ビタミンCは美容ビタミンと呼ばれる栄養素です。肌と関係が多いビタミンであることに間違いはないのですが、口から摂取するのではなく、肌に直接つけ浸透させることでその成果を期待する傾向が高くなっています。
ビタミンCは口から摂取した方が良いのか、それとも肌からか……こんな質問がありました。
最初に答えを言いますと、ビタミンCは人体にとても有益な微量栄養素の一つ、本来は食べ物として摂取していくのが順当です。人体すべてにおいて使用されるビタミンであり、もちろん肌においても重要な役割を果たしています。
一方、肌からとなるとこれは厳密には摂取とは言えません。実際にビタミンCが配合された化粧品を肌につけても、バリア層(角質層)がその侵入を許しません。肌表面に塗っているだけ、ということになります。
化粧品成分としての、ビタミンCには抗酸化作用がありますが、紫外線に当たるとすぐに効果はなくなってしまいます。
しかし化学の進歩によって、「リポソーム」という脂質のカプセルが開発され、中に医薬品や化粧品成分を入れることで、肌内部に届けることが可能になりました。これにビタミンC誘導体※を包めば、ビタミンCもバリア層を通過させることができるのです。
この技術自体は、素晴らしいことなのですが、無理矢理肌内部に物質を侵入させるのですから、弊害もあります。それはどんなことか……見ていきましょう。
ビタミンC誘導体とは
ある物質をくっつけ、ビタミンCが酸素と結合しないように加工したもの。バリア層を通過後、その物質が外れたら、ビタミンCとして働く。
例えば、美白化粧品
よく利用されるのは、美白効果のある化粧品です。こういった製品は医薬部外品や薬用扱いになっています。
リポソームに包まれて侵入したビタミンC、これは肌にとって異物であることに違いありません。生体防御機構が働き、貪食細胞がビタミンCを食べてしまいます。それでもその間、ビタミンCの還元作用により、表皮内にあるメラニンを無色化することが可能なのです。
すると見た目には、シミが消えたように見えます。でも、重要なのはメラニンが無くなったのではなく、漂白されただけ、ということです。メラニンはやがて角質と一緒に排泄されるまでは存在を続けます。
一方、このことを肌の立場で見てみましょう。
「身体を守るためにメラニンを作っているのに、無色化されたら、紫外線の侵入は防げない……シミは消えたように見えるかもしれないけど、それでいいの?」
このような肌の声が聞こえてきます。
シミとは、メラニンが表皮に異常に多くある状態です。肌の危険を感じたメラノサイトが肌を守るために、せっせとメラニンを作り出した結果です。実際にシミの部位は紫外線防止能が高く、細胞やDNAの損傷が防止されます。
ビタミンCを肌に侵入させる行為は、ダメージから肌を守るためのメラニンの機能を、意味もなく奪ってしまいます。色は白くなっても、ダメージはより多く受け入れてしまうのです。
それだけではありません。ビタミンCの侵入により、肌の生体防御能が働きます。これが過剰であれば、肌は炎症を起こして、肌を守ろうとします。炎症を起こせば、新たなシミの原因にもなるでしょう。
薬のように、ある成分を肌に侵入させ、特定の働きをさせることは医学面において大いに期待できます。でも、スキンケアにおいてはどうでしょう。荒技というか、何かおかしいな?と思わせる技術の応用です。
ビタミンC誘導体が肌の色を白くする効果は認められていますが、本来の健康や美しさにとは対極にあります。
正しい美白とは、肌が受けるダメージを少なくすることです。そうすれば、メラノサイトが安心し、メラニンの生産も少なくなります。すると、色は白くなるだけではなく、健康や美しさを伴っていくのです。
美肌塾の読者の皆様には、この方向を目指していただきたく思います。
ビタミンC配合の化粧品は?
上でも少し触れましたが、「リポソーム」の技術を使わずに、ビタミンCを成分として配合した化粧品もたくさんあります。こちらは医薬部外品ではなく、通常の化粧品扱いです。
- ビタミンCは、肌のハリや弾力を作るコラーゲンを作るのを促進する
事実ですが、肌につけたビタミンCが機能するわけではありません。これは、あくまで真皮層で行われる働きです。
他にも、ビタミンCは……
- 抗酸化作用・還元作用でニキビを防ぐ
- ホルモン分泌への作用が皮脂分泌を抑制する
等々、言われます。
しかし、決して肌につけることによって、ニキビや皮脂に影響するのではありません。ニキビやべたつきへの基本は、角質(層)の質と構造を変えていく、肌を育てていくことです。
いかがでしたか?
ビタミンCでもっとも注目すべきは、体内で様々なタンパク質を作るのに欠かせない栄養素としての働きです。肌細胞も様々なタンパク質によって構成されています。コラーゲンもその一つです。
ビタミンCは、食事からしっかり取るようにしましょう。足りない時は、サプリメントも利用するといいですね。
- 肌内部へのビタミンC導入、スキンケアの観点からは危険
- ビタミンCは人体に不可欠な栄養素、摂取は食物から
編集後記
身近なビタミンCであり、良い効果も私達はよく知っています。「肌に塗れば良い効果が…」と考えるのも自然なことなのかもしれません。
肌に塗るだけならまだしも、ビタミンCの良いイメージと還元作用を利用して、肌内部に届けるのは危険を伴います。素晴らしい技術ではあるのですが、スキンケアに取り入れるのは「……」ですね。
「サッポー美肌塾」第92号
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