スキンケアのスキルとは、肌が角質を作る手伝いをいかに上手にするかだと言えます。私達の責任は重大なのですね。
前々号・前号にて、スキンケアの成功も失敗も、ストーリーとして理解いただいたと思います。今回は、失敗ストーリーに登場する悪役パターンを復習しておきましょう。
肌にとっての悪役、つまり「角質剥がれを促進する」存在です。
角質剥がれが一度促進されると、この現象は次第に増幅されていく性質を持っています。そのきっかけを作ったり、常態化させるものは次の二つの項目に分けられます。
- 間違った化粧品やスキンケア
そして、これらの選択を頑固にさせているのが、個人個人の思い込みにあるようです。
- 間違った思い込み
角質剥がれを促進する、間違った化粧品やスキンケア
「間違った」などというと化粧品メーカーの方に叱られるかもしれません。ここで言うのは、健康で美しい角質(肌)を育てていく上で「間違った」化粧品という意味です。
それぞれの目的や特徴(良さ)を否定しているわけではありません。
- 化粧落とし
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手早く、簡単に、化粧の落ちやすい……これらの特徴が優れているほど、角質剥がれも促進されることは想像できます。汚れや化粧だけでなく、角質を繋いでいるセラミド等の細胞間脂質も少しずつ溶け出すからです。
これを容易にしているのが、洗浄剤としての界面活性剤です。
界面活性剤を非難しているわけではありません。生活用品において、ありとあらゆる洗浄剤は、全て界面活性剤なのですから。
問題は、化粧を落とすために利用しているところにあります。洗い流しても、肌に残って、角質やセラミド等の細胞間脂質にもべったりとくっつき、じわじわと角質層の分解を促進していくのです。そして、その能力は長く消えません。
この界面活性能が肌に残るが故の洗い上がりのしっとり感も、つい使い続けてしまう理由なのかもしれません。
しかし、利便性は良くてもこのような洗顔を毎日していたら、角質剥がれが促進されてしまいます。他の用途、乳化剤や溶剤として利用された場合は、このような心配はありません。
- 洗顔料
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洗顔料=ここでは、石けんと定義します。
石けんも界面活性剤、化学的に合成された界面活性剤そのものです。
洗顔に使用すれば、上段の化粧落としと同じ弊害があるのでは?……という疑問が当然出てきます。実は、この石けんという界面活性剤だけにはその心配がないのです。アルカリ性である石けんは、水に触れるだけで界面活性能は急速に消えていくのです。つまり、洗顔して、すすいでしばらくすると消えてしまうのです。角質の分解(剥がれ)を早めるような弊害はないわけです。
しかし、このことにより、肌は乾き、つっぱり感を感じます。肌の保湿力の優劣によっては、耐えられない程のつっぱり感の場合もあります。
多少のつっぱり感であれば大丈夫なのですが、問題は、酷いつっぱり感やヒリヒリチリチリといった、肌が悲鳴を上げているにも関わらず、「石けんは肌に良いから!」と使い続けることです。
この場合も角質剥がれは促進されてしまいます。
- 角質を取り除く、ピーリング化粧品
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明瞭に「ピーリング」と表現している製品の方が少ないので、判断が難しいかもしれませんが、使用には注意が必要です。
肌を醜く見せている角質を取り除くのですから、わかりやすくて、しかもすぐに美肌効果を実感できます。
- 不要な角質をふき取るだけで取り除く○○化粧水・美容液
- 古くなった角質は角栓の原因…○○パックでやさしく取り除く
- 老化した角質はくすみの原因…○○酸の働きで、透明な肌を
- ……等々
その他のピーリング化粧品に関しては、下記ページを参考に確認してみましょう。
表現されていることにウソはありません。
しかし、化学的に物理的に角質を優しく、少しずつ取り除くことで、強制的に角質は予定より早く肌から剥がれていくのです。 - ある目的のために角質を剥がれやすくする化粧品
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一概に否定すべきではありませんが、便利性や使用感、見栄えを優先していくと、次第に角質剥がれを促進してしまう製品があります。
- フィット性を強調する化粧下地やファンデーション
- 汗や皮脂で崩れないことを強調するメイク製品やUV製品
いわゆる耐水機能が強化された(ウォータープルーフ)製品です。日常的にこれらを使用していると、美肌づくりの障害になっていきます。
汗で化粧崩れを起こしやすい場面では重宝しますが、肌を潤す汗までも弾くため、乾燥し、少しずつ過敏な方向に傾けていくからです。
しかし、海や山などのレジャー時、紫外線を長く浴び、また塗り直しが出来ない…ということであれば、肌を守るためにやむを得ない大事な選択です。このような時は、紫外線が角質を剥がす破壊的なダメージになるからです。
大切なのは、毎日使用するのでなく、ケースバイケースで上手に利用していくことです。
- 必要以上にアルコールを使用した化粧品
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化粧品には欠かせない成分ですが、たいていの場合は様々な成分を生かす溶剤として利用されています。しかし、配合量が多い場合、肌の乾燥を促進し、角質剥がれを早めます。特にこのような化粧水には注意が必要です。
- 汗や皮脂の多い肌にサラリ感を特に強調するもの
- 皮脂が多く、毛穴の目立つ肌に収斂効果を強調するもの
べたつきが気になる肌にとって、使用したときの使用感は良いのですが、角質への悪影響はさらに異常な皮脂分泌を促します。また、毛穴の収斂効果もその時だけのもので、角質剥がれが進むと、逆に毛穴の開きが徐々に拡大していきます。
角質剥がれを促進する、間違った思い込み
- 角質は垢だから取り除くべき
- 古くなった角質は新しいものと早く交代させた方が良い
- 角質は自然に剥がれ落ちない、落とさないといけない
- その場で美しさが現れたなら、明日もきっと美しい
- 使用したその場(日)の状態で化粧品を評価している
このような間違った思い込みがあると、醜く見える角質は取り除きたい、取り除けば、見映えが良くなって気分が良い、また醜くなってくれば、取り除けば良い……という悪循環にはまりがちです。
肌の変化に時間がかかることは、承知しているはずなのに、化粧品の評価に関しては、何かしらその場の使用感に流されている傾向が見られます。その場の感覚は分かりやすいが、日を経ると変化が感じにくいからかもしれません。
このように思い込みがスキンケアに与える影響には、計り知れません。
実際は、美しくなろうとする肌の生命活動と化粧品業界の努力・節度によって、大きな悲劇を防止しているような状態ですが……大きな悲劇にならないまでも、小さな悲劇は至る所で繰り返されています。
サッポーのスキンケア相談室にも毎日たくさんの相談や質問が届いています。
いかかがでしたか?
今回は「角質剥がれを促進する」存在について、具体例を挙げながら解説していきました。そういえば……と冷や汗が出た方もいらっしゃるのではないでしょうか。
いつだって、肌は美しい状態を目指して活動を続けています。これに従うように好循環を続けてあげましょう。もっとも良くないのは、知識として持っていながら、上の様な悪循環を繰り返していることです。
- 目的のある化粧品もよいが、スキンケアはもっと大きな視野で
- 間違ったケアを誘導する、思い込みをまずは改めよう
編集後記
ついつい思い込むことは、誰にでもあります。その思い込みで右往左往したり、取り越し苦労をしたり……。
でも、物事の本質って、実はシンプルな気がします。迷った時は、基本に戻ればいいのですね。
「サッポー美肌塾」第087号 / 2002年8月23日 発行
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