セラミドの麗しき誤解 ~細胞間脂質とラメラ構造とは~

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セラミドという言葉を聞いたことがあると思います。肌にある脂質の一つですが、角質層をタイルの壁にたとえて、タイル同士をくっつけ固定している目地に相当するのがセラミド等の細胞間脂質です。この構造のおかげで角質層がしっかりとしたものになり、乾燥などから肌を守るバリアーとして機能するのです。

このため「セラミドが使われていたらとにかく良いに違いない」といった短絡した理解が多くなり、セラミド神話が一人歩きするようになりました。サッポーのスキンケア相談室にも時々セラミドについての問い合わせや相談を頂戴します。

セラミドの功績は、今日案内する「細胞間脂質」と、その「ラメラ構造」の重要な働きを私達に知らしめたことだと考えます。大切なのは「細胞間脂質」と「ラメラ構造」のことをもう少し詳しく知り、健康な美肌を作り、維持するために役立てていくことです。

細胞間脂質=セラミドではない!

私達の身体は角質の層で覆われて守られています。表皮細胞がターンオーバーの過程で変化した完成品が角質ですが、この角質が層をなして積み重なったものが角質層です。

私達の身体を守るバリア層として働きつつ、健康な肌、丈夫な肌、美しい肌、透明感のある肌……イヤイヤそうとばかりもいえません……乾燥する肌、ベタベタする肌、くすんだ肌として不満を募らす肌等々、私達が目にする肌でもあるわけです。

この角質層の厚さはわずか0.02mm程度とされています。1ミリの50分の1です。この微細な厚みの中に角質の細胞層が十数層もあるというのですから、角質一層分だけだと、もう目に見えないような厚みです。

ところがこの超薄い角質層なのに、多少カサカサ・ザラザラした肌になっていても、あるいはベタベタして困る肌であったとしても、柔軟でしなやかに様々な動きに良く耐え、信じられないような強靱さで、バリア層として私達を包んでくれています。

しかも、小さな異物や雑菌・汚れ、あるいはまた化粧品の様々な成分が、生きた表皮細胞に侵入することを防ぐべく、緻密に地道に働いているのです。

角質層と細胞間脂質のイメージ角質層と細胞間脂質

この不思議な強さを実現しているのが角質層であり、わずかな水分を含むしなやかなケラチン(タンパク質の一種)でできた角質細胞がその構成単位です。そして、これら角質細胞同士を繋いでいるのが細胞間脂質です。異物の侵入を許さない、しなやかなバリア層としての能力を補完しています。

セラミドは、この細胞間脂質を構成する脂質の一つです。まるで細胞間脂質は全てセラミドできているようなイメージが拡散していますが、そうではありません。

細胞間脂質のラメラ構造

細胞間脂質が柔軟さを持つ接着剤として働き、角質層をしなやかなバリアーとして成立させていると学びましたが、どうしてこのような都合のよい機能を果たしてくれるのでしょうか?

脂質といえば、マーガリンやバターのような固形の脂です。ところが角質を結びつけている細胞間脂質は少し異なった構造をしています。セラミドをはじめとした数種の脂で構成される脂質の層と、水分の層がいくつも重なる、非常に精緻な構造をしているのです。

これをラメラ構造と呼び、バリア層の美しさと強さの鍵を握っています。

細胞間脂質のラメラ構造イメージ細胞間脂質のラメラ構造

水分層と脂質層が交互にあり、しかもそれが幾重にも重なる形で角質と角質の間を埋めることで、緻密な柔らかさを持ち、かつ何者をも通さぬ鉄壁のバリアーとして働いています。

比熱の高い水分層が加わることで、熱さ(暑さ)・冷たさ(寒さ)に対しても優れた緩衝材となり、肌に強い刺激が伝わらないようにしており、肌の過敏な反応を抑制しています。皮脂や汗の分泌も安定する仕組みです。

大したものですね。一つ一つは特別ではない物質の集まりに、肌の持つしなやかな強さと、美しさの秘密が隠れていたというわけです。

強靱な性質を持つ角質層、細胞間脂質の弱点

素晴らしい機能を備え、私達の身体を守ってくれている強いはずのバリア層(角質層)ですが、案外簡単に壊れてしまう弱さを持っています。弱点があるのです。この弱点を知り、カバーしてあげるのが私達肌の持ち主の役割であり、美肌を作り、維持する秘訣といえます。

弱点その1:汗浸し、水浸しになって肌がふやける

長風呂すると、足裏や手のひらが白っぽくふやけた経験があると思います。これは足裏や手のひらが皮脂が出ず、角質層の超厚いためです。
しかし顔や身体の肌には皮脂が分泌され、皮脂膜というもう一つのバリアーで守られているので、そう簡単にふやけないしたたかさを備えています。

ところが長風呂どころではない、1時間も2時間も汗が滲んだ肌で過ごしているとどうなるでしょう。夏場や運動しているときなど、数時間その様な状態が続くことだってあります。

こうなると皮脂膜は解けて流され、簡単に水分が侵入してラメラ構造を崩し始めます。これは意外な弱点ですね。

おまけに、顔や身体の肌は足裏や手のひらのように角質層は厚くないので、ふやけても、白っぽくは見えません。しかし、実際は水浸しになってふやけ、ラメラ構造は崩れてしまっています。

こうなると、角質層は崩れやすくなり、角質は剥がれやすくなって、ターンオーバーが速まります。育ちの悪い角質が急ぎ送り出されるようになります。

弱点その2:熱い湯はラメラ構造を崩しやすい

お湯も40℃付近から皮脂や脂質を溶かす能力が高くなります。お風呂も40℃といえば、ちょうど良い湯加減といったところですが、長風呂すると、まず皮脂膜が溶けて流され、次に細胞間脂質が溶け始めます。だから、10分も浸かればもう充分、と湯船から出るのをルールにしましょう。皮脂膜は皮脂分泌により再生されますが、細胞間脂質のラメラ構造は再生されません。

15分、20分は浸からないと気が済まない人は、もう少しぬるめのお湯に入ることです。半身浴を真似て38度くらいにすると、安全です。

シャワーや洗顔時のお湯の温度は、41度を超えていても平気な人が多いので、注意しましょう。熱いおしぼりも同じ弊害があります。

熱い湯は、弱点その1の、汗浸し、水浸しと同じ崩れ方をすると知っておきましょう。

弱点その3:物理的な力が加わるとラメラ構造は崩れやすい

肌に物理的な力が加わるケースとは、次のようなものをいいます。

肌に加わる物理的な力とは?
  • 汗を拭く
  • 顔を洗う行為
  • パフを使う
  • ブラシを使う
  • コットンを使う
  • スポンジを使う
  • タオルを使う
  • 鼻をかむ
  • ほおづえをつく
  • 痒いところを掻く
  • マッサージをする
  • あぶらとり紙を使う
  • ……etc

これらの行為がいつも悪いわけではありません。力の加減とタイミングによっては、細胞間脂質のラメラ構造を崩すのに十分な作用となっています。

あなたは、上のような肌との接点を、いつも優しくしている自信がありますか?
これらの行為が、汗浸し・水浸しになったタイミングで行われていたら?

余り念を押すと嫌われそうですから、これくらいにしておきますが、自分の場合をよく想像してくださいね。

ふやけた角質層の危うさ、崩れやすさ。何となく意識できるようになりましたか?

最近では、ラメラ構造を備えたセラミドなどが開発されて、これなら崩れ壊れた細胞間脂質も再生されるのでは?と思わせる商品も登場しています。

ですが、細胞間の脂質に置き換わるわけではありません。肌の乾燥保護に役立つ乳液やクリームのようなものです。

角質細胞間を満たすラメラ構造は肌自身がターンオーバーの過程で営々と創り上げたものです。細胞間脂質がしっかり作られる、肌が育つターンオーバーをこそ目指すことにしましょう。

※セラミドについての参考リンク:
「コラーゲン!!コエンザイムQ10!セラミド!!Part-3」

今日のサッポー美肌塾まとめ

  • セラミドは細胞間脂質を構成する脂質の一つ
  • 細胞間脂質のラメラ構造が持つ、強さと脆さを知る
黒板に注目!

「サッポー美肌塾」第281号 / 2006年8月30日 発行


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