも痒くもなく、赤みが出て炎症を起こすわけでもありません。大きさは稗粒腫で1~2ミリ、汗管腫は1~3ミリくらいのブツブツです。ところが、いつまで経ってもなくならないものだから、気になって仕方がないというのが特徴です。
化粧も上手く乗らなくなるし、遠目だとわからないようにも見えますが、鏡を見ると次第にみっともなさが募ってきて、何とかならないかと様々にいじり始めます。いじっていると赤く炎症を起こすこともあり、よいことは一つもありません。
そればかりが、数個だったのが、10個になり、20個になり…と増えることもあります。しかも、減ることはありません。
……と、このような無害だけどやっかいなブツブツなのですが、その実態と、解消法・予防法を知っていただくことを今回のテーマにします。
稗粒腫と汗管腫の見分け方
見た目はよく似ていますが、少しだけ違いがあります。
- 稗粒腫
-
- 1~2ミリのポツポツ(膨らみ)
- ポツポツの中心に白い粒があるように見える
- 触ると硬いものが詰まっているブツブツした感触
- 目の周り、特に目の下に多いが、どこにでも発生しうる
- 痛くも痒くもなく、赤みもない
- 汗管腫
-
- 1~3ミリの扁平な盛り上がり
- 盛り上がった部分に肌色の違いはない
- ブツブツ感(硬さ)が無く、触った感じは周囲の肌と変わらない
- 目の周り、特に目の下に多いが、どこにでも発生しうる
- 痛くも痒くもなく、赤みもない
稗粒腫の原因と解消法
稗粒腫の方が小さく、名前の通り、まるで稗(ひえ)粒が埋め込まれたように見えますが、この粒、実は角質なのです。角質はターンオーバーに伴い、毎日垢として排泄されているはずですが、これが不思議なことに表皮内に排泄されて溜まったというのです。
しかし、なぜこのようなことが起こるのか、その原因はよくわかっていません。
原因は判らずとも、元通りの肌に戻ればいいのですが、その対策・解消法は何もしないこと……つまり、「いつも通りのケア」で良いというのが正解なのです。早ければ数ヶ月で自然になくなります。下手なことはするな!というわけです。
ところが、中には1年経過してもなくならない、もう何年も居座っているというケースが見られます。これは、「いつも通りのケア」がよくないと判断しなければなりません。表皮内の異常ですから、正常なターンオーバーが何回か繰り返されるとよくなるはずです。それがよくならないのは、ケアのどこかに大きな間違いがあります。ここでは詳しく解説しませんが、当美肌塾から探してみましょう。
数ヶ月とか、1年なんて、とても待ってられないという方は、皮膚美容に理解ある形成外科を受診しましょう。多分1回の施術で粒々を取り除くことができます。施術跡もまもなく消えるでしょう。
でも、再発させないように、スキンケアは必須ですよ。
サッポー美肌塾のバックナンバーにもう少し詳しく解説したものがあります。参照ください。
それでは、汗管腫はどうなのか? これは、まだサッポー美肌塾では解説しておりませんでした。
見ていきましょう。
汗管腫の原因と解消法
「原因と解消法」としましたが、残念なことに稗粒腫に輪をかけて、そもそもの原因は謎です。しかも自然に治ることはありません。
でも、扁平な膨らみを作る原因は判っています。汗腺の元は皮膚の最深部にあり、そこから汗管が真皮層~表皮層を貫いて伸びています。汗管は汗を運ぶ器官なのです。ところが、なぜか、この汗管が途中でたくさんの枝を作り、そこに汗が溜まります。これが扁平な膨らみとして表皮に現れます。つまり溜まった汗で盛り上がっているだけで、表皮には何も異常がないのです。
このような成り立ちですから、いじって潰そうなんて、甚だ見当違いなのです。スキンケアで解消されることはありません。
今開発されている汗管腫の有効な治療法は2種類あります。
一つはレーザーで枝を張った汗管を熱で破壊する方法です。ダメージも少なく、跡が残ることも少ないのですが、残念なのは再発する可能性が大いにあることです。
もう一つの治療法は、該当する汗腺に針を刺して、高周波を伝えその熱で汗腺を弱体化する治療法です(Agnes アグネス)。施術も簡単で早く、表皮のダメージはほとんどなくて済みます。すぐに化粧も開始できるので、人気があるようです。
ただし、レーザーのように即効性はありません。3~6ヵ月くらいかけて膨らみが消えていく過程を辿ります。時間をかけて、膨らみを作っていた枝が消退していくからです。そのためか再発はうんと少ないようです。
現在のところ、薬はありません。遺伝が原因ともいわれますが、確たる根拠はありません。
いかがでしたか。
もし、このようなトラブルに見舞われたら、とにかくいじったりせず、よく観察することです。
稗粒腫なら、スキンケアで自然治癒を目指すか、手早くは形成外科のお世話になります。
汗管腫なら、諦めるか、それともやはり、形成外科のお世話になることが順当でしょう。
そして、強調しておきたいのは、肌が育つケアの考え方です。健全なバリアー(角質層)に守られていたら、このようなトラブルに巡り会うことも最小限に抑えられると、サッポーは信じています。
- 稗粒腫と汗管腫を見分ける知識を持ち、解消法を選択する
- 予防法として、肌が育つケアの知識蓄積と、日々の実践
編集後記
表情が出たり、よく人にも見られる目、その目の周りにブツブツがあれば、気になって、つい手で取りたくなる……
でも、解決法は何もしないこと!もしくは、皮膚科へ!つまり、自己処理はしない!なんですね。
「サッポー美肌塾」第643号
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