「緑の黒髪」
今ではあまり使われなくなりましたが、女性の生き生きとした艶のある黒髪、深みのある緑の輝きを放っている様子を表した言葉です。
日本人の黒髪はメラニン色素が多く、紫外線ダメージにも比較的強いのが特徴で、傷みが少なかったために、このような言葉ができたのでしょう。
ところが現在では、カラーや白髪染め、パーマ、縮毛矯正などが当たり前で、髪が傷む原因とはいつも隣り合わせです。
以前の講義「傷んだ髪は修復されない!?」で、髪の構造と傷みについて紹介しました。
今回はその続きとして、具体的な髪の傷み対策、トリートメントによる補修ケアやコンディショナーによる保護ケアについて見ていきます。
髪の作る3つの透明なケラチン
具体的なケアの話の前に、なぜ髪の傷みに補修・保護が必要なのかを解説しておきます。
「傷んだ髪は修復されない!?」の講義では、髪は
- 髪内部は縦に伸びた透明なケラチン繊維の集まり
- ケラチン繊維間を満たす透明な流動体ケラチン質
- 繊維と流動体のケラチンを守る透明なキューティクル
の、3つで造られていると案内しました。
それぞれ形状は異なりますが、全てガラスのような透明なケラチン(角質・タンパク質)で作られています。これらが良い状態であれば、髪は水分をたっぷりと保ち、しなやかで強く、美しい光を放ちます。
ところが、傷つくと髪は弱くなり、不透明になります。透明なガラスに擦り傷がつけば、その部分がスリガラスのようになるのと同じです。
透明さをなくした髪は、光が映えず美しさを失います。でも、それだけではありません。この傷みは徐々に広がっていくのです。
髪は簡単に壊れて傷み、綻びは広がっていく
髪表面を覆う3.のキューティクルは硬くて強いのですが、脆い性質も持ち合わせています。
カラーやパーマだけではなく、日常の髪の扱いでもすぐに傷みます。たとえば、ドライヤーの熱が高いと変形するし、強めのブラッシングでも簡単に欠けてしまいます。
濡れているときは特に弱く、泡立ちの悪いシャンプーやゴシゴシ洗いなどでキューティクル同士が擦れ合えば、傷つき欠けていくのです。こうしてキューティクルは傷んで綻び、髪を不透明にしていきます。
キューティクルが綻べば、2.の流動ケラチンが流失します。
流動ケラチンには保水力があるため、流失すれば1.の髪内部の乾燥が進みます。乾いたパサついた髪は柔軟性を失い脆くなり、枝毛や切れ毛が現れます。
このようにして、髪全体の透明性が失われていくのです。
さらに困ったことに、髪の綻びが1つできると、さらなる綻びを呼びます。何もせず放置していると、どんどん拡大していく一方です。
髪は生きた細胞ではないため、傷んでも自らを修復することができません。だから私達が補修し、まもらなければいけないのです。
スタイリング剤では出せない「髪の透明感」
傷んだ髪をキレイに魅せるには、スタイリング剤が手軽です。しっとり感やツヤを与えたり、落ち着かせたり、ボリューム感を出すなど。
しかし、このようにして作られたキレイは表面的なものに過ぎません。髪が本来もつ透明感のある美しさではないのです。
では、髪の綻び(傷み)を止め、透明感を持たせるためには、どうすればいいのでしょうか。
それは、
- 流失した流動ケラチンを補い、
- 髪内部のケラチン繊維の水分を保ち、
- その状態をキューティクルの上からまもる
ことです。
ここで重要な役割をするのが、トリートメントとコンディショナーです。
トリートメントとコンディショナーの役割
優しく洗髪して汚れを落としたあとは、髪の傷みをトリートメントで補修し、コンディショナーで保護します。毎日のホームケアで髪の健康は作れるのです。
トリートメントは、髪内部にケラチン物質類似成分(タンパク質)を補給し、髪内部の保水性を高めます。このことにより、髪の損傷進行がストップし、強さと透明性がアップします。
一方、コンディショナーは、髪のキューティクルを整えコーティングします。キューティクルの透明性を高めるのと同時に髪のまもりを強化します。
これらのケアで髪の水分は増し、透明さを取り戻します。しかし、補修・保護しても、洗髪すると洗い流されるので、その都度やり直す必要があります。
髪のよい状態をつくることで、頭皮や髪を生み出す毛母細胞も守られ、新しく生えてくる髪が健やかになるのです。
トリートメントは髪の傷みに合わせて
コンディショナーは基本的に洗髪ごとにしますが、トリートメントは毎回である必要はありません。髪の傷みの程度によって調整しましょう。
髪の傷みがひどければ、いくらコンディショナーで保護していても髪内部の流動ケラチンの流失が早くなり、髪の綻びが進行していきます。
パーマやカラーをしている人や、していなくても少し傷みを感じている人は、少なくとも週2回。枝毛や切れ毛など損傷が激しい場合は、洗髪ごとに毎回するのがベストです。
逆にショートヘアなど、傷みをあまり感じていない髪なら、損傷予防・美髪維持のために週1回も行えば十分と言えます。
またシャンプーの後、トリートメント → コンディショナーの順番で行います。洗髪、補修、保護の順です。
トリートメントには補修にプラスして少し保護の役割もありますから、シャンプー+トリートメントで済ませてもかまいません。
但し、早く美髪を目指したい人や乾燥や傷みがひどい人は、コンディショナーまで行った方が髪の保護力は高まります。このような関係ですね。
いかがですか?
光に映える「緑の黒髪」への道筋がイメージできましたか。
髪は育てば育つほどに健康で美しい髪になっていきます。一度生えた髪とは年単位の長い付き合い、毛母細胞とは一生の付き合いですから、毎日の積み重ねが大切なのですね。
毎日のホームケアだけで美髪が維持できるのが理想です。その上でスタイリング剤を上手に取り入れて、おしゃれを楽しみましょう。
- 髪の3つのケラチンが髪の透明度や保水性を左右している
- 傷んだ髪を補修&保護!ホームケアで健康な美髪に
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