読者の“I”さんより質問をいただきました。
サッポーが「角栓を取り除いてはいけない!」と、事ある毎に言ってるからでしょう。肌にとってお邪魔虫だったはずの角栓がポロリと取れた、そのことが不安になったそうなのです。
「角栓が取れた、嬉しい!」と喜ぶべきか、「角質を剥がしてしまった!」と嘆くべきなのか、まるで正反対です。大切な言葉はきちんとお伝えしないと、間違って伝わることもあれば、不安を生み出すことだってあるんですね。
角栓ができる肌にとって、今日の講義は大切です。
ムリに取り除いた角栓 ←→ 自然に取れた角栓
“I”さんのご質問・相談
角栓についての質問です。絶対に取ってはいけないということなのですが、クリームやファンデーションを塗っているときに、ふと取れてしまった場合は、無理に取ったことになるのでしょうか。
またその時に何か対処をすることはあるのでしょうか。
“I”さんに限らず、角栓に関し、このような質問をよくいただきます。サッポーの説明が舌足らずで、不明な部分が生まれ、不安を作りだす……申し訳ないことです。
“I”さんの角栓は取れて良いのです。自然に取れる範囲で取れていくのが、無難な取れ方であり、肌が育つブレーキとならない取れ方です。角栓は角質の集合体、角質は大切にすべき肌そのものであり、本来は毎日取れていくのが自然なのですからね。
でも、この説明でもすっきりしませんね。自然に取れると言っても、“I”さんの場合、ケアする時の力が加わっているわけですから、自然にとは言えない場合もあるのでは?……と、このように、いくらでも疑問と不安の種は次々と現れてくるというわけです。
判断する材料(知識)が十分に提供出来てないからですね。
というわけで、今回は“角栓”についてもう少し詳しく見ていくことにしましょう。
角栓と毛穴の詰まりは同じ?
そもそも“角栓”とは何を指すのでしょうか?ただの皮脂詰まりを角栓と誤解している方もいます。毛穴の黒ずみのことを角栓といってる人もありました。
角栓についての定義が曖昧なままに、便利な言葉として利用されているようです。なんでも角栓という悪者に責任を負わせておけば、何となく納得できる……からでしょうか。誤解と混乱を避けるため、“角栓”の認識を共通化しておきたく思います。
角栓とは?
角栓とは毛穴部分の剥がれかけた角質達のことです。カサカサした肌や、粉をふいた肌、皮むけしてる肌、これらも同じ剥がれかけた角質達です。でも毛穴部分の角質達だけは、特別に角栓と呼ばれています。
毛穴の剥がれかけた角質達に皮脂や化粧品の油脂がつき、酸化し、それでも剥がれずに、やがて新しく剥がれそうになる角質が加わり大きくなっていきます。これが硬い突起物のように感じたり、お風呂にはいると白くふやけてフニャフニャした汚れのようにも見えます。
これは、角質が髪や爪と同じ材質、ケラチン(蛋白質)でできており、乾いて縮むと、とても硬く、ガサガサ・ざらざらした触感になり、水を吸うとふやけてフニャフニャになるからです。このような角質に、汚れ・皮脂・化粧等が付着すると、毛穴に栓の役割をし、皮脂を滞留・詰まらせるものに成長していきます。毛穴の角質が角栓と呼ばれる理由です。
角栓が出来る原因は?
毛穴壁の表皮細胞が未熟化していることがそもそもの背景であり、原因となっています。
未熟な細胞は未熟な角質となり、バリアー能力が低い肌を作ります。
- 乾きやすく、乾くと縮んで剥がれかける
- 自ら剥がれる能力が不足し、剥がれそうで剥がれず毛穴付近に留まる
- 皮脂や油脂が付着して酸化すると変色、こびりついて取れなくなる
角栓とはこのような角質達がくっつき集団(塊)になったものです。角栓の一部はまだ働いている角質達に繋がっています。クルクルと肌をマッサージして擦ると、摩擦の程度によって、まだ働いている有用な角質達を道連れにゴソッと剥がれていくことになります。
このように、有用な角質が予定より早く剥がれると、準備不足の表皮細胞が未熟なまま角質になって肌を守らざるを得なくなります。こんなことがあると、肌は育つ機会をロスします。
そもそも角栓の発生原因は、未熟で痩せた育ちの悪い角質にあるのですから、ますます悪循環に拍車がかかり、肌の未熟化が進行します。角栓を取り除くほどに、角栓が出来やすい肌になっていくというわけです。
角栓の定義と、角栓が発生するストーリーを解説しました。
日々のケアをしている時に、目立つようになっていた角栓が自然に取れるのは、むしろ好ましいことというべきでしょう。そんなに力が加わらないのに、取れているわけですから、道連れにされる角質も少なくて済んでいるはずです。
避けるべきは、意識して角栓を取り除くことです。
いかがですか。角栓について、正しいイメージ・輪郭が見えてきたでしょうか?
“I”さんのご相談には、まだ続きがありました。
サッポーの優しい洗顔を続けていたら、ホントに角栓はなくなる?
“I”さんのご質問・相談(続き)
それと、私の場合、鼻のてっぺんから鼻の下のほう(鼻の穴の付近)にかけての部分にも角栓ができることがあります。化粧水が塗りにくかったり、保湿しすぎると逆に荒れたりするので、何もつけず少し乾燥してしまうことが多いのですが、それでも手を触れたりせず優しく洗顔をしていたら自然に取れるものなのでしょうか。
よろしくお願いします。
角栓そのものは角質の塊(集合体)なのですが、取れそうになっているのに取れないのは、角質一つ一つが未熟な育ち方をしていたからです。
保湿すると逆に荒れるとありましたが、荒れているのではありません。未熟で硬くなりやすい角質達が壊れずに多く居残っているため、見映えが悪くなっているだけです。何もつけないのはよくありません。保湿も保護のケアも普通にしてあげましょう。今の見映えを気にするのではなく、育った角質になれる環境を作ってあげ、見守る時です。
肌が育つのは優しい洗浄だけではダメです。乾燥するのは肌が育つ環境ではありませんからね。
角栓の出来やすい肌部分は、角質の剥がれるスピードが速いため、表皮細胞が十分に育たないままに、角化して角質を送り出す状態が続いています。このようにして完成した角質には、角質と角質を繋いでいる脂質(セラミド等)の分解酵素が十分に作られていないため、角質層最上層に押し上げられた時、さらりと剥がれていくことが出来ないのです。脂質の働きも荷担して、角質同士が未練たっぷりに繋がっているのです。
保湿ケアや保護のケアで、角質や角栓を大切にすることによって、表皮細胞にしっかり育つ時間が与えられます。やがて育った角質が多くを占めるようになると、角栓そのものの発生がなくなります。角質自らに剥がれていく能力が備わるからです。角質は自然に取れていくのが本来の状態です。
角質(角栓)を取れば取るほど、剥がれる能力が育たないのですね。
角栓が発生する肌の改善策(その場対策でなく、本当の解消を)
炎症に繋がる場合
角栓が皮脂詰まりに繋がり、さらに炎症ニキビに発展するような場合には、やむなく角栓を取り除き、皮脂詰まりを防止することが優先されます。しかし、このような対処を続けている限り、改善はしません。角栓取り(角質剥がし)が表皮細胞の育つ時間を奪うからです。これではいつまでも皮脂詰まりしない肌に育ちません。といって、炎症ニキビに発展するのはもっと困ります。むずかしいですね。この対策にはまた別の視点が必要なので、ここでは触れません。
炎症に繋がらない場合
角栓が出来て、ブツブツ・ざらざらするだけ、炎症を伴わないただの皮脂詰まりになるだけ、といった状況なら、意識して角栓を取り除くことはやめます。その方が肌に育つ時間が与えられ、育った角質が作られるようになるからです。すると近い将来に、角栓の発生しない肌、皮脂詰まりの起こらない肌に着実に変わっていくことが出来ます。
見映えが悪く、気になって仕方ない角栓ですが、取りたくても取らない方が肌の改善は早く進むのです。
肌の未熟化が進行し、悪循環が続くようになっていた肌改善の難しさは、この見映えが悪い状態の肌を、「これで良し」として見守っていくことにあるといえそうです。
解決策は“肌が育つケア”を継続しながら、角栓生成の原因を減少させること…となります。決して一気に解決しようとしてはいけないのですね。
- 1.角栓発生の改善策は見映えは気にせず“肌が育つケア”を継続すること
-
“肌が育つケア”とは、スキンケアの全てにおいて肌が育つ環境を作ることです。(ここでの詳細説明は割愛します)
- 2.角栓生成の原因を減少させる…もう一押しのケア
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夜だけでなく、朝の洗顔前にもサッポーのクレンジングクリームによるクルクルを取り入れる。
洗浄剤の配合されたクリームやオイルでマッサージを行うと角質が取り除かれるので、肌は育ちません。全く逆の結果になるので、注意が必要です。
サッポーのクレンジングクリームには、洗浄力がなく、肌につけるクリームと同じ構造です。酸化皮脂・油脂を減少させながら、角質剥がれを促進することなく、洗い過ぎを防止します。角化する前の表皮細胞に育つ時間を与える対策となります。
- 「優しく洗顔をしていたら、自然に取れるものなのでしょうか。」
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はい、その通りです。……と、お答えしたいところですが、“肌が育つケア”は、クレンジングや洗顔だけではありません。スキンケア全体で考えることが必要です。
クレンジングや洗顔は“肌が育つケア”の基礎となるものですが、角質を剥がれやすくしている原因は他にもあります。角質を大切にするスキンケア製品でもって日々のケアを行い、肌が育つ時間を与えてあげることが健康な肌、美しい肌を育てていくことになります。
肌が育つための知識を蓄えていきましょう。
“肌が育つケア”をトータルに進め、肌が荒れたように見えても、肌の過敏さが増していない限り、直ぐに剥がれていた未熟な角質や角栓が長く肌に留まっているだけです。サッポーの言う「過渡期の現象」です。育ったしなやかな角質はこの後現れてくるのです。
“I”さん、タイムリーなご質問をありがとうございました。
- 角栓は取るものではなく、自然に取れるもの
- 角栓解消には、背景とストーリーを知ることが基本
編集後記
取ってはいけないと言われると取りたくなる人もいますが、徹底的に取らない、取れてはいけないと考える人もいます。きっと真面目な方なのでしょう(^^;)
でも、スキンケアには寛容さも大事。ちょっと気を抜いても..位の方が、良い習慣として育つのかもしれません。
「サッポー美肌塾」第295号
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