皮膚が何かと擦れ合う、その程度が大きいと摩擦による弊害が肌に現れます。
顔をゴシゴシ、洗ったり擦ったりしてはいけないことは、皆さん常識的に分かっています。でも、思いもよらない所にダメージが潜んでいることがあります。
今日はこのような摩擦ダメージについて解説していきます。生活場面を思い出しながら、読み進めていきましょう。
摩擦ダメージが引き起こす弊害
シミやくすみ
ナイロンタオルを浴用に常用していて、身体にシミやくすみを作ってしまうことがあります。骨が出っ張っているところが、より強くあたるので黒ずんでくる……あの現象です。
これは極端な例ですが、顔に置き換えると、透明感を失ってくすんだ肌を作ります。顔をタオルでゴシゴシ洗う人はいないでしょうが、何気ない行為で摩擦は起こっているものです。
摩擦による刺激を受けると、表皮下層にいるメラノサイトが損傷を受けます。するとメラノサイトは、動きを活発化させ、メラニンの生産量を多くします。
これがくすみになり、酷い場合は、シミになります。
角質剥がれ
手指で例えて考えてみましょう。事務作業などで紙を触る機会が多いと、手指はしっとりさを失い、一枚の紙でさえ選別することが困難になります。
これは摩擦によって皮脂と水分が奪われることによりますが、問題はその後の現象です。
皮脂と水分が奪われると、角質は簡単に剥がれるのです。
手指のように角質層が50~60層もあるようなところで、これだけの影響が出るのですから、顔のように数層から十数層しかない場合は、軽い摩擦でもかなりの影響を受けます。
このように、摩擦によって角質剥がれが促進されるのなら、乾燥肌、肌荒れ、オイリー肌、そして敏感肌……と、肌が変化するのは不思議ではないということです。
上の例のように、摩擦の力は角質そのものを剥がしたり、メラノサイトを刺激したりします。つまり、乾燥や紫外線ダメージが肌に与える影響と同じ要素を持っているのです。
しかし、乾燥や紫外線のようにあまり意識する習慣がありません。最大の問題はここにあるように思います。
「ダメージを受けて、肌が嫌がっていても気がつかない」
これが摩擦ダメージの恐い特徴です。さらに、具体例を挙げてみていきましょう。
何気なく行っているスキンケアに潜む摩擦ダメージ
パフによる摩擦
パウダーファンデーションをつける時、パフでぎゅっと押さえたまま、肌の上を滑らせていませんか?これは、肌を擦っているのと同じです。
正しい方法は……押さえて・弛めて・軽く滑らせるの繰り返し、です。
一生懸命擦らないと付かない、などといっていたら、ますます硬い肌になり、いつになっても軽いタッチでファンデーションのパウダーがピッタリとフィットしていく肌にはなれません。
コットンによる摩擦
コットンで化粧水をつけている方も多いと思います。その際に、擦らないよう、パッティングしながらつけていませんか?一見、正しいように見えますが、残念ながらそうとは言えません。
優しくしているつもりでも、コットンそのものが肌よりも硬い繊維であることには違いありません。パッティングするときには摩擦が生じています。使用するなら、軽く押し当てるだけにしましょう。
でも基本は、コットンよりも手指でつけましょう。肌に触れるものとしては、最も優しいツールとなります。
また、コットンをメイクや洗顔前の拭き取りに使用するのは、摩擦ダメージそのものです。角質を直接剥ぐことに繋がります。優しくしているつもりでもかなりの負荷がかかっています。拭き取りそのものをすべきではありません。
フェイスブラシによる摩擦
あんなに柔らかいのに摩擦?と思われるかもしれませんが、極端に言うと、たわしで乾布摩擦しているようなものです。まるでブラシ類は一切使うなと言っているように聞こえますが、そうではありません。たわしにならない注意が必要なのです。
フェイスブラシには動物毛が使用されますが、この毛は肌の角質と同じケラチンです。しかし、柔らかく見えて、実はとても硬いケラチンで、一円アルミ貨と同じぐらいの硬度を持っています。細くて弾力があるので硬さは感じないだけなのです。
でも、便利なツールですから、全くなしでは困ります。弊害を避ける秘訣は、道具選びと使い方にあります。
フェイスブラシには様々な種類がありますが、安価なものは避けた方がよいでしょう。また、毛足も柄も長いものを基本とします。使用目的により毛足の短さが要求されるものは細さを大切にします。
毛先を肌に引っかけない使い方は、少し寝かせて寝かせた方向にブラシすることです。
角質層の薄い目の周りに使用するブラシは、細かい作業なので毛足は短くなっています。コシが強いため、力が入るとみごとに角質を傷つけたり剥がしたりしています。目の周りの老化・劣化はよく見られる現象で、その原因は様々ですが、ブラシが一役買っている場合はかなり多いのです。
洗顔や入浴時、タオルやスポンジと肌の摩擦
洗顔ブラシや洗顔パフは、論外ですが、洗顔や入浴時にも摩擦が潜んでいます。
洗顔や入浴の時、肌は水分を含み柔らかくなります。肌と言うより、正確には角質が柔らかくなっているわけです。乾くとほどよい硬さの肌となるわけですが、濡れている時は全く異なるもの……くらいの認識が必要です。
例えるなら、乾いた紙と濡れた紙の違いです。乾いた紙を指先で擦ってもびくともしませんが、濡れた紙をグリグリすると簡単に穴が開きます。
こんな状態ですから、いくら優しい表記があっても、洗顔ブラシや洗顔パフの使用がとんでもないことはよく判りますね。
でも、洗顔や入浴時の必需品、タオルやスポンジの使い方はどうでしょう?
「摩擦しないで、どう使えと言うの?」という声が聞こえてきそうです。
分かりやすいところでいうと、身体、例えば背中の洗浄は、タオルの両端を持ったり、スポンジを持った腕を伸ばして、ゴシゴシするのが一般的なのでしょうね。
背中は、顔ほどではありませんが、比較的皮脂腺が発達している場所なので、ゴシゴシと角質を落とされると、皮脂が活発化してきます。中には皮脂詰まり、背中のニキビを作る人も出てきます。
顔であろうと身体であろうと、肌の洗浄においては最低限の汚れさえ落とせばよいのです。角質は自然にはがれていくにまかすのが、最上の方法なのです。
決して、必要以上に角質を取り除く原因を作ってはなりません。
- 肌の洗浄(洗顔)は手指で行うのが原則
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顔の洗顔には、手指一択です。それ以外はあり得ません。
身体の場合も、基本は石けんの泡をクッションに手指で洗います。
やむを得ずタオルを使用するなら、意識して、優しく滑らせるだけにしましょう。「ゴシゴシしないと物足りない」などという感覚は肌の為に捨てて下さい。 - タオルで拭くのではなく、吸い取る
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濡れた肌、水分で柔らかくなった角質層より柔らかいものはありません。
肌にタオルを優しく押し当て、水分を吸い取るのが角質を傷つけない方法です。。さらに、肌に優しいタオルも多く出回っていますので、捜してみましょう。
いかがでしたか?
今回は身近にある「摩擦」、特に道具について詳しく解説しました。思い当たるところが見つかりましたか?
見つかれば、今日から正していきましょう。
- 摩擦ダメージも様々な肌トラブルの原因となり得る
- 肌に触れるものは、手指が一番優しいツール
編集後記
肌を擦ったり、掻いたり、引っ張ったり…と手指で行うと罪悪感がありますが、洗顔○○という道具があれば、なんだか却って良いような気すらしてしまいます。
汚れが取れたとしても、それはごっそり、肌ごと取れていると言うことです。究極の摩擦ダメージですよね(^^;)
「サッポー美肌塾」第165号 / 2004年3月26日 発行
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